株式市場の参加者が、今どのような心理状態でマーケットに参加しているかがわかると、今後の株価を予想しやすくなります。実はそれが数値化され、誰でも見られるようになっている指標があります。それは、日経VI指数(以下日経VI)です。今回は、日経VIの概要について見ていきましょう。

アメリカの恐怖指数VIX指数

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(写真=yoshi0511/Shutterstock.com)

日経VIと同じような指数がアメリカにもあり、VIX指数と呼ばれています。VIX指数の由来はボラティリティ・インデックス(Volatility Index)で、シカゴ取引所がS&P500指数のオプション取引から算出したボラティリティ(株価の変動率)をもとにしたものです。この変動率が高くなると株価の変動が激しくなり、市場がヒートアップしていることがわかります。

株価が下落する時だけVIX指数が上がるわけではありませんが、一般的には株価が急落する際に市場が混乱するため、VIX指数は別名「恐怖指数」とも呼ばれているのです。

VIX指数の計算には、デリバティブ取引の一つであるオプション取引で使われるギリシャ指数と呼ばれる4つの指数(デルタ・ガンマ・セータ・ベガ)のうち、ベガと呼ばれるインプライド・ボラティリティが使われます。オプション取引自体の計算式は、ノーベル経済賞を受賞したブラック・ショールズモデルをもとにしています。

オプション取引には、銘柄を買う権利であるコール・オプションと、銘柄を売るであるプット・オプションがあり、それらは投資家心理を反映しているため、将来の株価がある程度予測できると言われています。

株式市場への参加者が、株価が激しく変動すると予想した時はボラティリティが上がり、VIX指数も上昇します。逆に変動が穏やかになると予想した時はボラティリティが下がり、VIX指数も下がるのです。

VIX指数が15~20前後にある場合は、市場参加者の心理状態が落ち着いており、20を超えると市場が何かに反応し始め、30を超すと市場がかなりざわついている、というのがマーケット参加者の解釈です。

以下のグラフは、S&P500とVIX指数との関係をヒストリカルに表したものです。

米国
出典:米国 Yahoo Finance Chart

小さくてわかりにくいかもしれませんが、リーマンショックが発生した2009年(緑の丸)、VIX指数(紫色)は史上最高の80.86を付けました。S&P500(青色)もその時点で大きく下げています。また2018年(赤い丸)は株価が上がっていますが、その時VIX指数も上がっていることがわかります。

日経平均VIとは

このVIX指数と同じものが日本にもあり、日経平均VIと呼ばれています。

日経平均VIは、市場が予測する日経平均株価の1ヵ月先までの変動の大きさ(ボラティリティ)を表す数値です。計算には日本取引所グループ(JPX)が算出する日経225オプション価格が用いられ、日本経済新聞社によってリアルタイムで算出・公表されています。

日経平均VIの考え方はアメリカのVIX指数と同じで、日経平均株価が急落する時に急上昇するという特徴があり、通常は日経平均株価と弱い逆相関の関係にあります。また数値が急上昇した後は、一定のレンジ(20~30程度)に落ち着く傾向があります。

日本
出典:日本取引所グループHP

日経平均VIを使った取引とは

日経平均VI自体を取引することもできます。日経平均VI先物という商品があり、ネット証券などを通じて取引できます。先物なので日経225先物と同じように限月が決められ、そのタイミングで差金決済したり、期中で売買されたりします。オプションには対象銘柄の保険の役割がありますが、再保険のようにオプションのヘッジとしても使うこともできます。

まとめ

日経平均VI先物は、投資家心理そのものを売買することができます。その特性を生かし、日経VI先物が20以下のときに買い、マーケットにネガティブサプライズが起こって上がったときに売り抜ける、もしくは日経平均VI先物が高騰した場面で売り、20近辺まで下がった時に買い戻すという戦略が考えられます。

マーケット全体の心理状況を取引するため、ある意味わかりやすいとも言えます。また回帰性があるので、その特徴を上手く利用してディーリングをすることもできるでしょう。ただし、先物と同様にボラティリティが非常に高いので、慎重なリスク管理が必要であることは言うまでもありません。(提供:Incomepress

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