シンカー:7-9月期も、消費、設備投資、公共投資、そして純輸出は堅調で、前期比年率0%台であるマーケットの実質GDPのコンセンサスは+1%台に向けて上方修正されていくだろう。これで3四半期連続で実績は事前のコンセンサスを上回る可能性がある。好調な内需を背景とする労働力不足で雇用・所得環境が更に良好となり、新たに職を求める労働者が増加した。これらの労働者が職を得るまでの過渡期にあることで、失業率は上昇したとみる。7-9月の日銀短観では、雇用人員判断DI(全規模全産業)が-32(マイナス=不足)と、4-6月期から変化はなく、労働力不足を背景に雇用・所得環境が良好な状態に変化はないとみられる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

9月の失業率は2.4%と、8月の同2.2%から上昇した。

5月から8月までの3か月で、労働力人口が0.4%も増加したが、就業者は0.6%も増加し、そのすべてを吸収した。

夏場の消費活動が強く、人手のかかるサービスを中心に労働者の需要が大きく増加したとみられる。

失業率は2.4%から2.2%まで低下した。

9月はその急な動きの反動が現れた。

労働力不足を背景に雇用・所得環境が更に良好となり、新たに職を求める労働者が増加し、9月には労働力人口が更に前月比+0.1%増加した。

9月の就業者はまだ同-0.1%となっており、これらの労働者が職を得るまでの過渡期にあることで、失業率は上昇したとみる。

首都圏を台風が直撃したこともテクニカルに労働市場の下押しとなったとみられる。

9月の有効求人倍率は1.57倍と1.59倍から若干低下したことにも影響がみられる。

7-9月の日銀短観では、雇用人員判断DI(全規模全産業)が-32(マイナス=不足)と、4-6月期から変化はなく、労働力不足を背景に雇用・所得環境が良好な状態に変化はないとみられる。

グローバルに製造業の生産・在庫サイクルが弱い中で、2019年前半の実質GDPは2018年後半対比で年率+1.8%も伸び、1%程度である潜在成長率の倍のペースである。

この間の内需の寄与度は+1.5%、外需は+0.3%となっている。

日本は内需主導で成長する経済に明らかに変化している。

2019年の実質GDP成長率のマーケット・コンセンサス予想をみると、グローバルに製造業の生産・在庫サイクルが弱く、他の国が下方修正される中で、雇用・所得環境が良好で内需が強く上方修正されてきているのは日本だけである。

弱い方向にかかっていた日本の内需に対するバイアスを修正する必要があることを示す。

7-9月期も、消費、設備投資、公共投資、そして純輸出は堅調で、前期比年率0%台であるマーケットの実質GDPのコンセンサスは+1%台に向けて上方修正されていくだろう。

これで3四半期連続で実績は事前のコンセンサスを上回る可能性がある。

ただ、10月の消費税率引き上げで消費者心理が下押される懸念があるため、台風の被害の復旧策と国土強靭化の促進を含め、来年初までには政府は追加経済対策を実施して、デフレ完全脱却に向けて内需拡大のモメンタムを維持する必要があるだろう。

図)各国の実質GDP成長率のコンセンサスの推移

各国の実質GDP成長率のコンセンサスの推移
(画像=ブルームバーグ、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司