前日については、英国議会にてセカンドリーディング(ジョンソン英首相のEU離脱協定法案)、そして、このセカンドリーディングが可決されれば、プログラム動議(3日間という短期間での審議日程に対しての賛否)の採決が予定されており、結果としては、セカンドリーディングが329対299(30票差)で可決、プログラム動議が308対322(14票差)で否決となりました。これは、ジョンソン英首相の合意案には賛成するものの、3日間という短期間での議論で結論付けるには反対という意味合いになります。ジョンソン英首相は、このプログラム動議が否決された場合は、総選挙を行う旨の発言をしていたことから、延期にはEU加盟国全ての承認が必要ですが、離脱延期→総選挙という流れになる可能性があります。
ジョンソン英首相に今後残された道としては、EUから短期間でも離脱延期を認めてもらい、今回の法案を時間をかけて審議する。これについては、既にセカンドリーディングが可決されており、ジョンソン英首相も、この離脱合意案でEUを離脱する旨の発言をしています。そして、もう一つの選択肢としては、EUから十分な離脱延期を認めてもらい、総選挙を目指すというものです。英国の延期要請については、EU加盟国全ての承認が必要なため、現時点では全てのボールがEUにある状況です。総選挙一択かと思われましたが、セカンドリーディングで30票差という思わぬ大差がついたことから、ジョンソン英首相は、短期間での延期で今回の法案を審議する方向に舵を切るかもしれません。とにもかくにも、本来の期限である10/31でのEU離脱はほぼなくなったと考えていいでしょう。
英国議会の話題一辺倒ではありましたが、海外時間では、トルコが米国と合意した「シリア北東部におけるクルド系武装組織・掃討作戦の120時間休止」の期限が現地時間22日22時(日本時間23日4時)とされており、注目されていましたが、結果としては、トルコ当局者が「シリア内の安全地帯設置はロシアが支援」との声明を出したことにより事なきを得ています。ただ、米国との関係が悪化する可能性は十分想定されるため、今後のヘッドラインには注視すべきだと思われます。
今後の見通し
今後の重要トピックスとしては、英国が既に提出している離脱延期要請に対して、EU各国がどのような回答をするのかでしょう。トゥスクEU大統領が、英国の離脱延期要請の受け入れをEUに勧告したと報道され、すぐさまマクロン仏大統領が「EU離脱は延期なしで実行される必要があるが、数日間の延期に対しては扉を開く」とのアクションをとっています。事実、延期要請にたいして、最大の壁がマクロン仏大統領になると考えられるため、同大統領のヘッドラインが今後のマーケットを賑わせていきそうです。
ただ、時間をかけて今回のセカンドリーディング(ジョンソン英首相のEU離脱協定法案)を議論しても、シンプルに議会を通過するとは限りません。短期間での延期プロセスで進むのであれば、今度は野党が修正法案を提出することができます。野党労働党などはここで関税同盟残留や、確認的国民投票を求める修正法案を提出すると考えられます。特に、関税同盟残留の選択肢には相応の賛成が集まると見られ、野党にとってはここが一発逆転のチャンスともなるため、さらに議会が混迷する可能性があります。
状況によっては、野党の修正案が加わることにより、国民投票で勝ち得た「Brexit」が形を大きく変えてしまうため、結局のところ政府は法案を取り下げざるを得なくなるかもしれません。そうなると、確認的国民投票などの可能性が取り沙汰されそうです。しかし、英国政府がすぐに総選挙に舵を切らず、時間をかけてのセカンドリーディング議論にバイアスをかけていることは、それなりに自信があるということなのかもしれません。
EUからの延期承認待ちの段階へ
プログラム動議が否決されたことにより、英国はEUからの離脱延期の承認待ちの状況になりました。次の急騰ポイントはここであると考えられるため、それまでは押し目待ちのマーケットになりそうです。ポンド円、139.00円付近では一定の底堅さがあることから、139.30円付近での押し目買い戦略。利食いについては、141.00円付近を想定し、138.50円下抜けを損切りラインとして設定します。
海外時間からの流れ
米中通商協議関連では、25日に第14回米中閣僚級通商協議が開催されます。第13回米中通商協議での「第1段階」としての「部分合意」は、11月16-17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に併せて開催される米中首脳会談での署名合意予定です。このスケジュールが狂わない限りは、基本的には緩やかなリスクオンが継続するものと思われます。
今日の予定
本日は、主要な経済指標が予定されていません。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。