前日の海外時間では、一度は否決されたジョンソン英首相提案の早期総選挙に代わり、総選挙の日程を12月12日に変更するという一行だけの法案を提出しました。この改正案は、下院の2/3を必要とせず、単純な過半数で可決するため、労働党の賛成があれば、難なく通過する改正案でしたが、結果としては労働党が賛成に回ったこともあり、438対20で可決されました。これで「合意なき離脱」の可能性は一気に低下したため、ポンド堅調の動きになりそうですが、材料出尽くしの側面もあるため、目先は利食い先行のポンド売りが出てくるかもしれません。

最新の世論調査では、保守党が10-12ポイントリードしていると報道されていますが、10月31日のEU離脱を高らかに掲げていたジョンソン英首相への失望感は相当なものがあると言われており、12月12日には保守党のリードが縮小するというケースは十分考えられます。ただ、保守党がミスリードをしない限りは、過半数を獲得することが考えられます。ただ、万が一労働党が政権を奪取するようなことになれば、2度目の国民投票を掲げてくると想定されるため、再び英国は混乱に陥る可能性が高そうです。これまでの英国の国民投票、総選挙は、ポンドに大きなボラティリティをもたらしており、今回の総選挙もボラティリティの高いイベントになりそうです。

米中通商協議に関しては、「11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の米中首脳会談では、第1段階合意の署名には至らない可能性がある」との一部報道によりリスク回避の円買いが強まりました。これまでの経緯から、APECでの署名合意は既に織り込まれていると考えられていたため、署名合意に至らない場合は、一気にリスク回避の動きが強まりそうです。前日は、ドル円で108.75円付近でサポートされましたが、さらに詳細なヘッドラインが出てくるようなことになれば、ドル円、クロス円は下落する動きになりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、FOMCが予定されています。既に0.25%利下げの1.50-1.75%の政策金利になることは90%以上織り込まれており、この点に関してはサプライズはなさそうです。ただ、一部では「予防的」利下げは今回で打ち止めとなり、7月や9月の時と比べて強い内容の声明が出るのではないかと考えられています。パウエルFRB議長については、定例会見ではこれまで通り「データに基づく」と強調することが考えらるため、マーケットインパクトに欠けそうですが、焦点としては、タカ派のローゼングレン・ボストン連銀総裁とジョージ・カンザスシティ連銀総裁の動向でしょうか。恐らく両名とも反対票を投じると考えられますが、どちらか一人が利下げに反対票を投じなかった場合は、12月の追加利下げは確実視されるでしょう。

本日は、FOMC発表前にGDPの速報値が発表されます。前回の2.0%から悪化の1.6%予想になっており、この点も今回の「予防的」利下げに組み込まれそうです。既に9月の小売売上高の悪化、消費も低下してきており、耐久財受注も悪化していることからビジネス投資が弱くなっていること考えると、今回の利下げは妥当だと考えられますが、米中通商協議の進展次第で大きく見通しが変更になる可能性があるため、「予防的」利下げが終了するきっかけは、何がトリガーになるのかを見極めるイベントとして捉えられそうです。

現段階ではまだ影響は限定的になっているものの、米下院がトルコ高官や国営銀行などへの制裁案を超党派による圧倒的多数で可決しました。トルコによるシリア北東部の軍事作戦を非難したものですが、一部トルコメディアによるロシア製戦闘機の購入検討も今回の制裁案の加速に繋がったものと思われます。今後は、前週トルコ制裁を取り下げたばかりのトランプ大統領に判断が委ねられますが、トランプ大統領が制裁へと舵を切るようであれば、トルコリラ売りは免れないと思われます。

ポンドロングについては、一旦利食いを検討

12月12日の総選挙に向けて、一旦ブレグジット関連の話題が小休止するため、ポンドの方向性が測りづらく、利食い先行の動きが出てくる可能性があります。また、今週は主要イベントが目白押しであることもあり、利食いの逆指値を設定し、利食い幅を縮めることでポジションの手仕舞いを想定します。139.30円のポンド円ロングは、利食いは140.60円、利食いの逆指値を139.50円設定とします。

海外時間からの流れ

本日、南アフリカでは中期財政政策が公表されますが、先だってゴーダン公共企業相がエスコムの改革案を発表し、「(国営電力会社)エスコムの分割は遅くても2020年の3月までに行う」「エスコムは再生エネルギー施設の開発に参加する」「政府はエネルギーギャップを埋めるために更に2000メガワットの電力を入手する」「エスコムのCEOはできれば来週までに発表したい」と発表しました。直前にエスコム問題が不安視され、18時付近ではランド売りが強まりましたが、同発表後はじりじりと買い戻しが出ています。ただ、本日の中期財政政策がマーケットの期待に沿わないようだと再びランド売りが強まるかもしれません。

今日の予定

本日は、独・雇用統計、米・10月ADP民間雇用者数、米・第3四半期GDP(速報値)、独・10月消費者物価指数(速報値)、加中銀(BOC)政策金利発表、米・FOMC政策金利発表/パウエル・FRB議長定例会見などの経済指標が予定されています。要人発言では、ラウテンシュレーガー・ECB専務理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。