前日の海外時間では、ブレグジット合意への最大の壁であると考えられていた英民主統一党(DUP)関係者が、「税関などの問題に関する現在の提案には支持できず、付加価値税(VAT)についても明確性に欠いている」との声明を出したことにより、ブレグジット合意は遠のくかと思われましたが、急遽、アイルランド系の一部報道が「ブレグジットは合意」とのEU高官発言を伝えたことによりポンドは急騰しました。この報道で、ポンド円では139.40円付近から141.88円と本日の高値までポンド買いが強まり、ポンドドルでも1.2810ドル付近から1.29883ドルまで上値を拡大しました。ただ、その後に、民主統一党(DUP)関係者の発言として、DUPは英・EUが合意した離脱案を支持しない方針との報道を受けて、ポンド円は138.70円付近、ポンドドルは1.2750ドル付近まで急落するなど、勝負は19日(土)に予定されている英議会での採決に持ち越しとなりました。
状況としては、DUPが支持していないことを考えると、議会での承認は難しいと考えられます。ドイツ証券が紹介した予測では、55%の確率で採決は否決されるだろうとのレポートが出ています。否決されたとしても、中期的には、総選挙において保守党が多数党となり、その後ジョンソン首相の合意が批准されるかと思われますが、DUPの票が得られない場合、ジョンソン英首相は、説得に応じる可能性があると考えられている75名前後の議員に働きかける必要があります。各メディからは可決は難しいとの報道がされていますが、既にツイッターで勝利宣言をし、ブリュッセルで記者団に対しても可決への自信を見せていることから、ジョンソン英首相が必要な320票確保に向けて、既に動き始めているのかもしれません。結果判明は土曜になることから、金曜については様々な憶測がありそうですが、基本的には様子見姿勢が強まりそうです。
NY時間に入ると、今度はトルコリラの動きが市場を賑わせました。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「トルコの行動を抑制するためにさらなるトルコ制裁も」との見解を示しているなかで、具体的な制裁案(投資家によるトルコ国債購入の制限・禁止)が発表されると18.303円まで下落する動きを見せました。ただ、エルドアン・トルコ大統領と4時間以上も会談したペンス米副大統領が「トルコはシリアでの休戦に合意した」と明らかにし、「停戦が恒久的になれば、米国は対トルコ制裁を解除する」との考えを示すと、トルコ円は反発し、18.638円と高値を更新しました。トランプ大統領も「トルコから素晴らしい報告がきた」「エルドアン大統領に感謝」「数百万人の命を救うことになる」と大歓迎しており、米国のトルコへの制裁は回避できる見通しです。
今後の見通し
EUと英国のブレグジット合意が発表されたことにより、19日(土)に予定されている緊急招集した英国議会で、ブレグジット案が可決されるかどうかに注目が集まります。過去何度も採決を的中させている英ブックメーカーのスポーティングインデックスが、早速19日のEU離脱の議会採決結果を予想し、可決には7票が足りないとの試算を出しました。スポーティングインデックスは、メイ前首相が自らの離脱案を最後に議会採決にかけた時も60票足りない予想でしたが、結果は58票足りない結果に、その前の議会採決でも148票不足予想が149票不足と、非常に近い予想を出しています。ただ、7票の差異であるため、ひっくり返ることは十分に考えられるため、ジョンソン英首相の自信もそこからきているのだと考えれば、大逆転の可決もあるかもしれません。その際は、月曜のオープニングではポンドが大きく上昇したところからスタート(窓開け)するものと思われます。
米中通商協議については、トランプ大統領が中国は既に米国産農産物の購入を始めたと発言している一方で、11月にチリで開催されるAPEC首脳会議(11/16-17日)で中国の習近平国家主席と会談するまで、米中の貿易合意が署名されることは恐らくないとも発言していましたが、トランプ大統領から中国との「第一段階の合意」に近く署名するだろうと、前倒しでの署名を示唆しました。米中通商協議進展期待については、既にリスクオンイベントとして意識されていることもあり、緩やかなリスクオンは継続するものと思われます。
ポンドについては、三度押し目探し
想定外に早い段階でブレグジット合意が伝えられましたが、押し目を期待した138.50円には僅かに届きませんでしたが、138.60円付近まで押し目をつけたことで138.80円付近でのロングメイク。利食いについては、想定通り141.00円に達したことで、手仕舞です。ポンド円については、再び押し目探しの展開になりそうです。本日については、ブレグジット合意があったため、土曜の英国議会待ちの動きになるため、これまでのようなボラティリティはないと想定されるため、138.80円付近での押し目買い戦略、利食いは140.20円付近、138.00円下抜けを損切りラインと考えます。
海外時間からの流れ
米中通商協議も佳境を迎えているものの、それ以上にブレグジット合意のインパクトが強く、ポンド以外の通貨においても、ブレグジットに関するヘッドラインで連れ安、連れ高の動きになっています。米中通商協議において、中国側は、「米国に対する報復関税を維持する限り年間500億ドル相当の米国産農産物の購入は難しい、報復関税を撤廃する条件は、トランプ米大統領が関税を撤廃することだ」と警告しており、米下院が可決した「香港人権・民主主義法案」に対する報復措置を示唆しているため、状況によってはドル売りになる可能性があります。
今日の予定
本日は、中国・9月鉱工業生産/9月小売売上高/第3四半期GDP、米・9月景気先行指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、カプラン・ダラス連銀総裁、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。