先週末の海外時間では、19日に緊急招集された英国議会での新離脱案の行方を見極めるために、様子見姿勢が強まりました。19日当日については、レトウィン卿の修正案(「離脱協定法案(WAB)」が可決するまで、下院による離脱協定案承認を棚上げ)が可決されたことで、EU離脱協定案の採決が延期となり、週明けのポンドは僅かに下窓でのスタートになっています。週末の動きとしては、レトウィン卿の修正案が可決されたことで、ベン法案(合意なしブレグジットを回避させるための法案、離脱期限延期要請が必要)がトリガーとなり、ジョンソン英首相は署名をしない反抗を見せつつも、離脱期限延期要請をEUに提出したことで下値は限定的になっています。

ジョンソン英首相は、離脱期限延期要請には署名しなかったものの、別にトゥスクEU大統領に書簡を送り、内容としては「ブレグジットの延期は間違いで、自分とEUがまとめた離脱条件の協定案を英下院は承認すべき」だと明記されており、こちらには同首相の署名がされているとのことです。今回の同首相の行動は、下院決定を無視し、法廷に立たされることを避けるための措置に過ぎないのではないかと議論になっており、この対立は裁判になる見通しで、すぐに最高裁での審理まで行くかもしれないとも言われています。

やり方はともかく、現在は英国からEUへ離脱延期が正式に要請されていることになっており、EU理事会が英国の要請に同意する場合は、1月末までの延長に政府が直ちに同意することになります。また、EUが1月末以外の期限まで延長を提示する場合には、上述したベン法案により英国政府はその期限に従うことになります。「合意なき離脱」は、英国、EU共に苦しい状況になるため、基本的には延長に合意すると思われますが、合意にはEU加盟国全ての賛成が必要になるため、延期反対を前面に出しているマクロン仏首相の態度を軟化させることができるかどうかが重要になりそうです。

今後の見通し

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(画像=PIXTA)

今後の予定としては、リースモグ下院院内総務が19日延期した採決(Meaningful Vote)を提案予定です。ジョンソン英首相も、離脱協定案の施行法案を21日にも議会に提出するとのことですが、Meaningful Voteについては、一度議会に提出した内容と同じものを再提出することは規則違反となるため、メイ前首相の時と同じように文言や内容を多少変更してくるものと思われます。予定としては、今週中に採決にはなっているものの、21日(月)、22日(火)のどちらかで採決するのではないでしょうか。個人的には、22日(火)が濃厚だと考えています。

また、21日(月)、22日(火)のどちらかで10月14日にエリザベス女王が実施した施政方針演説に対する議会採決も実施予定です。施政方針演説は「英国は10月31日にEUから離脱する」になるため、レトウィン卿案を考慮し、延長があるかどうかが焦点になります。ここで否決される場合は、コービン党首から内閣不信任案が出る可能性があります。今週中に新離脱案の採決が行われる予定ですが、可決された場合は「合意あり離脱」となり、否決された場合は、EUが延期に応じれば、最低でも1月末までの延期となり、その間に総選挙などが行われるかもしれません。ただ、EUが英国の要請を拒否すれば、依然として「合意なき離脱」の可能性は残されています。

ポンド中心のマーケットになっているため、ドル円への関心が薄れてきていますが、クラリダFRB副議長が、世界的な成長減速や地政学的なリスクから米国経済を守り、回復を続けさせるために、FRBは適切な行動をとっていくと改めて協調したため、今月末のFRBの「予防的」利下げの確率がさらに上昇しています。背景には、16日(水)に発表された米国の小売売上が大幅に悪化したことが決定打になったものと思われます。

今週も、引き続きポンドの押し目探し

ポンド円、138.00円付近までの押し目を待ちましたが、金曜日の時点では土曜でのEU離脱協定案の採決期待が高かったため、押し目幅も限定的となり、ポジションメイクならずでした。ただ、今週も英国議会では重要イベントが目白押しとなるため、ポンドについてはボラティリティの高い一週間になりそうです。東京時間から1円程度の押し目が先週の流れだったこともあり、139.00円付近まで引き付けてのポンド円押し目買い戦略。利食いについては、直近高値を更新することを考慮し、142.00円付近、損切りは137.50円下抜けに設定します。

海外時間からの流れ

米中通商協議関連では、18日に発表された中国・7-9月期GDPに代表されるように、経済指標関連が悪化しています。この状況を受け、中国政府が景気刺激策を打ち出すとの観測も広がっており、マーケットを支える要因にもなっています。英国とEUの動向次第ではありますが、徐々にリスクオンの状況を構築しつつあると考えてよさそうです。

今日の予定

本日は、独・9月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ホールデン・英中銀理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。