資産運用にリスクはつきものだが、それ以外にも生活をしていく上で様々なリスクが想定される。今回は、仕事を辞めてセカンドライフを迎える年代にとってどのようなリスクが考えられるかを、日本の現状を踏まえながら紹介しよう。

「高齢社会」による負担増や給付減のリスク

リタイア層,リスク
(写真=imtmphoto / Shutterstock.com)

内閣府が公表しているデータによると、日本の総人口は2017年10月時点で約1億2,600万人。そのうち、65歳以上の人口が約3,500万人にのぼる。総人口に占める割合を示す「高齢化率」は、実に27.7%。4人に1人以上が65歳以上ということになるわけだ。今後も人口減少と高齢化がさらに進んでいくと考えられており、2030年には人口約1億1,900万人に対して高齢化率は約30%、2055年には約9,700万人に対して高齢化率が約38%になると推計されている。

これには、平均寿命と出生数が大きく関係している。平均寿命は男女ともに延びていて、2015年に初めて男性の平均寿命が80歳を超えた。今後、平均寿命はさらに延び、2050年には女性の平均寿命が90歳を超えることが見込まれている。半面、2006年に約109万人だった出生数は、2016年は約97万人まで減少。2030年に約81万人、2050年には約65万人まで減ると考えられている。

人の一生が長くなるのは決して悪いことではないが、長く生きることで様々なリスクも生まれる。生活資金の確保はもちろん、病気や介護状態になった場合の備えも一段と必要になるだろう。生活資金は公的年金制度である程度は準備することができるし、病気や介護についても健康保険や介護保険制度が用意されている。ただ、少子高齢化の加速で増え続ける「社会保障給付費」が日本の財政を圧迫しているのも事実だ。社会保障給付費はこの30年の間に約2.5倍に膨れ上がったが、高齢化率の上昇などによって今後も増え続けていくことが予想される。

このままでは財政が一段と圧迫されることになりかねない。そのため、財政を改善するための施策が必要とされるが、その一つが2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げである。ただし、これだけでは根本的な解決にはならない。当然、財政の改善に向けてさらなる取り組みが行われることが想定される。

その1つが「国民負担率の上昇」だ。日本の租税負担率・社会保障負担率を合わせた「国民負担率」は諸外国と比較して低い。年金、医療、介護等の社会保障制度を維持していくためには、国民負担率の上昇について議論が進む可能性があるだろう。その結果、各保険料の負担増や医療・介護を利用する際の自己負担率の増加、あるいは給付率の減少につながっていくことが予想される。

長生きによって生活資金そのものが増えること以外にも、制度変更による負担の増加や給付金減少のリスクが生まれると言えそうだ。

インフレで資産が目減りするリスク

実はもう1つ、大きなリスクがある。「インフレリスク」だ。日銀は2013年からいわゆる「ゼロ金利政策」を取っているほか、消費者物価指数2%が安定的に継続することを目標として定めている。2019年3月の消費者物価指数は前年同月比で0.5%の上昇。2018年の1年間の平均では1.0%の上昇となっていて、まだまだ目標とは開きがある。ただ、2015年を100とした総合指数は101.5まで上昇しており、緩やかではあるが物価が徐々に上がっているのは確かだ。

インフレとはモノの値段が継続的に上昇する状態を指すが、実は「良いインフレ」と「悪いインフレ」がある。「良いインフレ」とは、物価の上昇によって企業の収益が増加し、それに伴って従業員の賃金が上昇。消費が上向くことで、緩やかな物価上昇が継続し、さらに企業収益が上向くというもの。一方で、「悪いインフレ」とは、企業収益や消費の増加を伴わず、物価だけが上昇していくインフレを指す。

国民にとって重要なのは、どちらのインフレになるにせよ、インフレが続けば手元にある預貯金の相対的な価値は下がるということ。インフレ環境下では、運用による資産防衛を行っていく必要がある。

リタイア後の収入源である公的年金については、物価や賃金の上昇に合わせて受取額も上昇する仕組み (マクロ経済スライド) になっているが、上昇率が物価や賃金よりも低くなる可能性がある。その場合、預貯金と同じくインフレに対して十分な対応は期待できない。

様々なリスクを想定して早めの対策を

2015年に行われた相続税の増税により、以前に比べると相続人の税負担も増した。相続については遺産分割・納税・税軽減対策を総合的に考え、できるだけ多くの財産を円滑に次世代に遺す方策を講じていく必要があるだろう。ここで伝えたいのは、税制やその他の社会制度が変わると、新たなリスクが生まれる可能性があることだ。

日本の現状を踏まえると、長生きそのものに対する「生活費増加のリスク」のほかに、「制度変更による負担増加リスク」、物価上昇による「インフレリスク」、消費税や相続税などの「増税リスク」が考えられる。このようなリスクを想定し、資産の分散や運用、生前対策などを早めに行っていくことが必要だろう。(提供:大和ネクスト銀行

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