今まで銀行預金にしか縁が無かった人が、初めて投資信託でも買って資産運用をはじめようかと考えたときに直面する問題が「いったい何から始めたら良いのか?」「最初はどんなものを買ったら良いのか?」であろう。素朴な疑問であるが、資産運用を始めるにあたっては重要なポイントでもある。

一方、金融機関の多くは12月のボーナス・シーズンを前に(恐らく)あの手この手で新規に投資信託を始める人を獲得しようと牙を研いでいる。その一番端的な例が「投資セミナー 弊社ストラテジストによる『これからの投資環境の見方』」などと題した無料の投資セミナーへの勧誘だ。電話が掛かってきたり、チラシが投函されたり、DMで招待状が届いたりと積極攻勢が始まるのは例年この時期恒例のイベントだ。

今年は「老後2000万円問題」などがメディアを賑わしたこともあり、各金融機関は手ぐすね引いて作戦を練っていることだろう。もし筆者が今でも現役の投信会社の社長を務めていたとしたら、間違いなくこのタイミングでの新商品のローンチを狙っていたであろうし、販社と綿密なキャンペーン等の打ち合わせを行っていたであろうことは容易に想像出来るからだ。

このような状況で、もし前述のような投資未経験者が「無料のセミナーなら、ちょっと週末行ってみようかしら」などと安易に考えていたとしたら、それは先ず思い止まったほうが良い。文字通り「鴨が葱背負って、鍋も出汁も、薪さえも抱えて出掛ける」ようなものだからだ。あなたの投資はスタート時点で既に負けている。

今回は「富裕層に学ぶ投資の心得(その1)」と題して、資産運用を始めるにあたって、最初に考えておくべき「目標」の捉え方について論じたい。

「資産運用の海」に飛び込む前に考えて欲しいこと

富裕層,資産
(画像=Joyseulay / shutterstock, ZUU online)

繰り返すが、金融機関が開催する「無料の投資セミナー」ほど恐ろしいものはない。銀行や証券会社が休日に会場を押さえて、茶菓子を用意して、職員に休日出勤させて、何の見返りも求めずにボランティア活動をする道理は常識的に考えて有り得ない。彼らが目指しているのは、セミナーでその気になったお客様に買っていただく投資信託の購入時手数料だ。仮に購入時手数料3%の商品が、そのセミナーをきっかけとして総額1億円売れたとしよう。手数料はあっという間に300万円となり、セミナー参加者100人に振舞った茶菓子代など、あっという間に元が取れてしまう。だからセールス・シナリオも練りに練ってある。販売用資料はそのために作られる。

勿論、そのセミナーでその気になって購入した投資信託が自分に適したものだったのならば、こんな素晴らしい話はない。困ったケースは本来の自分にとってのニーズ(顕在化していない場合が多い)に合致していなくて、後々に後悔するような商品だった場合だ。