前日の海外時間では、本来であれば11月16-17日のAPEC首脳会議での合意署名がコンセンサスになっていた米中通商協議ですが、チリ政府が、反政府デモによる混乱を理由に、11月に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催を断念すると発表しても、米政府が「チリのAPEC首脳会議がキャンセルになっても、米中合意時期は変わらない」との見解を示していたことで安心感が広がっていましたが、急遽、中国当局者の話として「米国との間で包括的かつ長期的な貿易合意に達することが可能かどうか疑念を抱いている」との報道があったため、一気にリスク回避の動きが強まりました。本日予定されている電話での米中閣僚級通商協議が引き続き注目されそうですが、米中通商協議は、これまでのリスクオン前提のイベントではなくなる可能性がでてきています。

英国の総選挙については、下院が12月12日実施の法案を可決したことに続き、上院も同法案を承認しました。これにより、議会は11月6日に解散することになり、5週間の選挙戦に突入します。世論調査の結果は保守党が支持率で10ポイント程度労働党をリードしていますが、ブレグジットに象徴されるように、世論調査の信憑性については、あまり高くないと考えられているため、選挙結果については、基本的には不透明であると考えた方がよさそうです。ただ、「合意なき離脱」の可能性は一気に低下していることもあり、利食い優勢のポンド売りの影響は、限定的なものになりそうです。

日銀政策決定会合では、市場の予想通り金融政策を据え置きましたが、フォワードガイダンスを『日本銀行は、政策金利については、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している』とし、将来の利下げの可能性を含む内容に修正しました。しかし、この点においては、既にマーケットが織り込んでいたこともあり、結果的に影響は限定的になりました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、米国の雇用統計が予定されています。今週発表された米・10月ADP民間雇用者数は、11.0万人増予想が12.5万人増という結果になりました。週末の雇用統計では、GM(ジェネラルモーターズ)のストライキの影響で非農業部門雇用者数の悪化が想定されていますが、市場予想である8.5万人増よりも強い内容になれば、素直にドル買いで反応しそうです。既に、今回の雇用統計対象である10月6日-12日にかけて、GM(ジェネラルモーターズ)の組合員約4.8万人がストライキを行っていたことが公表されているため、この部分は差し引いて考えた方がよさそうなため、例え市場予想通りの内容だったとしても、極端なドル売りには繋がらない公算です。

また、ムボウェニ南ア財務相が「ムーディーズは財務省に非常に注意深く財政スタンスを調べ、金曜日に(格付けを)発表すると伝えてきた」と発言したことを受け、引き続きランド売りが継続しています。既に、「国営電力会社エスコムの改革の遅れは新たな支援が必要ということ」「歳入は1.37兆ランドを予測、これは2月の予想より4%低い」「エスコムへの支援は2019-20年に490億ランド、20-21年に560億ランド、21-22年に330億ランド」などと、エスコムに対して将来的に不安な点が残されていることに加え、国内経済が圧迫されることが公表されたこともあり、ランドの手仕舞いタイミングとして意識されている可能性が高く、当面ランドの上値は重くなると考えていいかもしれません。

ポンドロングからユーロロングに戦略変更

ポンド円については、139.30円のロングポジションは140.60円で利食い、手仕舞です。英国のEU離脱が延期となり、また12月12日の総選挙に向けてボラティリティが低下しそうなため、一旦ポンドからは離れたいと思います。ドル売りの流れを受けてユーロドルが堅調に推移しているため、ユーロドルの押し目買い戦略に変更です。1.1120ドル付近まで引きつけての押し目買い戦略、利食いは1.1250ドル付近を想定し、1.1080ドル下抜けで損切りとします。

海外時間からの流れ

上述したムーディーズの南アフリカの格付けについては、中間予算の内容を考えると、ジャンクに引き下げられる可能性があります。ただ、前回は格付け発表が保留され、発表自体もマーケットが終了した6時過ぎになっているため、影響がどの程度あるのかは定かではありませんが、十分に注意した方がよさそうです。

今日の予定

本日は、英・10月製造業PMI、米雇用統計、米・10月マークイット製造業PMI、米・10月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、クラリダ・FRB副議長、クォールズ・FRB副議長、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。