前日の欧州時間では、中国商務省から「米中両国が協議の進み具合に合わせ、追加関税を段階的に撤廃することに同意した」との発表が行われたことから、一時停滞していたリスクオンの動きが再開し、ドル円は109円台を回復しました。また、「中国税関総署と農務省は米国産家禽の輸入抑制措置撤回を検討」との報道も相次いだことから、米中通商協議へのさらなる期待がドル円、クロス円をサポートしました。NY時間に移行すると、今度は、米政府当局者が「米中協議の『第1段階』合意には段階的な関税撤回が含まれる」との見解を示したため、12月にずれ込む可能性が懸念されていた合意署名についても、早期解決になるのではないかとの期待感が強まり、ドル円は、一時109.485円まで上値を拡大しています。
NYクローズにかけて、一部メディアが『米中協議の「第1段階」合意のために関税を段階的に撤廃することについて「米政権内には強い反対論があり、まだ決定していない」』とのヘッドラインが流れると、ドル円は109.15円付近まで反落する動きになったものの、本日の東京時間では、ホワイトハウス報道官が「中国と合意することに対して非常に楽観的」との声明を出したこともあり、引き続きリスクオンの動きは継続するのではないでしょうか。
英中銀金融政策決定会合については、市場コンセンサス通り0.75%に据え置きました。ただ、ここでサプライズだったのが投票が7対2であったことです。これまでに、利下げを主張する可能性を示唆するメンバー(サンダーズ委員、ブリハ委員)がいたことで、満場一致で据え置きの可能性は低いと考えられていましたが、今回反対票を投じたのは、サンダーズ委員とハスケル理事でした。ハスケル理事の利下げ票は、まさにサプライズであり、ポンド円では140.20円付近から139.70円台までポンド売りが強まり、ポンドドルでも1.2850ドル付近から1.2810ドル付近まで下落しました。ちなみに、金融政策委員会の意見が割れたのは2018年6月以来のことです。
今後の見通し
米中通商協議が順調に進んでいる一方で、来週のイベントとしては、13日(水)、15日(金)にトランプ大統領のウクライナ疑惑に関する公聴会が予定されています。今回は、公開されるだけでなく、テレビ中継も入るのて、米国民のみならず、世界中の人々の関心が集まる可能性があります。弾劾については、2/3の賛成を必要とするため、トランプ大統領が弾劾される可能性は極めて低いものの、来年の大統領選に影響を与えかねないイベントとなるため、為替の動きにも影響があるかもしれません。
また、トルコについては、エルドアン・トルコ大統領とトランプ大統領は電話で会談し、エルドアン大統領が来週13日に訪米し、予定通りワシントンでトルコ米首脳会談を開催することを確認しているものの、エルドアン・トルコ大統領は、「難民対策でEUから十分なサポートが得られなければ、トルコは難民がEUに向かいやすくする必要がでてくる」「トランプ米大統領との会談では、露製地対空ミサイル、米製ミサイルや戦闘機について話し合う」などと発言しており、会談自体は了承しているものの、全てが友好的な話し合い前提ではないと既に布石を打っており、状況次第では、トルコリラ売りの材料に繋がる可能性があるため、この点には注意が必要になりそうです。
豪ドル円の短期戦略は1日で完結、次はポンドショートが面白そうだ
74.80円での豪ドル円ロングについては、利食い設定値である75.50円に達したため、利食い、手仕舞です。米中通商協議関連のヘッドラインに助けられた感はありますが、もともと短期戦略であった事を考えると、1日で利食いラインまで到達したことは大きかったです。次の焦点としては、やはり、ポンドに逆戻りですかね。総選挙に向けてのポンド売り要因(保守党苦戦)もあり、昨日のBOEのハト派寄りの見解を踏まえると、戻り売りに妙味がありそうです。ポンドドル、1.2840ドル付近まで引き付けての戻り売り戦略、利食いは1.2750ドル付近を想定し、損切りは1.2880ドル上抜けに設定します。
海外時間からの流れ
本日は週末であり、来週月曜は米国市場が休場となるため、本来であれば109円台のドル円は調整主体の利食い売りが先行しそうですが、米中通商協議への期待感が強まっており、特段調整のドル売りという動きは限定的であると考えた方がいいかもしれません。
今日の予定
本日は、独・9月貿易収支/独・9月経常収支、加・10月住宅着工件数、加・10月失業率/加・10月雇用者数変化、加・9月住宅建設許可、米・10月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などが予定されています。要人発言では、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ビュードライ・加中銀副総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。