前日の海外時間では、「英政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)が譲歩し、ブレグジット合意の可能性が高まった」との報道を受けてポンド買いが強まり、ポンド円が139.70円付近まで1円超上昇する動きを見せましたが、フォスターDUP党首は、この報道を「DUPが提案受け入れという話はナンセンス。交渉は継続」とすぐに否定したことで今度は1円程下落するなど、引き続きボラティリティの高いマーケットになりました。依然としてEUとの合意には至っていないものの、ジョンソン英首相は、閣僚や保守党の有力議員に対して、まだ解決しなければならない事項があるとしながらも、ブレグジット合意が間近なことを示唆したと報じられています。また、メルケル独首相も「ブレグジット交渉は残り数メートルのところにいる」と発言し、マクロン仏大統領も「ブレグジット合意は間近」と発言しています。EU当局者によると「英国とEUは離脱交渉で暫定合意におおむね達し、英政府の承認待ちの状態」とも言われており、本日のEUサミット後の声明で合意が発表される可能性が出てきました。

ただ、EUのトゥスク大統領は「英国の離脱時期についてこの日のうちに明らかにする予定」と発言しているものの、未だに離脱時期の予定が示されておらず、フィナンシャル・タイムズ紙はDUPがジョンソン首相の譲歩を非公式に受け入れる用意があると報道しているものの、一部ではDUPはジョンソン英首相案を認めないとも報じられており、ここにきて情報が錯綜しています。唯一信用できるのが、各国首脳からのブレグジット合意に近づいているとの発言だと考えられます。状況が判断しづらいものの、基本的にはポンドの地合いは強いと考えてよさそうです。

ブレグジット関連の報道で、ドル円の存在感が薄くなっていますが、昨日発表された米・9月小売売上高は前月比で予想+0.3%に対して、結果は-0.3%と大きく悪化しました。これまで好調であった小売売上高ですが、6ヵ月連続して増加した後マイナスに転じました。米中通商協議進展期待が強まっていますが、これまでは製造業の世界的な弱さと貿易の不確実性が目立っていましたが、米国の雇用と家計支出には限定的な影響しか与えていないと考えられていました。ただ、米・9月小売売上高の内容を加味すると、FRBは10月のFOMCで再度「予防的」利下げをするものと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

注目は、やはりEUサミットとなり、英国とEUがブレグジット合意できるのかどうかになりそうです。直近の報道では、近く合意が得られるとの観測が強まっており、合意に達すればポンドは再び急騰する動きになりそうです。英国とEUの当局者は、離脱合意を17-18日のEUサミットに間に合うように努力していましたが、現在の状況では間に合うかどうかは微妙なところです。ただ、ジョンソン英首相が就任してから、ここまでEUとの合意に近づいたことはなかったため、マーケットの合意期待は非常に大きいと考えられます。予定としては、ジョンソン英首相は本日早朝(日本時間夕方)にブリュッセルに赴き、EUサミットで協議を継続する見通しです。また、土曜日には英国議会で自身の案を提案し、合意することを試みる予定になっています。

米中通商協議については、トランプ大統領が中国は既に米国産農産物の購入を始めたと発言している一方で、11月にチリで開催されるAPEC首脳会議(11/16-17日) で中国の習近平国家主席と会談するまで、米中の貿易合意が署名されることは恐らくないとも発言しています。ただ、この点については、既にコンセンサスに組み込まれていることで、ムニューシン米財務長官が今週中に中国との次官級電話協議が行われることを明らかにしましたが、ここで状況が一変しない限りは、緩やかなリスクオンが継続しそうです。

ポンドについては、もう一度押し目探し

昨日中の合意にはなりませんでしたが、ブレグジット合意への期待は非常に高まっています。合意ありの報道でポンド円140円タッチ予想でしたが、期待感だけで140円に達しており、137.80円でのポンド円ロングは、その日のうちに140.00円にて利食い、手仕舞です。ここからは、再度ポンド円の押し目買いが焦点になりそうです。1円程度の動きであれば、ヘッドラインですぐに動いてしまうマーケットであることから、138.20-50円まで引き付けての押し目買い戦略、利食いについては141.00円を想定し、損切りは137.00円下抜けに設定します。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に発表された豪・雇用統計については、失業率が5.3%予想から5.2%へ改善、雇用者数変化こそ1.50万人増予想が1.47万人増と横ばいでしたが、常勤雇用者数が前回の1.55万人減から2.62万人増に改善しており、豪ドル買いが強まっています。米中通商協議進展期待もあることから、豪ドルの買い戻しが入りやすい状況になっています。

今日の予定

本日は、英・9月小売売上高指数、米・10月フィラデルフィア連銀景況指数、米・9月住宅着工件数/建設許可件数、米・新規失業保険申請件数、米・9月鉱工業生産などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ビルロワドガロー・仏中銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、ビスコ・伊中銀総裁、ボウマン・FRB理事、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ノット・オランダ中銀総裁の講演が予定されています。また、本日よりEUサミットが開催されます。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。