アフラックといえば、アヒルのCMでおなじみの保険会社。アフラックは世界で初めてがん保険を開発し、医療保険などのパイオニアとしても有名だ。
業績拡大とともにアフラックの株価は長らく上昇してきたが、2019年7月に下落に転じた。今アフラックに何が起きていて、今後の株価はどうなるのだろうか。
本記事では、アフラックの株価動向を振り返るとともに、今後の株価を見通すためのポイントについて解説していく。
※アフラック(8686)は東証外国株市場に上場しているが、2019年10月3日に上場廃止が決まっている。アメリカのニューヨーク証券取引所(NYSE)では、引き続きアフラック株(ティッカーコード:AFL)を取引できる。本記事では、ニューヨーク証券取引所に上場しているアフラック(AFL)のデータを使って解説する。
アフラックの最近の株価動向
アフラックの過去2年の株価チャートは、以下のとおりだ。
2018年のアフラックの株価は、1株あたり45ドル前後で横ばいが続いた。しかし、2018年末には株価が上昇し始め、一時は57ドルを超えた。
ところが、2019年7月にアフラックの株価は一転して下落基調となっている。2019年9月13日の終値は51.75ドルで、直近高値からの下落率は約10%だ。
上昇・下落の起点となった2018年12月と2019年7月に何があったのか、またその原因を探っていこう。
過去のアフラックの株価変動要因は何だったのか?
2018年12月の上昇と2019年7月の下落は、どちらも日本郵政グループが関係している。以下で詳しく解説する。
2018年12月にアフラックの株価が上昇を始めたきっかけ
2018年12月、日本郵政がアフラックの発行済株式の約7%を取得することを発表した。
アフラック株は、取得から4年経過すると議決権が10倍になる規定がある。したがって、4年後の日本郵政の議決権は20%を超える予定であり、日本郵政は持分法適用によりアフラックの利益の一部を連結決算に反映させることを目指している。
アフラックは米国企業だが、実は日本での利益が全体の約63%を占めている。それだけアフラックにとって日本市場の重要度は高い。アフラックが日本郵政と提携する狙いは、日本市場における新商品開発や販路拡大などだろう。
投資家にとっては、この提携で大事なポイントがもう一つある。それは、日本郵政による出資の方法が、新株発行ではないことだ。日本郵政は市場内外での取引によって既存のアフラック株式を取得することになっている。したがって、提携に伴ってアフラック株式が希薄化することはなく、日本郵政による買付が直接的にアフラックの株価を上昇させる要因となるのだ。自社株買いに似た効果があると言えるだろう。
提携の発表後、アフラックの株価は徐々に上昇し、2019年7月初旬の株価は一時57ドルを超えた。
2019年7月にアフラックの株価が下落を始めたきっかけ
次に、2019年7月にアフラックの株価が下落し始めた理由を見てみよう。
2019年6~7月、日本郵便が保険商品を不適切に販売していたことが問題になったのは記憶に新しいだろう。日本郵便は、日本郵政傘下であるかんぽ生命の商品を、顧客にとって不利益となる契約乗換や二重払い契約などをさせていたと言われている。
不適切販売があったと報じられたのはかんぽ生命の商品だったが、日本郵便では郵便局員が以前からアフラックの保険商品も販売している。2019年7月からアフラックの株価が下落し始めたのは、日本郵便の不適切販売の影響がアフラックにも及ぶことを懸念したためと考えられる。
アフラックの株価動向を分析するポイント
前述のとおり、アフラックの利益の約2/3は日本法人によるものだ。アフラックの業績は日本市場にかかっており、日本郵便の問題がアフラックの業績に与える影響は大きい。したがって、今後のアフラックの株価動向を予測する上でのポイントは、以下の2点と言えるだろう。
- 不適切販売を嫌った保険解約の行方
- 日本郵政による保険販売の行方
不適切販売を嫌った保険解約の行方
保険契約は、基本的に長期継続を前提としている。したがって、保険会社の収益は新規契約の獲得とともに安定的に増加していくことが多い。
しかし、今回のような報道があってイメージが悪化した場合、保険契約を解約する、または乗り換える人が増えることが予想される。
下表は、アフラック日本法人の第1四半期の決算報告書の一部だ。
日本郵便の不適切販売が報道されたのは2019年7月であり、それ以降の期間の決算報告はまだ出ていない。そのため、今回の問題でどの程度の解約件数が出ているかは、今はまだわからない。
解約件数が多い場合は、直接的な業績悪化要因になるほか、ブランドイメージも低下していると考えられる。その場合、今後のアフラックの新規契約件数にも悪影響が出るだろう。
今後のアフラックの株価動向を考える上で、2019年度第2四半期の決算報告は特に重要だ。
日本郵政による保険販売の行方
日本郵政との提携後、アフラックは郵便局という販路によって、保険契約件数増と収益向上を見込んでいた。
しかし、不適切な保険販売が問題になった後、日本郵便ではノルマ廃止などを含む保険販売体制の見直しが検討されている。その行方は、アフラックの保険販売にも大きく影響するはずだ。
今後のアフラックの業績は、日本郵便の販売体制がどのように変わり、その影響がどの程度になるかによって変わるだろう。
現在のアフラックの株価は直近高値から約10%下落していて、買い時に見えるかもしれない。しかし、日本郵便の問題がアフラックにどれだけ波及するかはわからないので、さらに株価が下落する可能性も十分ある。
アフラック株に投資するなら、日本郵便の不適切販売の問題がどのように落ち着くか、またその影響がアフラックの業績にどう表れるかが明らかになってからでもいいように思える。
アフラックの株を購入するには
アフラック(ティッカーコード:AFL)は、アメリカのニューヨーク証券取引所の上場銘柄である。アフラック株を購入するには、米国株を取引できる証券口座を用意する必要がある。
米国株を取引できる大手ネット証券には、SBI証券・楽天証券・マネックス証券がある。これら3社は外国株も特定口座に対応しており、手数料も安いので使いやすいだろう。
上記3社の米国株の取引手数料は、以下のとおりだ。
SBI証券 約定代金の0.45%(税抜)
楽天証券 約定代金の0.45%(税抜)
マネックス証券 約定代金の0.45%(税抜)
このように、3社とも取引手数料は横並びだ。なお、米国株取引では為替手数料も必要になる。
為替手数料は、基本的に3社とも「25銭/ドル」で同じである。ただしSBI証券の為替手数料は、住信SBIネット銀行を経由することで安くなる。少し手間がかかるが、手数料の安さを優先するならSBI証券を選ぶといいだろう。
上記3社は、手数料以外にも取扱銘柄数や注文方式のバリエーション、操作性などに違いがある。それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、自分に合う証券会社を選んでほしい。
アフラックの今後の株価見通しのポイント
本記事では、アフラックの最近の株価動向を振り返るとともに、今後の株価を見通すためのポイントについて解説した。
アフラックは米国企業だが、日本での利益が全体の約2/3を占めている。
アフラックの重要な販路の一つである日本郵便は、保険の不適切販売の問題で揺れている。この問題は、アフラックの業績にも少なからず影響を与えそうだ。
アフラックの株価は直近高値から約10%も下落しており、買い時に見えるかもしれない。しかし、今後のアフラックの株価は日本郵便の問題による解約や、新規販売件数によって大きく変わる可能性があるので注意したい。もしも業績悪化が現実になった場合、アフラックの株価はさらに下落する可能性がある。
現在、アフラック株は慎重に買い場を探っていきたい局面と言えそうだ。今後のアフラックの決算報告にも注目していきたい。
文・ロイナビ(長期投資サイト「ロイナビ」 管理人)
※2019年10月16日、内容を一部修正いたしました