前日の海外市場では、米国は対中関税の撤回を検討していると報じられ、また、中国は通商協議の第一段階の合意の一環として、9月に発動済みの対中関税を撤回するよう求めているとも報じられています。さらに、第一段階の合意には、12月15日におよそ1,560億ドルの中国製品に対する関税発動計画の取り下げがの確約が含まれているとも報じられており、一部メディア(英フィナンシャル・タイムズ紙)は、米国がそうした要求を受け入れる可能性があるとの見解を示しています。緩やかなリスクオンの地合いは継続しており、NYダウは連日史上最高値を更新し、ドル円も一時109.240円まで上値を拡大してます。
経済指標では、米・10月マークイットサービス業PMI(確報値)が市場予想51.0に対して50.6になったことを受け、ドル円は108.80円台まで下落する場面もありましたが、直近のドル売りのきっかけとなっていた米・10月ISM非製造業景況指数が市場予想53.5に対して54.7になったことを受け、109.20円台まで買い戻される動きになっています。また、米10年債利回りが一時1.8708%前後と9月16日以来の高水準を付けたこともリスクオンの動きを後押ししたものと思われます。
ドル円については、9月の日銀短観で発表された大企業・製造業の想定為替レートが1ドル=108円68銭であることを考えると、かなり円安方向に振れており、本邦実需からの売り意欲は非常に強い状況にも関わらず、上値を拡大していることを考えると、リスクオンの地合いはかなり固められてきていると考えてよさそうです。滞空時間は短いかもしれませんが、ドル円は110円を目指した動きになっていると考えられます。
今後の見通し
本日、英議会下院が正式に解散するため、12月12日総選挙に向けた動きが一気に加速しそうです。調査会社のICMが行った最新の世論調査では、保守党の支持が38%、労働党は31%、EU残留派の自由民主党は15%、ブレグジット党は9%と保守党のリードがじりじりと縮まってきています。総選挙を行うことにより保守党の議席が伸びるのではないかとの思惑がありましたが、10月31日のEU離脱を高らかに宣言したものの、結局はEUから離脱延期をお願いする形となったジョンソン英首相への失望は、事前予想よりも大きいのかもしれません。このまま保守党リードが縮まった状況で総選挙を迎えると、ハングパーラメント(議院内閣制の政治体制において、立法府でどの政党も議席の単独過半数を獲得していない状態)になる可能性があり、ジョンソン英首相のブレグジット案の再考の必要がでてくるかもしれません。そうなると、再び英国議会は混乱状態になるため、ポンドの動きは不安定なものになりそうです。
豪中銀(RBA)は、昨日発表された政策金利を市場コンセンサス通り0.75%に据え置きました。ただ、その後の声明で12月での利下げの可能性が示唆されており、引き続き労働市場を中心とした豪州の経済指標が注目されそうです。既に、経済の持続可能な成長、完全雇用、インフレ目標の達成などを支えるために必要であるならば更なる金融緩和措置を検討する用意があると発言しているため、12月の利下げについては、状況次第では思い切った決断をしそうです。特徴としては、「今後更なる禁輸緩和政策への転換を検討する際には世界と国内の経済動向を精査することが適切である」などとRBAは様子見姿勢をまず優先させますが、今回は、様子見に近い発言がなかったことを考えると、RBAは以前よりもハト派寄りの考えを強めていると考えられます。
中国元高により、豪ドルロングの短期戦略に妙味ありと見る
海外時間のドル買いの動きにより、1.1120ドルのユーロドルロングは、1.1080ドルにて損切り、手仕舞です。米中通商協議の進展が当初の想定よりも早いペースで改善に向かっており、クロス円のロングに妙味ありのマーケットになってきました。特に、中国元高が進んでおり、経済状況は決して良くはありませんが、連れるように豪ドル高になっており、あくまで短期戦略であれば、豪ドル円のロングが面白そうです。74.80円付近まで引き付けての押し目買い戦略、損切りは74.40円下抜けに設定し、利食いは、直近高値を僅かに更新する75.50円付近を想定します。
海外時間からの流れ
米中通商協議中心のマーケットに逆戻りした形ですが、本日の東京時間に中国の環球時報が、「中国は米国が関税延期をしない限り、通商交渉第1段階を合意しない」と報じたことにより、ややクロス円の上値が重くなってきています。メディアを活用した両国の牽制の一環でしょうが、引き続き、このようなヘッドラインでの一喜一憂のマーケットになりそうです。
今日の予定
本日は、独・9月製造業受注、ユーロ圏・10月サービス業PMI(確報値)、ユーロ圏・9月小売売上高、加・10月Ivey購買部協会指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、デギンドス・ECB副総裁、メルシュ・ECB専務理事、エバンス・シカゴ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。