前日の海外時間では、ニューヨーク・エコノミッククラブにて行われたトランプ大統領の講演で、米中通商協議に関して新しい情報が出てくるかどうかが注目されていましたが、「第1段階の合意は署名が間近だ」と強調した一方、「中国との包括的貿易合意の第1段階がまとまらない場合は、対中関税を大幅に引き上げる」と述べ、これまでと何ら変わらない内容であったことから、マーケットの値動きは限定的になりました。ただ、既にコンセンサスとして織り込まれていた「欧州連合自動車関税先送り」についての言及がなかったこともあり、マーケットはややリスク回避の動きに傾きました。

英国総選挙絡みでは、ブレグジット党が「ブレグジット党は317選挙区でジョンソン首相率いる与党保守党とは争わない」と表明した影響もあり、調査会社ユーガブの世論調査で、英与党・保守党の支持率が42%となり、最大野党・労働党の28%に対して14ポイントのリードを広げたことが意識され、ポンド買いが強まっています。一部報道では、2017年に労働党議員が当選した選挙区のうち、今回の選挙で保守党が勝てそうな選挙区でもブレグジット党議員の立候補を控えるよう、保守党から依頼があったとされています。この部分に関しては、ブレグジット党も慎重になっていますが、保守党優勢の状況に変わりはなさそうです。

本日は、パウエルFRB議長が両院合同経済委員会で議会証言を行いますが、前回のFOMC声明から短期間で大幅に意見を変えることはないと考えられるため、注目度は低そうです。遠回しの表現で、予防的利下げの休止を示唆する言い回しに終始するのではないでしょうか。マーケットが動意付く可能性があるとすれば、トランプ大統領の弾劾審理でしょうか。本日は、ジョージ・ケント米国務次官補代理とウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使の証言が予定されていますが、状況によってはドル売りが強まる可能性がありそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日発表されたNZ中銀政策金利発表では、25bpの利下げがコンセンサスになっていましたが、結果は1.00%に据え置きとなりました。この結果を受け、NZDが急騰し、NZドル円では69.00円付近から69.90円付近まで、NZDUSDでは、0.6330ドル付近から0.6415ドル付近まで急速に上値を拡大しました。その後の声明では、「必要なら一段の緩和を実施する」との見解を示していましたが、マーケットが想定するよりも中銀の見解はタカ派であることが示されたため、一旦は利食い売りが強まりそうですが、その後は再び買い戻しの動きが強まりそうです。また、オアNZ準備銀(RBNZ)総裁が、「現時点で行動する緊急性はない」と発言していることも、NZドル高をサポートしそうです。

また、トランプ大統領とエルドアン大統領の首脳会談を控えていますが、米国議会がNBAで活躍するトルコ出身のカンター選手が、米国議会で証言を行うことが急遽決まりました。同選手は、2016年にクーデター未遂を起こしたイスラム教聖職者のフェサラー・ガレン牧師に資金提供をしている疑惑を持たれており、エルドアン大統領を公の場で痛烈に批判するなど、一時はトルコの検察当局が国際逮捕令状を発行することを検討していたことがあります。議会証言にて、米国、トルコの首脳会談に不協和音を呼び込むような発言があれば、トルコリラの上値が徐々に重くなってくることが考えられます。

ブレグジット党の保守党サポートが早速世論調査に影響

ポンドドル、1.2820ドルの狙い通りでのロングメイク成功です。ブレグジット党のファラージ党首が保守党のサポートに回ったことが、早速世論調査にも反映されていることから、引き続きポンド高になるのではないでしょうか。利食いは1.2950ドル付近を意識し、1.2770ドル下抜けで損切りとします。

海外時間からの流れ

トランプ大統領の講演では、目新しい材料は提示されていないものの、「中国との貿易合意は近く実現する可能性」を示唆しており、政治的駆け引きは依然として活発に行われているものの、マーケットでは、米中通商協議はリスクイベントとして除外されつつあるのではないでしょうか。12月までは、米中双方から駆け引き込みの発言がでてくるものと思われますが、為替の値動きは限定的なものになりそうです。

今日の予定

本日は、独・10月消費者物価指数(確報値)、英・10月消費者物価指数/英・10月小売物価指数、ユーロ圏・9月鉱工業生産、米・10月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、パウエル・FRB議長の議会証言、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。