(本記事は、石原 結實氏監修、石原 新菜氏の著書『「空腹の時間」が健康を決める』新星出版社の中から一部を抜粋・編集しています)

空腹,食事,朝食
(画像=PIXTA)

インフルエンザと毛細血管

春は花粉症、真夏には熱中症、冬になればインフルエンザや風邪。

いまの日本は年がら年中、体調不良や病気の心配をしてばっかりです。

毎年インフルエンザにかかる方も珍しくありません。「苦労してワクチンの予約をして、しっかり二回接種したのにインフルエンザになったんですよ」と嘆く方のなんと多いことか。

また、年に何度も風邪をひくという方もいらっしゃいます。そういう方は、たいてい高い熱が出ないまま、いつまでも症状が長引く傾向があります。

発熱は体温を上げて免疫を活性化させ、ウイルスや病原菌と戦うための反応です。

高熱が出る前に体が震えることはありませんか? 免疫を活性化させるためには熱が必要なので、体は筋肉を震わせて熱を発生させているのです。

発熱、高熱とつづいて、その後にたっぷり汗が出たら、ウイルスや病原菌を撃退したサイン。敵をやっつけたので体温を平熱に戻すために汗を出すのです。

毛細血管で免疫力が決まる

前節で説明したように、免疫力は小腸の健康度によって決まります。

小腸には無数の毛細血管が存在していますから、小腸の健康度とは小腸の毛細血管の健康度といいかえてもよいでしょう。

小腸の毛細血管だけではありません。全身の毛細血管も免疫力に大きくかかわっています。ウイルスや病原菌と戦う白血球やリンパ球を、全身に届けることができるのは、動脈でも静脈でもなく毛細血管だけだからです。

毎年インフルエンザにかかる、しょっちゅう風邪をひくという方は、免疫力が弱っている状態。つまり、免疫力を支える毛細血管が、体のあちこちで弱っていると推測できます。

いまこそ「空腹の時間」を

「ほとんどの日本人は食べすぎです」と申し上げると、決まってこんな反論が聞こえてきます。

「でも適正体重なんですよ」
「ここ数年、ベスト体重をキープしていますが」

食べすぎによって太るのは体だけではありません。
血液も太るのです。

食べすぎは体の内部、血液の状態を変えてしまうことが問題なのです。そして、「一日三食は食べすぎ」だと認識しておきましょう。

食べすぎとは取りいれた栄養素が多すぎて、消費が追いつかない状態のこと。

消費できなかった脂質や糖質は血液中にあふれ、いわゆる「ドロドロ血液」をつくることになります。

脂質や糖質で太った血液は、体のなかをすいすいと循環できませんから、細胞に栄養・酸素・水分を届け、老廃物や二酸化炭素を回収するという仕事が滞ってしまいます。食べすぎがつづくと、細胞の働きが少しずつ、確実に低下していくのです。

最近、よく風邪をひきませんか?
疲れやすく、なかなか疲れがとれないことはありませんか?
イライラや気持ちがふさぐなど、精神的に不安定になっていませんか?

病気というほどではないけれど、元気ともいえない状態。
一見、関連のないこれらの不調ですが、食べすぎで血液が汚れ、血流が悪くなって細胞の力が落ちたことが原因かもしれません。

問題は、こうした状態に陥ったときに、多くの人がとる対策です。
「ここんところ調子が悪いなあ。そうだ! 元気を出すためにいっぱい食べよう!」

そろそろ「食べれば元気になる」という悪しき食の幻想を捨てていただきたいと切に願います。

食べるという行為は生命維持に不可欠ですが、固形物を咀嚼し、唾液と混ぜあわせ、誤嚥のないように胃腸に送りとどけ、細胞が活用できる形に消化して吸収する。と、いくつものプロセスが必要。

なかでも消化吸収の要となる胃腸にとっては大仕事なのです。
弱った体、弱った細胞には負担でしかありません。

食べれば食べるほど細胞が弱る

「風邪で寝こんだあとは肉で体力をチャージ」「夏バテのときはウナギで精をつける」など、ちょっと体調が悪いと「なにを食べよう」と考えがちですが、まったくの逆。

体の調子が上がると期待して、せっかく体のなかに取りこんだ栄養素も、使いきれなかったら血液を汚し、血流を悪くして細胞を弱らせるだけ。

調子が悪いときは、なにも食べない時間、つまり空腹の時間を長くとること。
これが細胞レベルで元気になる特効薬です。

最近、不要な物を捨ててくらしを整えるという思想が広まっています。

すっきりシンプルな住まいで、ていねいなくらしを送り、精神的な充足を得る。そういう方が増えているようです。
「食」もシンプルでいいのです。
「なにも食べない空腹の時間」をなるべく長くする。

たったこれだけのこと、ただ「空腹の時間」をつくるだけで、細胞が復活し血流が蘇(よみがえ)り、活力があふれ若返るのです。

空腹の時間に体の大そうじがスタート

寝ながら起きる。吸いながら吐く。まるでことば遊びのようですが、どんなにがんばっても私たちは正反対の動作を同時にすることはできません。

例えば、栄養の摂取でも同じことがいえます。

体は栄養を「入れる」作業が始まるとそれにかかりきりになり、老廃物や毒素を「出す」作業はストップしてしまいます。

一日に三食をしっかり食べていると、体が本当に空腹になる時間は24時間のうちごくわずかしかありません。

つまり、体が排泄に専念できる時間が足りないということです。

入れるばかりで出すことができなければ、老廃物や毒素は体のなかにたまる一方なのです。

便秘は食べずに治す

人間の体は「吸収は排泄を阻害する」ようにできているので、消化吸収にとりかかっているあいだは体のなかの老廃物や毒素を捨てることができません。

「空腹の時間」がはっきり明確にないと、排泄は常に不十分であるということになります。

あなたは便秘になったことはありますか? 便秘になると食欲が落ちますよね。
それは体が排泄に集中しようとするから。排泄のじゃまとなる吸収を拒否しているのです。

ところが、多くの人は便秘のときにも「食物繊維をとろう」「オリーブオイルがいいらしい」と、「なにを入れるか=食べるか」ばかり考えてしまうようです。

便秘のときは体が排泄に専念できるよう、むりに食べてはいけません。
まずは食事の量を減らすこと。そして体を温めて腸の働きを活発にするショウガ紅茶や蒸しショウガをとるとよいでしょう。

便秘の話が出たついでに、「絶対にやってはいけない便秘対策」にもふれておきましょう。それは「冷たい水をたっぷり飲んで便通をつける」方法。
確かに最初は便通がありますが、たいていはただの下痢。単に「おなかをこわしている」だけで、健康的な便通ではありません。
冷水という刺激がなくては便意が起こらない体になり、それもしだいに慣れていくためよけいにひどい便秘になってしまいます。

食べる量が減ると、出す量が増える

「食べる量が減ったから、出す分も減るのかと思ったら逆でした」

朝だけ断食をスタートすると、便通がよくなることにびっくりなさる方が多くいらっしゃいます。適正な食事量であれば体はきちんと消化吸収の処理ができ、排泄までしっかり面倒をみることができますから便通がよくなるのです。

興味深いことに、太った方は朝だけ断食で体重がスルスル落ちていくのに対し、痩せ気味で虚弱体質の方は少しずつふっくらしてきます。

虚弱体質の方にとって「三食しっかり」は負担が大きく、必要な栄養素の摂取もままならなかったのです。
朝だけ断食で、やっと処理できる食事量になったおかげで体重が増えてきて、体力も少しずつついてきたのでした。

空腹で体が すっきり
空腹 ➡ 排泄アップ ➡ 適正体重・血液サラサラ
満腹 ➡ 排泄ダウン ➡ 体重増加・血液ドロドロ
「空腹の時間」が健康を決める
石原 結實
イシハラクリニック院長。ヒポクラティック・サナトリウム施設長。ジョージア共和国科学アカデミー長寿医学会名誉会員。1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業して血液内科を専攻。同大学院博士課程で医学博士の学位を取得。スイスの自然療法病院、B・ベンナークリニックやモスクワの断食療法病院でガンをはじめとする数々の病気、自然療法を学び、コーカサス地方の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。テレビ、ラジオなどの出演や全国講演でも活躍中。クリニック院長のほか、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。ベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)を含め著書は300冊以上にのぼり、米国、ロシア、ドイツ、フランス、中国、韓国、台湾、タイなどで100冊以上が翻訳されている
石原 新菜
イシハラクリニック副院長。ヒポクラティック・サナトリウム副施設長。健康ソムリエ講師。1980年長崎市生まれ。幼少期をスイスで過ごす。医学生の頃から父・石原結實とメキシコのゲルソン病院、ミュンヘン市民病院の自然療法科、英国のブリストル・キャンサー・ヘルプセンターなどを視察し、自然医学の基礎を養う。クリニックでの診療のかたわら、メディア出演、執筆、講演活動なども積極的におこない、「腹巻」や「生姜」などによる美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。二児の母で、母として女性としての視点からのアドバイスにも定評がある。著書は中国、香港、韓国、台湾、ベトナムなどで翻訳されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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