ファーストリテイリング<9983>は、国内や海外でユニクロやジーユーなどのファッションブランドを展開するSPA(製造小売)だ。SPAとしては、ZARAやH&Mに次いで世界3位となっている。 足元はユニクロの業績が拡大しており、株価は堅調に推移している。今後のファーストリテイリングの株価を予想するためのポイントについて解説していく。

ファーストリテイリングの最近の株価動向

ファーストリテイリング,株価
(画像=madamF / Shutterstock.com)

ファーストリテイリングの株価は、年初からも堅調に推移している。2018年末に5万6,370円だった株価は今年も好業績の期待から物色が続き、今年7月には7万230 円の上場来高値を付け、現在も高値圏で推移している。

製造業が米中の貿易摩擦などの影響を受けて軒並み減益となる中、ファーストリテイリングの業績は相対的に堅調で、貿易摩擦の影響を受けにくいディフェンシブの成長株としても物色されている。

過去にファーストリテイリングの株価が大きく変動した要因

ファーストリテイリングの株価は、業績や世界景気の悪化などマクロ環境の影響を受けて変動しやすい。ここ10年ほどで見ると、2015年7月に高値6万1,970円をつけた翌年、ファーストリテイリングの主戦場の一つである中国の景気不安や英国のEU離脱決定により、世界のマクロ環境は悪化した。日経平均も下落し、2016年にはファーストリテイリング株も2万5,305円まで売られる展開となった。

その後、ファーストリテイリングは注力している海外ユニクロの業績が中国を中心に伸び、国内ユニクロも健闘した。値引きロスの抑制や販管費の削減などもあり、2018年8月期は売上収益が2兆1,300億円(前期比14%増)、純利益が1,548億円(同30%増)と過去最高を記録した。

業績の伸びを受け成長株として買われたほか、日経平均の値嵩株として買われたこともあり、2017年以降の年足は今のところ3年連続で陽線となっている。

ファーストリテイリングの業績推移

2015年8月期
売上収益       1兆6,817億円
純利益          1,100億円
期末店舗数        2,978店

2016年8月期
   売上収益       1兆7,864億円
純利益           480億円
期末店舗数        3,160店

2017年8月期
売上収益       1兆8,619億円

純利益          1,192億円
期末店舗数        3,294店

2018年8月期
売上収益       2兆1,300億円
純利益          1,548億円
期末店舗数        3,445店

※純利益=親会社の株主に帰属する当期純利益

過去5期のファーストリテイリングの業績を見てみると、2016年8月期は円高による為替差損やブランドの減損などによって大幅な減益となっている。しかし、売上収益は店舗数の拡大や既存店の好調により右肩上がりを続け、2018年8月期は過去最高益を果たした。中国を中心とした海外ユニクロの成長や、国内ユニクロでUTやヒートテックなどの高利益率商品の拡販が進んだことが寄与した。

新規出店も順調で、期末の店舗数は2015年8月期の2,978店から2018年8月期の3,445店と約16%増えている。

2019年8月期は、売上収益2兆3,000億円(前期比8%増収)、純利益で1,650億円(同7%増益)を予想しており、最高益更新となる見込みだ。成長が期待される海外ユニクロ事業では、中国やアジア・オセアニア、欧州などで伸びる見通しである。国内ユニクロ事業においても、粗利益率改善やEコマースの増収を見込んでいる。

ファーストリテイリングの株価動向を予測するポイント

今後のファーストリテイリングの株価動向を予測する上では、以下の3点がポイントになるだろう。

1 中国を中心とした海外ユニクロの成長継続
2 既存店のコスト削減など利益率の改善
3 日経平均の値嵩株として買われるファーストリテイリング株

順に解説する。

1 中国を中心とした海外ユニクロの成長継続

ファーストリテイリングは、早くから海外へ進出した企業だ。生産拠点としてだけてばなく、消費マーケットとしても、早くから海外をターゲットとしている。2001年には海外1号店として英国ロンドンに出店。翌2002年に上海に中国1号店を出店しており、中国の経済成長とともにユニクロブランドも中国に浸透してきた。ユニークなコンセプトのUTやエアリズム、ヒートテックなどの機能性商品も中国では生活必需品となりつつあるようだ。

ファーストリテイリングは、中国事業をグレーターチャイナと名付けて海外事業の柱としており、売上収益は中国だけで3,000億円を超えている。

中国での業績が好調な理由は、主に3つある。

1つ目は、中国国内でユニクロブランドが浸透していることだ。We Chat(ウィーチャット)やWeibo(ウェイボー)などのSNSやブログを利用したデジタルマーケティングも効果が大きく、若年層などの取り込みに成功している。中国ではSNS上のインフルエンサーの影響力が大きく、口コミによる購買も多い。

2つ目は、値引きに頼らず在庫を適正化することで利益率を向上させていることだ。広い中国ではエリアで気候が異なるため、エリアに合わせた商品構成によって在庫回転率を改善しているのだ。

3つ目は、個店での経営を進めたことだ。店舗ごとに収益構造を強化し、経費をコントロールできたことも利益率改善に寄与した。

中国での店舗数は、2017年8月末は645店だったが、毎年100店ペースで出店を続け、2021年8月期には1,000店舗を超える見込みだ。中国事業は2022年度に売上収益1兆円、営業利益2,000億円の目標を立てている。中国市場は今後も拡大が続くと見られており、ブランディングに成功しているファーストリテイリングにとっては追い風となるだろう。

2 既存店のコスト削減など利益率の改善

ファーストリテイリングでは、様々な施策によってコスト削減を進めている。たとえば全商品にRFIDタグを貼り付けることで、商品に触れることなく価格や品番、色・柄などを瞬時に認識できるようになった。これによって検品や在庫管理、たな卸しなどの生産性を飛躍的に改善している。

また、物流の効率化も進めている。2018年10月には物流システム世界最大手のダイフクとの戦略的パートナーシップ締結を発表し、物流の大改革に着手した。この取り組みによって自動化された国内のEC倉庫では省人化率90%、つまり100人の作業員を10人に削減できるようになった。また、保管効率は3倍になり、生産性が大幅に改善している。

このような継続的な取り組みによる利益率改善への期待は、今後も続くだろう。

3 日経平均の値嵩株として買われるファーストリテイリング株

ファーストリテイリング株には、日経平均の値嵩株としての側面もある。日経平均は225銘柄の株価から算出される。単純平均なので、株価が高い株のほうが日経平均への影響度が大きい。そのため、ファーストリテイリングなどのいわゆる値嵩株は、日経平均先物が買われる局面で買われやすいという特徴がある。

日経平均をTOPIX(東証株価指数)で割ったNT倍率は、高止まりが続いている。これは、ファーストリテイリングやソフトバンクなどの値嵩株が買われ、TOPIXの時価総額上位の銀行株や自動車株が買われていないことを表している。NT倍率の高止まりは、しばらく続きそうだ。

また、日銀による日経平均型のETF(上場投資信託)の買い入れによって、ファーリテイリング株は品薄状態が続いている。さらに、信用売りが入りにくくなっていることもファーストリテイリングの株価にはプラスに働いている。

ファーストリテイリングの予想PER(予想株価収益率)は、9月13日現在で約39倍と日経平均株価の約12倍を大きく上回っており、割高感を示している。しかし、小売業は基本的に現金商売であり、製造業などと比べて業績のぶれが少ないことや、海外ユニクロを中心とした成長企業であることなどを加味すると、足元の予想PERは妥当と言えるだろう。

PBR(株価純資産倍率)も6倍超と日経平均株価の約1倍を大きく上回っているが、PER(予想株価収益率)と同様に成長期待の表れと見ていいだろう。

ファーストリテイリング株を買うには

ファーストリテイリングの9月13日の終値は、6万4,610円だった。100株単位で取引される銘柄なので、最低投資金額は646万1,000円となる。

ファーストリテイリング株の購入にあたって、手数料が比較的安い証券会社は以下のとおりだ

岡三オンライン証券 2,700円
DMM.com証券 800円
ライブスター証券  800円
GMOクリック証券  834円(約定代金150万超~3,000万円の場合)
SBI証券 921円
楽天証券 921円

※いずれも税抜価格
※ファーストリテイリング株100株を9月13日の終値64,610円で購入した場合の手数料
※各種キャンペーンは考慮しない

中堅のDMM.com証券とライブスター証券が横並びで、手数料が最も安い。大手ネット証券のGMOクリック証券が900円、SBI証券と楽天証券がともに921円と続く。わずかではあるが、中堅ネット証券の手数料は大手ネット証券に比べて低く設定されていることがわかる。

ただし、最低投資金額が約650万円と非常に高額なので、投資できる人は限られるだろう。どうしてもファーストリテイリング株に投資したい場合は、議決権は得られないがミニ株や単元未満株などのサービスを利用するといいだろう。ミニ株や単元未満株は取引時間や注文方法が単元株と異なるため、詳しくは各証券会社のホームページで確認してほしい。

海外ユニクロの成長に期待 当面は品薄で堅調な展開か

ファーストリテイリングの株価は高値圏で推移しており、中国を中心とした海外ユニクロの成長期待は続きそうだ。ファストファッションは生活必需品でもあるため、世界的な景気鈍化の流れの中でも着実に売上収益を拡大している。

日銀の金融緩和政策によるETF(上場投資信託)の買い入れも当面は継続する見込みであり、ファーストリテイリング株の品薄状況は続くだろう。当面は堅調な株価推移が予想される上に、今後はディフェンシブの成長株としても期待できそうだ。