前日の海外時間では、市場コンセンサス通り、FRBはFOMCにて0.25%金利を引き下げ、1.50-1.75%にすることを発表しました。声明文では、「見通しについての不確実性が残る」との文言を残したものの、前回から「景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」との文言は削除されました。その後、パウエルFRB議長の定例会見では、「金融政策は良い状況にあると判断」「現行の政策スタンスは適切であり続ける可能性が高い」などの見解を示すと、市場では、利下げ打ち止めのサインと受け止められ、ドル円は109.283円まで上値を拡大しましたが、8月1日高値である109.30円付近に面合わせしたところで反落する動きとなりました。

ただ、記者会見後半では、「利上げの前には著しいインフレ率の上昇が必要」との見解を示したため、早期の利上げ転換もないとの思惑から今度は一転して売りが優勢となり、ドル円は108.724円まで下落し、狭い値幅ながらも、FOMCイベントで日柄高値と安値を更新する動きとなりました。FOMC以外では、チリ政府が、反政府デモによる混乱を理由に、11月に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催を断念すると発表しました。APECで米中首脳会談が予定されていたこともあって一時リスク回避の動きが強まりましたが、中国側はAPEC中止を受けて、トランプ大統領に代替地としてマカオでの会談を提案したとの報道があり、米政府も「チリのAPEC首脳会議がキャンセルになっても、米中合意時期は変わらない」と引き続き米中通商協議進展期待に陰りがないことが示されたことで、影響は限定的になっております。

FOMCと同じく、注目されていた南アフリカでの中期財政政策では、ムボウェニ南アフリカ財務相が「国営電力会社エスコムの改革の遅れは新たな支援が必要ということ」「歳入は1.37兆ランドを予測、これは2月の予想より4%低い」「エスコムへの支援は2019-20年に490億ランド、20-21年に560億ランド、21-22年に330億ランド」などと引き続きエスコムに不安がある旨の内容を公表したことから、ランド売りが強まり、ランド円では7.45円付近から7.25円付近まで急落する動きになりました。前日に、ゴーダン公共企業相がエスコムの改革案を発表したことで一時的に安心感が生まれていましたが、現実は非常に厳しい内容となり、ランドの上値を重くしそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

FOMC以外では、昨日は米国の主要経済指標が発表され、米・第3四半期GDP(速報値)(前期比年率)が市場予想+1.6%に対して結果は+1.9%となり、米・10月ADP民間雇用者数は11.0万人増予想が12.5万人増という結果になりました。週末の雇用統計では、GM(ジェネラルモーターズ)のストライキの影響で非農業部門雇用者数の悪化が想定されていますが、市場予想である8.5万人増よりも強い内容になれば、素直にドル買いで反応しそうです。また、GDPの落ち込みが限定的であり、米中通商協議での経済への影響も限定的であることが示されました。パウエルFRB議長の「現行の政策スタンスは適切であり続ける可能性が高い」との発言が、米国の経済指標データから出たものであれば、一旦利下げ打ち止め観測が徐々に強まってくるものと思われます。

本日は、日銀政策決定会合が予定されています。既に国内、海外メディが報道しているように、今回の決定会合では、追加緩和を見送る可能性が高そうです。10月から開始した消費増税の影響を計るには時間が足りていない点、米中通商協議が順調に進展しており、且つ、英国のEU離脱問題についても、離脱延期となったことから、先行き不透明感が後退していることが挙げられます。サプライズがあるとすれば、5年前と同様GPIFの新しいポートフォリオ・アロケーションが発表されるかどうかですが、基本的には据え置きに近い内容になると思われます。また、引き続き、短期金利の変化より、イールドカーブをよりスティープ化させるような政策がポイントになりそうですが、明確な施策は本日は出てこないと考えています。黒田日銀総裁がマイナス金利の深掘りを改めて強調、そして「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」での物価見通しの下方修正は既にコンセンサスになっていると思われます。一時的に円高方向に傾く可能性はありますが、総じてバイアスは円安方向にあると考えられます。

ポンドロングについては、一旦利食いを検討

12月12日の総選挙に向けて、一旦ブレグジット関連の話題が小休止するため、ポンドの方向性が測りづらい状況になっています。本日は日銀政策決定会合、明日は米雇用統計が控えていることもあり、利食いの逆指値を設定し、利食い幅を縮めることでポジションの手仕舞いを想定します。139.30円のポンド円ロングは、利食いは140.60円、利食いの逆指値を139.50円設定とします。

海外時間からの流れ

「利上げの前には著しいインフレ率の上昇が必要」という高いハードルを設定したものの、パウエルFRB議長が利下げ打ち止めを示唆したことはドル買いの動きを加速させそうです。利上げを行うには、まだまだ道のりが遠そうですが、「予防的」利下げを継続するほど国内景気に悪化は見られないということを表明したものと思われます。基本的には、一部報道にもあるように、2020年年末までは、1.50-1.75%の政策金利を維持するのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、日銀金融政策決定会合/黒田・日銀総裁定例会見、独・9月小売売上高、トルコ・9月貿易収支、ユーロ圏・第3四半期GDP(季調済)(速報値)、ユーロ圏・10月消費者物価指数(速報値)、ユーロ圏・9月失業率、米・9月個人所得/米・9月個人支出、米・9月PCEコア・デフレータ、米・新規失業保険申請件数、加・8月GDP、米・10月シカゴ購買部協会景気指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、ジョルダン・スイス中銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。