前日については、NY市場がベテランズデーで米債券市場が休場となったため、市場参加者が少なく、値動きも限定的になりました。そんな中で、英国選挙の台風の目であったブレグジット党のファラージ党首が「ブレグジット党は317選挙区でジョンソン首相率いる与党保守党とは争わない」と表明しました。同じEU離脱を公約に掲げる党での票の分裂が懸念されていましたが、これで、12月12日の総選挙では、保守党が勝利し、何度も延長を重ねた英国のEU離脱問題に終止符が打たれるのではないかとの思惑が強まり、ポンド買いが強まりました。ポンドドルでは、1.2825ドル付近から1.2900ドル手前まで、ポンド円では139.75円付近から140.50円手前までポンド買いが強まりました。
また、米通商拡大法232条による自動車税の発動期限が今月の13日に迫っていましたが、一部報道では「トランプ米大統領はEU自動車関税の判断を半年先送りする公算が大きい」と報じています。ある程度延期になるのではないかとの思惑はありましたが、実際に延期となれば、目先の問題が一つ取り除かれることになるため、これまでのリスクオンの動きをサポートする材料になりそうです。また、ユーロの買い戻しにも寄与するのではないでしょうか。
地政学的リスクでは、香港警察がデモ隊に向けて実弾を発砲したことで、武力鎮圧への警戒感が高まっており、米国議会も「香港人権・民主法案」を可決していることで、米中通商協議進展にストップがかかる可能性があります。トランプ大統領が、同問題に対して、「中国が香港でのデモを鎮圧するために何か悪いことをすれば、米国との貿易協議に影響が出るだろう」と警鐘を鳴らしていたこともあり、トランプ大統領からネガティブな内容の見解が示されれば、円買い材料として意識されそうです。
今後の見通し
英・第3四半期GDPが前年比+1.0になったことで、何とかマイナス成長は回避しましたが、伸び率は2010年第1四半期以降で最低水準になっており、ブレグジット問題が落ち着きを取り戻しつつある中で、英国単体での経済悪化が確認されています。要因としては、米中貿易戦争による世界経済の低迷や、英国のEU離脱を巡る懸念を背景として、設備投資や製造業が打撃を受けたことです。ただ、一部では二期連続のマイナスとなるリセッションの可能性も指摘されていたことから、決してポジティブな内容ではありませんが、悪い状況であっても想定した以上に悪くはないというのが、現在の英国経済の現状だと思われます。ただ、上述したようにブレグジット党のファラージ党首が保守党に肩入れしたことへの影響は小さくなく、今後の英国経済の立て直しに大いに影響してくるものと思われます。
ECBでは、ドラギ総裁からラガルド総裁へ11/1からシフトしていますが、英フィナンシャル・タイムズ紙は「ECBの幹部らは新総裁の就任を機に、金融政策の決定方法の見直しを論じており、その中には、政策金利の決定にあたって採決を行う案も含まれている。このため、ラガルド氏は政策決定の刷新を求める声に近く向き合うことになる」と報道しています。この報道を100%信用するのであれば、ラガルド総裁が提唱していた追加緩和へのハードルは高いものになってしまうため、ECBがこれ以上追加緩和を推し進めるのは困難かもしれません。ただ、もともと必要なかったとも言われている緩和策であることから、ユーロ買いに繋がってくる可能性があります。
ブレグジット党のファラージ党首がポンドを押し上げそうだ
ブレグジット党のファラージ党首が保守党のサポートに回ったことが影響し、ポンドは一気に上値を拡大する動きを見せたことから、当方のポンドドル1.2820ドルショートは、一気に1.2850ドルにて損切り、手仕舞です。トレードとしては最低ですが、これでポンド基調が強まりそうなことは、唯一のプラス材料です。一転ポンドロングの戦略に切り替え、1.2820ドル付近での押し目買い戦略、利食いは1.2950ドル付近を意識し、1.2770ドル下抜けで損切りとします。
海外時間からの流れ
米国がベテランズデーの祝日とあってNY債券市場は休場でしたが、株式市場はオープンしており、その中でも、2度の墜落事故を起こした737Maxの納機を12月に再開すると発表したボーイングが4.55%高となり、一定の株高を牽引しました。各国の関連株も、本日は買われやすい地合いになりそうなため、株式市場については、総じて堅調に推移するのではないでしょうか。
今日の予定
本日は、トルコ・9月経常収支、英・10月失業率/英・10月失業保険申請件数、独・11月ZEW景況感調査などの経済指標が予定されています。要人発言では、クーレ・ECB専務理事、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。