前日については、22日にプログラム動議(3日間という短期間での審議日程に対しての賛否)が否決されたことから、本来の離脱期限である10月31日でのBrexitは難しいとの見解から、焦点はEUが英国の離脱延期要請に応えるかどうかにシフトしていたため、これまで乱高下していたポンドについても、一旦小休止する展開となりました。ただ、欧州連合(EU)外交筋が「EU27カ国の政府代表は英国のEU離脱期限を支持した」との発言などがあったことから、短期になるか長期になるかは定かではないですが、とりあえず、「合意なき離脱」は回避できるのではないかとの思惑が強まり、ポンド円は139.50円付近からじりじりと上昇し、一時140.424円まで上値を拡大しました。また、ポンドドルでは、1.29209ドルまで上昇しています。
英国のEU離脱期限については、トゥスクEU大統領が、離脱期限を来年1月末まで3ヵ月延期する英政府の要請を受け入れるよう加盟国に提案し、一部通信社が加盟国が会合を開き大統領の提言を検討したとも報じられています。加盟国は25日に再度会合を持つ予定であり、緊急首脳会議の開催を回避するため、離脱延期を巡る決定は書面による手続きで進める考えの模様です。ジョンソン英首相は、野党・労働党のコービン党首と新たな日程案について協議したものの、結論は出なかったこともあり、短期延期であれば、離脱関連法案への可決に舵を切り、来年1月末までの延期であれば、年内の解散総選挙という道筋を辿りそうです。本日、ジョンソン英首相が総選挙に関する表明をするとの報道がありますが、基本的にはこれまで報道されている内容を自身の言葉で表明するものと思われます。
トルコが米国と合意した「シリア北東部におけるクルド系武装組織・掃討作戦の120時間休止」の期限が現地時間22日22時(日本時間23日4時)となっていましたが、トランプ大統領から「トルコに対する経済制裁を解除」「近いうちにエルドアン大統領と会談」との発言を受けて、トルコリラが大きく反発しました。米国の追加制裁が何よりも懸念されていたことから、一気にトルコリラの地合いは回復したものと思われます。トルコリラ円については、一時18.950円まで上値を拡大しています。
今後の見通し
今後のBrexit関連の予定としては、金曜日に離脱延期日程が確定する可能性が高いものの、日程が確定できない場合は翌月曜日に臨時サミットが開催される可能性がありそうです。トゥスクEU大統領が提案した3ヵ月延期という日程がコンセンサスではありますが、マクロン仏大統領は11月15日までの延期を要求しているとの報道があったため、日程で揉める場合は、この1月末、もしくは11月15日の二択で持ち越しとなりそうです。短期延期となった場合は、総選挙の実施は不可能なため、セカンドリーディングで通過した法案審議に舵を切ることになります。
米中通商協議については、明日25日に予定されている第14回米中閣僚級通商協議に注目が集まります。既に、第13回米中通商協議での「第1段階」としての「部分合意」は、11月16-17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に併せて開催される米中首脳会談での署名合意予定です。懸念点としては、中国側が、米国に対する報復関税を維持する限り年間500億ドル相当の米国産農産物の購入は難しいと警告しており、この点がクローズアップされれば、リスク回避の動きが出てくるかもしれません。ただ、これまで総じて順調である旨のヘッドラインが出ているため、コンセンサスとしては緩やかなリスクオンとなる可能性が高そうです。
短期延期でも長期延期でもポンドは一旦上昇に向かいそう
プログラム動議が否決されたことにより、英国はEUからの離脱延期の承認待ちの状況になりました。ただ、承認はほぼ確実視されており、短期延長になるか長期延長になるかが焦点になりそうです。139.30円のポンド円の押し目買いは、ほぼ理想通りの水準でロングメイクできました。利食いの141.00円、損切りの138.50円設定は変更なしとします。
海外時間からの流れ
本日は、トルコ中銀の政策金利発表が予定され、事前に米国の制裁解除があるかどうかが注目されていましたが、トランプ大統領から制裁解除があったため、利下げ幅としては1.0%程度の緩やかなものになりそうです。また、今回のECB理事会に関しては、事前報道では、特段サプライズはない、どちらかというと無風イベントであると考えられています。
今日の予定
本日は、独・10月製造業PMI/独・10月サービス業PMI、ユーロ圏・10月製造業PMI/ユーロ圏・10月サービス業PMI、トルコ中銀(TCMB)政策金利発表、欧州中銀(ECB)政策金利発表/ドラギ・ECB総裁定例会見、米・新規失業保険申請件数、米・9月耐久財受注(速報値)、米・10月マークイット製造業PMI/米・10月マークイットサービス業PMI、米・9月新築住宅販売件数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。