前日の海外時間では、パウエルFRB議長が両院合同経済委員会で議会証言を行いましたが、内容的には、経済指標がFRBの慎重な景気見通しと整合的である限りにおいて、「現行の金融政策スタンスは適切であり続けるだろう」と発言し、これまでと同じ見解を繰り返すに留まりました。また、議会証言前に事前に用意された原稿でも、同様の評価であったため、前回のFOMC後の声明を踏襲したものであり、目新しい材料がなかったことから、マーケットへの影響は限定的になりました。また、これで一旦「予防的利下げ」は打ち止めであるとの認識がマーケットにも浸透したものと思われます。
同じく注目されていたトランプ大統領の弾劾審理では、ジョージ・ケント米国務次官補代理とウィリアム・テーラー駐ウクライナ代理大使の証言が行われましたが、これまでの非公開証言の内容をほぼ踏襲する形となったため、あまり影響はありませんでした。ただ、テーラー駐ウクライナ代理大使の証言で、トランプ大統領とソンドランド駐EU大使による7月26日の電話会議に関し、テイラー氏は「トランプ大統領が気にしているのはウクライナではなく、民主党のバイデン氏に関する調査ではないか」という質問に対し、「その通りです」と答えたことで、今後の弾劾審理は、より深い部分まで掘り下げていく可能性があります。
トランプ大統領とエルドアン大統領の首脳会談においては、トランプ大統領が会談後の記者会見で「エルドアン大統領と素晴らしく建設的な会談ができた」「トルコとの経済的な関係はとてつもなく潜在的なものがある」などと述べ、エルドアン大統領は「トランプ大統領にパトリオットミサイルを適正な価格で購入することはできると伝えた」などと発言し、総じて前向きな会談であったことをアピールし、マーケットが懸念していた米国のトルコへの制裁関連の話題もでてこなかったことから、トルコリラはリスク回避の動きが小休止しています。
今後の見通し
米中通商協議については、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「米中通商交渉が農産物購入を巡り暗礁に乗り上げた」との報道を行い、被せるように、中国高官は「状況が悪化すれば、中国はいつでも米国の農産品の購入を停止できる」との発言を行いました。トランプ大統領も、12日の講演で「中国との包括的貿易合意の第1段階がまとまらない場合は、対中関税を大幅に引き上げる」と述べており、政治的アピールの一環だと考えられているものの、一貫性のない押し問答がこれ以上続くようだと、リスクオン地合いで形成されたロングポジションの解消が急速に進む可能性があるため、この点には注意が必要でしょうか。また、トランプ大統領は、「通商拡大法232条」に基づき、国家安全保証状の観点から自動車と自動車・部品に最大25%の追加関税を課すかどうかに関して「私は間もなく決断を下す」と発言していることもあり、関連するヘッドラインでマーケットが動意付く可能性がありそうです。
ユーロについては、本日発表される独・第3四半期GDPが注目されそうです。事前予想では、前期比-0.1%予想であり、市場コンセンサス通りの内容になると、2四半期連続のマイナス成長でリセッションに陥ることになります。ただ、これまで報道でリセッションに陥った場合には、財政出動が発動されるとも言われているため、ユーロ売り一辺倒の動きにはならないことも想定されるため、この辺りは見極めが重要になりそうです。
ポンドについては、次の世論調査の結果待ち
ポンドドル、1.2820ドルのロングポジションは、じり高になっているものの、利食い水準までは少し時間を要するかもしれません。次の世論調査のタイミングがポンド買いをサポートしそうなため、一旦は様子見姿勢が強まりそうです。利食いは1.2950ドル付近を意識し、1.2770ドル下抜けで損切りとします。
海外時間からの流れ
本日の東京時間に発表された、豪・雇用統計については、失業率が市場予想5.2%から5.3%に悪化、雇用者数変化も1.5万人増予想が1.9万人減、正規雇用者数変化も前回の2.62万人増から1.03万人減となり総じて悪化する内容になりました。また、非常勤雇用者変化は前回の1.14万人減から0.87万人減になっていることを踏まえると、RBAの利下げ方針がより加速する可能性があるため、豪ドル売りが強まるのではないでしょうか。
今日の予定
本日は、独・第3四半期GDP、英・10月小売売上高指数、ユーロ圏・第3四半期GDP、米・10月生産者物価指数、米・新規失業保険申請件数、加・9月新築住宅価格指数、メキシコ中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言では、クラリダ・FRB副議長、ノット・オランダ中銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、メケラー・スイス中銀専務理事、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁の講演がが予定されています。また、パウエル・FRB議長議会証言も行われます。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。