前週末の海外時間では、数日前に、中国商務省は「米中両国が協議の進み具合に合わせ、追加関税を段階的に撤廃することに同意した」と発表していたにもかかわらず、トランプ大統領が「対中関税撤回でまだ何も合意していない」「中国が関税撤回を望んでいる」との見解を示したことにより、これまでのリスクオン一辺倒の動きが小休止しました。ただ、これまで同様に、政治の駆け引きの一環であるとの見方に変わりはなく、多少の動きは見せるものの、マーケットが過剰に反応することがなくなっています。同問題については、米中間の第一段階合意が完全に崩れるくらいのインパクトがない限りは、緩やかなリスクオンの地合いは継続するものと考えられます。
トランプ大統領は、来年の大統領選での再選を重視した姿勢を常に見せているため、今回の米中通商協議においても、よりよい条件を引き出すために交渉はするものの、国民がダメージを受けるであろう米中通商協議をこれ以上複雑化することはないのではないでしょうか。既に、外交面では、欧州との航空機補助金を巡る問題は解決しておらず、中東ではシリアから米軍撤退案を表明し、IS壊滅に協力してきたクルド人からも距離置かれており、決して順調に物事が進んでいるとは言えない状況下にあります。ここで、米中通商協議が不調となれば、株価下落は免れず、自分自身を苦しめるだけになるため、自身の中では妥協点を見出しているのではないでしょうか。
ただ、中国側の見解と米国側の見解がこれほどまで食い違うのは稀であり、一部メディアの誤った情報にマーケットが踊らされている可能性があり、トランプ大統領も自身ととライトハイザー通商代表部(USTR)代表の発言のみを採用するように、記者団に伝えたとも言われています。ドル円は、110円まで淡々と突き進むイメージでしたが、ここにきて目先の米中通商合意への不透明感が強まったこともあり、109円台での小動きが中心となりそうです。
今後の見通し
英国では、12月12日をターゲットにした、本格的な選挙戦に突入しています。保守党のジョンソン英首相は、今回の総選挙で勝利した場合には、1月末までにEUを離脱すると宣言しています。また、これまでは「合意なき離脱」が足枷になっていましたが、離脱案はすでにEUとの交渉を終えており、議会での承認を待つばかりの状態であるため、「合意なき離脱」という問題はもはや関係ないことだとも指摘し、アピールを強めています。また、野党第一党である労働党のコービン党首は、政権に就いたならば6ヵ月以内にEU離脱問題を片づけると公言しています。EU離脱案も現在の案よりも良好なものに改善し、2回目の国民投票を来年夏前の段階で実施するとしています。国民投票では、妥当な条件のもとでEUを離脱するか、あるいは、EUに残留するかの選択を用意することで、完全に方向性の違う公約を掲げており、保守党の勝利ありきでの総選挙であったため、労働党が躍進することになれば、マーケットは大荒れになると思われます。
10日に予定されていたスペイン総選挙の影響で、動きづらかったユーロ関連通貨ですが、本日日本時間早朝に開票がほぼ終了し、サンチェス首相率いる中道左派の社会労働党が約120議席を獲得し、第1党となるものの、改選前議席数の123から議席を減らす見通しであり、4月の前回総選挙に続き、過半数に達しないことになりそうです。ただ、この状況はある程度予想されていたものであるため、ユーロの動きは、月曜オープニングから落ち着いています。
全体的にボラティリティが低下、ポンドドルのショートメイク水準を切り下げ
1.2840ドル付近までのポンドドルの戻り売り戦略ですが、ポンドのボラティリティが急速に低下したため、戻り自体も鈍くなっています。全体的なリミットを縮めることで、コンパクトなトレードに切り替えたいと思います。基本戦略であるポンドドルショートは変わらず、1.2840→1.2820ドルに水準を切り下げ、利食いは1.2750ドル付近で変わらず、損切りを1.2850ドルに変更します。
海外時間からの流れ
リスクオン一辺倒の動きから、トランプ大統領の発言により、米中通商協議関連の話題がドル円、クロス円の上値を重くしています。本日は、米国がベテランズデーの祝日とあってNY債券市場は休場であるため、余程の事がない限りは米中通商協議関連のヘッドラインが出てこないと思われますが、ヘッドラインが出てくるのであれば、ネガティブサプライズの可能性が高そうです。
今日の予定
本日は、英・9月鉱工業生産/英・9月貿易収支/英・統計局9月度GDP月次推計発表/英・第3四半期GDP(改定値)などの経済指標が予定されています。要人発言では、ローゼングレン・ボストン連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。