前日については、事前にジョンソン英首相が総選挙についての声明を出すとの報道がありましたが、最大野党・労働党とEU離脱の関連法案の審議日程で合意できることを条件に12月12日に総選挙を行うとの意向が伝わりました。しかし、英労働党のコービン党首はEUが十分な日程の延期承認を認めない限り、この提案を拒否との見解が伝わり、先行き不透明感が強まりました。ジョンソン英首相としては、10月末だった離脱期限を短期延期し、EU離脱を実現したうえで選挙に臨む狙いだったと思われますが、英労働党のコービン党首にこの目論見は阻止されたことになります。本日25日に、EU側から延期日程のスケジュールが公表されるとの事前報道がありましたが、翌28日、もしくは29日に後ずれする可能性が高まりました。ジョンソン英首相は、28日にも議会に総選挙の提案をする見通しです。

既にEU加盟国27国のうち、26カ国はトゥスクEU大統領が提案している1月31日までの3ヵ月延期に賛成していますが、フランスのマクロン大統領が反対の姿勢をとっており、数日から最大でも11月15日までの延期を主張してます。EUは本日25日に離脱延期日程についての会合を持つ予定ですが、本日中に具体的な日程は出てこない可能性が高そうです。短期延期になるのか、それとも1月31日までの長期延期になるのかでポンドの動向は大きく変わってくることもあり、本日については、昨日に引き続き、様子見の姿勢が強まりそうです。

昨日開催されたECB理事会は、ドラギECB総裁の最後の理事会であり、定例会見では「異例の緩和から出口は遠のいた」「必要ならあらゆる手段を調整する用意がある」「下振れリスクは顕著でインフレは低い」「経済見通しのリスクは下方向のまま」「緩和の強化は達成したと感じた」と発言しました。前回波乱を巻き起こした同総裁ですが、最後の定例会見ということもあり、事前報道通り当たり障りのない内容になりました。ユーロドルでは一時1.1150ドル付近まで上昇しましたが、じりじりと1.1100ドル割れ水準まで下落したものの、ドラギECB総裁の発言というよりは、欧州時間序盤に発表された欧州各国のPMIの悪化が嫌気されたものと思われます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日25日は、第14回米中閣僚級通商協議が電話協議で開催予定です。基本的には、第13回米中通商協議での「第1段階」としての「部分合意」は、11月16-17日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に併せて開催される米中首脳会談での署名合意予定ということもあり、大きなサプライズはないと考えれていますが、懸念点としては、米国による新疆ウイグル自治区に絡むビザ発給停止や中国による米下院の「香港人権・民主主義法案」可決に対する報復措置が挙げられます。ただ、プラス要素として、劉鶴中副首相が、米国との貿易協議が前進しており「部分的合意」に向け双方が取り組んでいると前向きな発言をし、トランプ大統領が「中国との貿易協定は順調に進んでいる」と発言していることが挙げられます。

前日は、ペンス米副大統領の演説への警戒感が強まっていましたが、香港の民主化デモ参加者に対する中国サイドの行動を批判する場面もありましたが、「中国の発展を抑えこむつもりはなく建設的な関係を求めている」「トランプ政権は中国からの分離を求めていない」との発言があり、警戒していたほど中国に対する強硬な姿勢を示さなかったことで、第14回米中閣僚級通商協議についても、事前予想では順調に消化するのではないかと考えられています。

トルコ中銀の政策金利発表については、市場予想を大きく上回る2.50%の利下げとなる14.00%に引き下げました。これは、トランプ大統領から制裁解除があったことが最大の要因だと考えられますが、さすがに利下げ幅が大きく発表直後はトルコリラ売りが強まりました。ただ、米国からの制裁解除されたことへのプラス要因が好感されており、18.70円付近では底堅い動きになっています。

本日は、ポンド円ロングは我慢の時間

EUからの英国離脱延期日程が来週に持ち越されるのではないかとの報道が相次いでおり、現段階ではポンドは調整の利食い売りが強く、ポンドロングとしては我慢の時間になりそうです。139.30円のポンド円ロング、利食いの141.00円、損切りの138.50円設定で変更なしとします。

海外時間からの流れ

本日25日にEUから離脱延期が公表されるのではないかとの思惑から、翌週に持ち越しになるとの各種メディアの見解により、ポンドの地合いが難しくなっています。ジョンソン英首相が提案する動議が可決されれば、議会が解散される11月6日までの間、ジョンソン英首相がEUと取り決めた離脱合意案を議会で速やかに成立させるチャンスも出てくることになり、英国は投票日を待たずにEUから離脱することになりますが、まずは続報待ちという状況になりそうです。

今日の予定

本日は、独・10月IFO景況指数、米・10月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。また、要人発言では、ビルロワドガロー・仏中銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。