「もはや『世界最強の金融エリート集団』の面影は見られない」ウォール街の市場関係者がそう言った。10月15日、ゴールドマン・サックス(以下、ゴールドマン)が発表した7~9月期決算は減収減益となった。後段で詳述するように世界的な景気減速懸念から投資銀行部門の収益が悪化したほか、株式投資の評価損なども響いた。トレーディング部門は持ち直したものの、新規事業の個人向け融資「マーカス」やカードビジネスでも苦戦が浮き彫りとなった。

ゴールドマンと言えば、ウォール街でも一目置かれる存在であるが、最近では業績悪化や1MDB疑惑、幹部の辞任報道が相次ぐなど暗い話題が目に付く。今回は「金融エリート集団」ゴールドマンの迷走についてリポートしたい。

投資銀行部門が悪化、ウーバー評価損も響く

ゴールドマン・サックス,株価
(画像=PiotrSwat / shutterstock, ZUU online)

ゴールドマンが発表した7~9月期の純利益は前年同期比26%減の18億7700万ドルと、3四半期連続の減益となった。1株利益は4.79ドル(前年同期は6.28ドル)とファクトセットがまとめたアナリスト予想の4.81ドルに届かなかった。一方、収入は6%減の83億2300万ドルで減収減益となった。

中核事業の投資銀行部門が低調で収入は15%減の16億ドルとなった。世界経済の減速懸念からM&A助言手数料、債券引き受け、株式引き受けの主要3分野がいずれも減収となったことが響いた。また、投資活動からの収入は40%減と約3年ぶりの大幅減となっている。配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズなどの株式で評価損を計上したほか、米シェアオフィス大手ウィーワークへの投資がIPO(新規株式公開)撤回で暗礁に乗り上げたことも影響した。

一方、このところ低迷していた債券のトレーディング収入は8%増と持ち直し、株式のトレーディング収入も5%増となった。また、アセットマネジメント部門の9月末時点の運用残高は1.8兆ドルで、6月末時点から6%増加している。

個人向け融資「マーカス」も軌道に乗らず

ゴールドマンは新規事業として、個人向け(リテール)融資事業に注力していたが、これまでのところ思うように成果を出せていない。同社は2016年に消費者向けオンライン融資プラットフォーム「マーカス」を開始したが、これまでに13億ドルの損失を計上していることが明らかになった。