19年8月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.8%減(前月:同1.3%増)と上昇した(図表1)。輸出の伸び率は昨年後半から海外経済の減速やITサイクルのピークアウト、米中貿易摩擦、コモディティ価格の下落などを受けて低下し、今年は減少傾向が続いている。7月の輸出は金の輸出拡大や米国による対中制裁関税「第4弾」を控えた中国側の駆け込み輸入の増加が寄与して一時的にプラスに転じたほか、ITサイクルに下げ止まりの兆しがあるものの、米中対立の激化や米国の景気減速懸念の高まりなど外部環境は依然として厳しく、輸出停滞が長期化する懸念はくすぶっている。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、8月は景気悪化が続く東南アジア向け(同14.3%減)がマイナス幅を拡げた。また北米向け(同9.9%増)が堅調に拡大した一方、EU向け(同4.7%減)と東アジア向け(同3.4%減)の低迷が続いた(図表2)。
タイの19年8月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.0%減(前月:同4.3%増)と2ヵ月ぶりに減少した。輸出は2月と7月に上振れて一時的にプラスとなったが、基調としては昨年後半から米中貿易摩擦や世界経済の減速、通貨バーツの上昇を受けて電子機器を中心に減少傾向が続いている。また輸入額も前年同月比14.6%減(前月:同1.7%増)と減少した結果、貿易収支は20.5億ドルの黒字となり、前月から19.4億ドル黒字が拡大した(図表3)。
輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同1.9%減(前月:同6.0%増)と3ヵ月ぶりに減少した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、機械・装置(同7.0%減)と石油化学製品(同14.8%減)が低迷した上、主力の自動車・部品(同8.1%減)と電子機器(同9.5%減)が落ち込んだ。また鉱業・燃料は同38.6%減(前月:同14.1%減)となり、石油製品(同40.5%減)を中心に一段と減少した。さらに農産物・加工品も同4.4%減(前月:同1.4%増)とマイナスとなった。加工食品(同1.8%増)や果物(同45.8%増)など一部の品目は増加したものの、コメ(同44.7%減)や輸出削減の期間終了によって価格が急落した天然ゴム(同7.1%減)、ゴム製品(同16.0%減)が減少するなど、総じて低調だった。
ベトナムの19年8月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比10.4%増(前月:同11.1%増)と小幅に低下した。輸出の伸び率は今年2月に旧正月に伴い営業日数が減少した影響で一時的に減少したものの、その後も繊維関連が堅調に拡大、電気・電子製品が持ち直すなど拡大ペースを維持している。また輸入額も前年同月比5.9%増(前月:同7.5%増)と低下した結果、貿易収支は34.3億ドルの黒字となり、前月から33.9億ドル黒字が拡大した(図表5)。
輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同15.0%増(前月:同3.1%増)となり、サムスン電子の新型スマートフォン発売を受けて再び上昇した。またコンピュータ・電子部品が同22.2%増(前月:同16.6%増)と、6ヵ月連続の二桁増となった(図表6)。繊維関連では、織物・衣類が同6.9%増(前月:同12.9%増)がやや鈍化した一方、履物が同12.7%増(前月:同10.8%増)と好調に推移した。農産品は、天然ゴム(同24.8%増)が中国向けを中心に好調だった一方、コメ(同8.9%減)とコーヒー(同30.1%減)が価格下落、野菜(同25.0%減)が干ばつの影響で低迷するなど、品目によってばらつきが見られた。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同5.2%増(前月:同4.5%増)とコア幅に上昇する一方、地場企業が同23.5%増(前月:同26.3%増)と低下した。
マレーシアの19年8月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比3.0%減(前月:同0.1%減)とマイナス幅が拡大した。輸出の基調は昨年後半から主力の電気・電子製品とパーム油の出荷減少により増勢が鈍化、年明け以降は原油需要の低迷が加わって8ヵ月連続で減少している。また輸入額も前年同月比14.5%減(前月:同7.7%減)とマイナス幅が拡大した結果、貿易収支は26.1億ドルの黒字となり、前月から8.5億ドル黒字が縮小した(図表7)。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同6.8%減(前月:同3.0%増)と、主力の電気・電子製品(同9.5%減)を中心に2ヵ月ぶりに減少した(図表8)。また鉱物性燃料は同11.2%減(前月:同8.4%減)と2ヵ月連続で減少した。石油製品(同5.3%増)は増加したものの、原油(同41.4%減)と天然ガス(同13.2%減)が二桁減となった。一方、動植物性油脂が同17.4%増(前月:同12.3%減)とパーム油の輸出数量が大きく伸びて2ヵ月ぶりのプラスとなったほか、価格上昇した天然ゴム(同1.4%増)の増加傾向が続いた。
インドネシアの19年8月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比10.0%減(前月:同5.1%減)とマイナス幅が拡大した。輸出は自動車・同部品の増加傾向が下支えとなっているものの、昨年後半から世界的な需要減退と商品価格の下落を背景に主力の石炭やパーム油などの資源関連が振るわず、低迷している。また輸入額も前年同月比15.6%減(前月:同15.2%減)とマイナス幅が拡大した結果、貿易収支は0.9億ドルの若干黒字となった(図表9)。
全体の9割を占める非石油ガス輸出が同6.5%減(前月:同6.3%減)と低迷すると共に、石油ガス輸出が同3.5%減(前月:同1.2%増)と2ヵ月ぶりに減少した(図表10)。品目別に見ると、宝飾品(同86.6%増)と自動車・同部品(同17.0%増)が3ヵ月連続の好調が続いた一方、電気機械(同8.8%減)や動植物製油脂(同23.8%減)、化学製品(同18.8%減)、石炭などの鉱産物燃料(オイル・ガス除く)(同10.3%減)それぞれ落ち込んだ。