「証券外務員というのは職人の世界。オンラインでは完全に代替しきれない部分は絶対にあります。こうした資産を絶やしてしまうのはもったいないと考えたのです」。

こう語るのはOKプレミア証券、取締役の佐藤歩氏だ。

OKプレミア証券の前身は、Q&Aサイト「OKWAVE」を運営する株式会社オウケイウェイヴが2018年に完全子会社化したプレミア証券株式会社だ。今年4月に社名を現在のOKプレミア証券に変更した社員40人ほどの証券会社である。同社のビジネスモデルなどについて佐藤氏に話を聞いた。

退職後も顧客が残れば手数料の一部が入り続ける

ZUU online編集部
(画像=ZUU online編集部)

三重県出身の佐藤氏は名古屋の地場証券でキャリアをスタートさせ、月間1億円の手数料を挙げるトップセールスとして活躍した。そして、1995年に松井証券に入社。オンライン証券としては初めて信用取引を可能にするなど腕をふるった。さらに、2012年にはマネックス証券へと籍を移し、オンライン証券取引の流れの最前線に立ってきた。

しかし、こうした佐藤氏のキャリアとは逆にOKプレミア証券は外務員を中心としたモデルだという。実際に同社の社員40人のうち30人が外務員だ。こうしたモデルを選択した理由について佐藤氏は以下のように語る。

「確かにオンライン証券の普及で株式取引の間口は大きく広がりました。しかし、証券会社から見ると、手数料の安さだけでは差別化がしづらくなったという見方もできます。今は多くの証券会社が外務員を削減していく流れにありますが、逆に外務員中心にすることで、差別化ができるのではないかと考えました」。

日本証券業協会によると証券外務員の数は、ピークの1991年で約10万人。90年代後半に6万人程度まで落ち込み、現在は8万人ほどだ。佐藤氏によれば、ピーク時は5000〜6000人ほどいたと言われる歩合制外務員の数は現在2000人程度になっているという。

「歩合で仕事ができるような優秀な外務員を獲得するにはインセンティブが必要です。一般的な証券会社では手数料の4割が外務員の取り分になりますが、弊社は最大5割にしています。また、私が入社してから、外務員が退職した後もインセンティブが持続するような制度を導入しました。引き継いでいったお客さんから得た手数料の一部が退職した外務員に支払われる形にしたのです」。

大手やネット証券がとらえきれないニーズを狙う

ベテラン外務員を揃えたOKプレミア証券が狙うのは「投資に関心が高いもののネットリテラシーが低い高齢者」だ。

「大手もネット証券もこうしたお客さんは、それほど注力していないように思います。老後2000万円問題が取りざたされる中で、金融庁も若い世代の資産形成に注力する流れになりつつある。そうした中で、他の証券会社が拾いきれないニーズを弊社が拾っていく。スマホでワンコイン投資といったサービスもありますが、弊社はしっかりと相談をしながら投資をしていただいて、対価を得るという形を目指します」(佐藤氏)。

オンライン取引全盛の時代に昔ながらの外務員中心のビジネスモデルが成立するのだろうか。そんな疑問に佐藤氏は、こう反論する。

「松井証券でネット証券に注力していた頃も『そんなもの成功するわけない』と散々叩かれました。『ただの御用聞きじゃないか』『信用取引なんて顧客一人じゃできるわけない』『立替金で会社が潰れる』なんてことも言われましたよ。上手くいくとは誰も言わなかったですから」。

今回のビジネスモデルについても、周囲の多くは同じように感じているだろう。オンライン証券取引を積極的に推し進めてきた佐藤氏のキャリアを考えれば、ますますOKプレミア証券の挑戦は奇異にうつる。

そのことは佐藤氏も自覚しているが、一方で確信もあるという。

「私はオンライン証券業界で長い間仕事をしてきましたが、その中でやはり『オンラインでは拾いきれないニーズがある』と確信しました。自分で判断して投資を楽しみたいという方はネット証券を使えば良いと思います。しかし、そういう人ばかりではない」。

佐藤氏はネット証券におけるキャリアの終盤には、「もう少し対価をもらってもいいんじゃないか」と感じていたという。オンラインで見ることができる膨大なレポートやデータの量を鑑みて、「手数料無料」に違和感を覚えたというのだ。

「手数料を増やすために無理な取引を進めるのは論外ですが、きちんと顧客の話を聞いて、商品を提案して顧客にも利益が出たのであれば、対価をもらうのは自然なことです。数年やって成功したら他の会社も真似すればいいと思っています。実際はあと2〜3年はどこも真似しないでしょうが(笑)」。

最年長は70歳というベテランの精鋭外務員を中心としたモデルは、オンライン証券全盛の時代をどのように生きぬいていくのか。OKプレミア証券の今後に注目したい。