前日については、バルニエEU首席交渉官が「今週中に離脱案で合意する可能性がある」と発言したことを受け、ポンドが全面高の展開になりました。英ガーディアン紙が「英国とEUはブレグジット案を巡り合意に近づいており、16日朝までにまとまる可能性がある」と報じたことも、ポンド買いを加速させたものと考えられます。ポンド円については、一時139.310円、ポンドドルでも1.27991ドルを示現しており、ポンド円は5/13日以来、ポンドドルでは約5か月ぶりの水準に達しています。

EUサミットを明日に控え、一部では英国が提出した最終案に難色を示す発言がある一方、10月31日までタイムリミットが限られていることもあり、メイ前首相の時に拒否をした「北アイルランド単独のバックストップ案」の改良版である今回のベルファスト合意順守のため、EUメンバーであるアイルランド共和国と国境を接する北アイルランドだけが、欧州単一市場ルールを適用する最終案を進める可能性があります。当然DUP党は反対していますが、合意ありの離脱のために、この案で合意するという結果になるかもしれません。ここまでポンド買いが主導してきましたが、正式に合意となれば、さらにポンド買いは強まるものと考えられます。

米中通商協議では、欧州時間に「中国は米国に500億ドル相当の輸入品に対する関税撤回を求めている」との報道が伝わり、ドル円は108.160円まで値を下げましたが、トランプ大統領は会見で「中国の対応は良好。銀行に関する第2段階を想定している」などと述べたこともあり、ドル円は一気に買い戻されています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

合意があっても英議会で可決されるかどうかは依然として不透明ではありますが、今回保守党がEUと合意さえできれば、この先行われるであろう総選挙には保守党、労働党の二大政党がともに合意ありの離脱、もしくは残留を掲げて選挙に臨む可能性が高くなります。二大政党のこの動きは「合意なき離脱」のリスクが極めて低下することを意味しており、中期的に見ても今夜EUと英国が合意ができるのであれば、土曜日の議会通過の可否に関わらずポジティブであると考えられます。

ただ、バルニエEU首席交渉官が「今週中に離脱案で合意する可能性がある」と発言した意味は大きく、「英・EU交渉担当者、離脱合意の草案に徐々に近づいている」とのヘッドラインで意識されたのは時間的問題でしたが、この時間的問題をバルニエEU首席交渉官自らが肯定的な発言をしたことは、本日の合意、さらには土曜日の議会通過をも織り込んだ可能性があり、一時的に材料出尽くしでポンドの利食い売りが優勢になる場面があることは頭に入れておいた方がいいかもしれません。

米中通商協議の焦点となっている「部分合意」については、「第1段階」として11月16-17日のAPEC首脳会議に併せて開催される米中首脳会談で、トランプ米大統領と習中国国家主席が署名する見込みになっている。中国側としては、「第1段階」の合意署名前にさらなる交渉を要請しており、今週行われる予定の米中次官級通商協議でのヘッドラインはマーケットに影響を与えそうです。また、来週は、電話での米中閣僚級通商協議が開催される予定であり、まだまだ状況次第ではドル円は109円台を回復する可能性があります。

今夜EUと合意すれば、ポンド円は140円に届きそうだ

合意ありの離脱の可能性が高まったことで、ポンドは急騰しました。ポンド円は135円-137円が目先コアレンジになると考えていましたが、137.50円水準で損切りです。ここまでくると、ポンドをどこでロングにするのかという部分が焦点になってきそうです。一旦は利食いの動きが強まることが考えられるため、137.80-138.00円付近まで押し目を待ち、利食い目途は140.00円付近を想定し、137.00円下抜け水準で損切りとします。

海外時間からの流れ

米中通商協議、英国のブレグジットの方針が共にポジティブな動きになっている中で、懸念点として、中国が米下院が「香港人権法案」を可決したことを批判し、報復を示唆していることが挙げられます。問題視はされないとは思いますが、今週予定の米中次官級通商協議、来週予定の米中閣僚級通商協議へ影響で出てくる場合は、リスク回避の動きが強まる可能性がありそうです。

今日の予定

本日は、英・9月消費者物価指数/英・9月小売物価指数、米・9月小売売上高、加・9月消費者物価指数、米・ベージュブックなどの経済指標が予定されています。要人発言としては、ノット・オランダ中銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、レーン・ECBチーフエコノミスト、バイトマン・独連銀総裁、ブレイナード・FRB理事講演の講演、そして、カーニー・英中銀(BOE)総裁のパネルディスカッションが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。