前日の欧州時間では、米中通商合意の第1段階について「中国は合意文書に署名する前に一段の協議を望んでいる」との報道が伝わり、米中貿易協議の先行き不透明感から、ドル円は一時108.037円まで下値を拡大する動きを見せました。ただ、トランプ大統領は米中が第一段階の合意に達したと発表し、15日に予定していた追加関税の見送りを決定しました。ムニューシン米財務長官が、12月15日に予定されている追加関税発動について、その時までに中国と合意に達しなければ、発動の可能性があるものの、合意が成立すると期待していると述べたことは、先行き不透明感の払拭にプラスに働いたものと思われます。

しかし、中国政府の公式声明は、劉鶴副首相と米国のライトハイザー通商代表部(USTR)代表およびムニューシン米財務長官との通商協議の結果について、「合意」とは全く言及しておらず、依然として不確実性が取り沙汰されています。今週も劉鶴中国副首相と電話で協議し、次官級の通商交渉も開催されると報道されており、「部分合意」に関するヘッドラインで大きく動意付く可能性がありそうです。

通商協議も重要ですが、今週、来週については、英国のEU離脱方針にマーケットの注目は集まりそうです。ジョンソン英首相は、アイルランドのバラッカー首相と会談し、バラッカー首相は英国が離脱条件でEUと合意に達することはなお可能との見方を示し、ジョンソン英首相も前向きな発言を行っていた経緯があります。ただ、EU議長国であるフィンランドのリンネ首相は、英国との離脱合意にはまだ時間がかかるとし、週内に全面的な合意に達する可能性は小さい、との見方を示しました。これにより、10月31日までに合意に達するかどうかは再び不透明感が浮上してきており、引き続きポンドの動きには注意が必要でしょう。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週の木曜からEUサミットが開催され、ブレグジットの合意、もしくは交渉期間の延長になるのかの重要なポイントになります。ジョンソン英首相は、19日土曜に緊急議会招集をかけているため、英国が次のステップはどこに進むのかが判明します。19日は、英離脱延期法で定められたEUとの離脱協定及び合意なし離脱の承認期限でもあるため、承認されなかった場合は、ジョンソン英首相は離脱延期をEUに要請することが義務付けられています。ただ、「合意なき離脱」の可能性がなくなったわけではなく、ジョンソン英首相が延期要請を拒否し、内閣不信任投票にて、内閣が信任されれば、「合意なき離脱」という結果になります。また、EUサミットで合意があったとしても、英議会が否決し、上記に述べたシナリオと同じ経緯を辿れば、同様に「合意なき離脱」リスクが残るため、土曜の緊急議会招集への注目は非常に高いものになりそうです。月曜オープニングの窓開けスタートについても、同様に注意が必要になりそうです。

豪ドルについては、本日の東京時間に公表されたRBA議事要旨にて、「金融政策が以前よりも効果が薄れたことを議論した」「必要ならさらなる緩和を行う用意がある」とこれまで同様にハト派よりの内容に終始しました。中国9月の消費者物価指数は、アフリカ豚コレラの感染で高騰した豚肉の影響で前年比+2.9%と予想されていましたが、結果は+3.0%となりましたが、市場予想から乖離していなかったこともあり、全般的に値動きは限定的なものになりました。豪ドルについては、米中通商協議への期待感こそあれど、国内経済が悪化の一途をたどっているため、どうしても上値が抑えられそうです。

ポンド円は135円-137円が目先コアレンジとなりそうだ

ポンドについては、ブレグジットに対するヘッドラインで一喜一憂する動きになりそうですが、テクニカル的には135円前半-137円前半が目先のコアレンジになりそうです。水準的には137円に近いこともあり、137円付近まで引き付けてのポンド売りを戦略とします。利食いについては、135.80円付近を意識し、損切りラインは137.50円上抜けとします。

海外時間からの流れ

トルコについては、エルドアン大統領が「誰に何を言われようとシリアからトルコ軍を撤退させない」と発言しているように、トランプ大統領が「トルコに対する鉄鋼関税を最大50%まで引き上げる」「1,000億ドル規模のトルコとの貿易交渉は即刻停止」との発言を行っても考えを変えるつもりはなさそうです。「もしトルコのリーダーが危険で破壊的な道を進むのなら、トルコ経済を素早く破滅させる準備ができている」とも発言していることもあり、状況によっては大きくリラ売りに傾く可能性があるため、この点には注意が必要になりそうです。

今日の予定

本日は、トルコ・7月失業率、英・9月失業率、独・10月ZEW景況感調査、米・10月NY連銀製造業景気指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ブラード・セントルイス連銀総裁、カーニー・英中銀(BOE)総裁、ブリハ・MPC委員、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。