ZUU online magazine2019年12月号特集(10月21日発売)からお届けします。
「老後2000万円問題」をきっかけに、長期分散型の投資やマネープランの見直しが意識されるようになり、以前にも増して米国株投資への注目が高まっている。ここからの米国株の動向や、その投資対象としてのポイントを、エモリキャピタルマネジメントの代表取締役・江守哲氏に分析してもらった。
慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」として活躍。商社・外資系企業時代は約30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問ではヘッジファンドを運用。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。
歴史的にも割高とみられる現在の米国株の株価水準
ここからの米国株式市場だが、結論から言うと11月に本格的な下げが来る可能性があるとみている。世界最大の投資持ち株会社であるバークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェットが、かなりキャッシュ比率を上げていることも一つの傍証といえるだろう。これは米国株式市場の危機として一部で捉えられている。今の米国株式市場の株価水準は割高といえるからだ。代表的な株価指標S&P500指数のPER(株価収益率)は19倍台の半ばにあるが、この水準は歴史的に見てもかなり高い。おそらく、この水準を持続することは難しいだろう。
割高とみられる現在の米国株に投資するためには〝調整〝が必要となってくる。
具体的には、①株価が下がる、②米国企業の業績が格段によくなる、③米国経済が著しく向上する、という3つの要因しか見当たらないが、②と③のケースは現実的にかなり難しいと考えている。米国は個人消費や政府支出が伸びて、2019年4〜6月期の実質GDP成長率が前期比年率プラス2.1%となった。
しかし、企業業績が劇的によくなっているわけではないので、「企業業績の伸びから、割高な株価が持続すると予測されるので株を買っていい」という判断は危険だ。やはり、米国株を買うためには下落の場面が欲しいので、11月にも予想している下落局面までは、投資に慎重になったほうがいいと考えている。
S&P500が今年の9月以来となる3000ポイントの大台にもう一度復帰する可能性は十分にあるだろう。だが、これを大きく超えることは、現実的には厳しいのではないだろうか。おそらく、チャート的には二番天井をつけに向かって11月に下げが来ると予想している。
逆イールド発生から3カ月以内にピークアウト
米国株式市場の11月調整の根拠としているデータに、短期金利が長期金利の水準を上回る「逆イールド」がある。1956年以降、逆イールド現象が生じたケースは10回あるが、そのうちの6回は発生から3カ月以内に株価がピークアウトしているのだ。テレビなどでは「逆イールドは1年ぐらい株価が上がり続ける」という解説もみるが、それは4回しかなく、正しい説明とはいえない。