前日の海外時間では、日本時間18時よりEUではブレグジット期限延長の期間について議論する予定でしたが、EU側から早々にフレクステンション(基本的に1月末までの延長で、仮にそれよりも前に議会通過ができればそれより早い離脱も認める)が認められたため、10月31日の「合意なき離脱」の可能性がほぼなくなったとの思惑から、じりじりとポンド買いが強まり、ジョンソン英首相が早期総選挙を求める動議を提出する時間帯では、ポンド円で140.20円付近まで上値を拡大しました。ただ、採決では、早期総選挙実施の提案は否決され、本日29日に次期総選挙の日程を12月12日に変更するという一行だけの法案を提出すると表明しました。この改正案は、下院の2/3を必要とせず、単純な過半数で可決となります。
新EU派の自由民主党とスコットランド民族党(SNP)は同様の動議を支持する意向を示していますが、12月12日という日程に関しては難色を示していると言われており、同法案に対して日程の変更などの修正が加えられる可能性がありそうです。
米中通商協議については、トランプ大統領が「中国との貿易に関する合意署名の作業は想定より早く進んでいる」との見解を示したことをきっかけに、リスクオンの地合いが強まりました。ドル円については、109円台を一時回復するなど、底堅い動きを見せています。全般株式市場も買いが先行していることもあり、緩やかなリスクオンの動きは当面は継続する見通しです。
今後の見通し
ジョンソン英首相が、トゥスクEU大統領に対する書簡で「意思に反して課された法的な義務のもと、EU離脱時期の延期に対する英国の正式な同意を認めるほかない」と表明したことにより、英国のEU離脱延期が確定しました。今後は、総選挙の日程を詰める動きになりそうですが、マーケットがブレグジット関連の話題から、徐々に米中通商協議、FOMC、日銀政策決定会合へと興味が移行するのではないでしょうか。特にFOMCでは、現行の1.75-2.00%から0.25%利下げを行い、1.50-1.75%になることがコンセンサスになっていますが、一部では、今回で「予防的」利下げは打ち止めになるのではないかと言われており、12/11のFOMCで継続的に「予防的」利下げが示唆されるかどうかが注目されます。
週末に予定されている雇用統計では、非農業部門雇用者数が8.5万人増と前回の13.6万人増から大きく減少しています。これは、GM(General Motors)のストライキが影響しているのですが、一部ではさらに低い数字が見込まれています。理由がはっきりしているだけに、例え悪い結果になったとしても、その後は買い戻しの動きが強まりそうですが、ファーストアクションは強いドル売りになる可能性があるため、この点には注意が必要でしょうか。
また、日銀政策決定会合では、現状ではほぼ現状維持、特にマイナス金利の深掘りなどは延期濃厚と報道されています。しかし、最新のエコノミスト予想では、3割がマイナス金利の深掘りを見込んでおり、現在マイナス0.1%の短期政策金利の引き下げも想定していると報じられています。7割近くは現状維持との見解を示してはいますが、消費増税後の景気を判断する材料が揃っているとは考えづらく、深掘りがあるのは12月会合にずれ込むのではないかと考えています。
ポンド主導でのマーケットは一旦小休止
EUからフレクステンションの合意が得られたことで、ブレグジット関連の話題は一旦小休止、今後は総選挙へと移行しつつあるため、ポンドがマーケットを牽引する動きは影を潜めるのではないでしょうか。ただ、米中通商協議でリスクオンのマーケットになっていることもあり、ポンド円ロングは継続です。139.30円のポンド円ロングは、利食いの141.00円、損切りの138.50円設定で変更なしとします。
海外時間からの流れ
一部トルコメディアによれば、トルコはロシア製戦闘機の購入を検討しており、部品をトルコ国内で製造するという話まで進んでいると報じられています。トランプ大統領が対トルコ制裁を解除したばかりの状況であるため、米国議会がより強硬なトルコ制裁に動く懸念が高まっており、引き続き、トルコ関連の報道には注意が必要かもしれません。ただ、現状は、緩やかなリスクオンの地合いがトルコリラをサポートしています。
今日の予定
本日は、米・10月CB消費者信頼感指数、米・9月中古住宅販売保留指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、ロウ・豪中銀(RBA)総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。