前日の海外市場では、独・第3四半期GDPの結果が注目されており、事前予想では、前期比-0.1%予想であり、市場コンセンサス通りの内容になると、2四半期連続のマイナス成長でリセッションに陥る状況でしたが、結果は+0.1%になったことで、リセッションは回避することになりました。発表直後は、ユーロ買いが強まる場面がありましたが、アルトマイヤー経済相が「景気後退には入らなかったが、成長率は依然低すぎる」と発言したことで、ユーロ買いの動きは限定的なものになっています。
米中通商協議関連では、前日に「中国による米農産品の輸入拡大で協議が難航している」と報じられ、先行き不透明感が強まっていましたが、中国商務省報道官が、追加関税の撤廃について「合意の重要な条件であり、両国で議論を詰めているところだ」と説明しており、状況を見守る展開になりました。その中で、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が「米中は第1段階の合意取りまとめで難航している」と報じたことが嫌気され、一時ドル円は108.243円まで下値を拡大しました。
ただ、本日の東京時間にクドロー米国家経済会議(NEC)委員長が、「中国との貿易協議は合意に近づいている」との見解を示したことを受け、ドルの買い戻しが強まっており、ドル円は108.60円台まで回復しています。13日にはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「米中通商交渉が農産物購入を巡り暗礁に乗り上げた」と報道し、14日は上述したようにフィナンシャル・タイムズ(FT)が難航を報じたものの、同委員長の発言がリスク回避の動きに歯止めをかけています。あくまで政治的駆け引きの一環だとは思われますが、本日は米中次官級通商協議が開催され、明日は電話による米中閣僚級通商協議が開催されるとの情報もあり、積極的なリスクオンイベントではなくなってきているものの、リスクオフのイベントには至らない可能性の方が高そうです。
今後の見通し
今後の焦点としては、引き続き米中通商協議関連のヘッドラインで一喜一憂するマーケットになりそうですが、トランプ大統領のウクライナゲートに関する弾劾調査も意識されてきそうです。本日は、メディア公開した前回とは違い、非公開証言が予定されており、トピックスの深掘りがあるのではないかと考えらえています。週末ということもあり、証言内容が公開されるとすれば、土日にずれ込むため、月曜オープニングのギャップに繋がる恐れがあります。結果的には弾劾される可能性は非常に低いですが、目先のマーケットの値動きには直結するイベントであるため、関連ヘッドラインには気を付けたいところです。
英国の経済指標では、英・10月小売売上高指数(前月比/前年比)が事前予想+0.2%/+3.7%に対して、結果は-0.1%/+3.1%となり、想定外に低調な内容になりました。ブレグジット問題で英国経済が混沌としている時でも、個人消費だけは堅調な伸びを示していましたが、12月12日に総選挙を控えているなかで、保守党にネガティブなイメージが付いてしまうかもしれません。英国立統計局の報道官は「販売促進のイベントやクリスマス商品の前倒し投入などによって、百貨店の売り上げは10月に持ち直したものの、長期的に見るとかなり落ち込んだ状態」との見解を示しており、12月12日の総選挙以降は、英国経済の弱さがポンド売りを加速させるかもしれません。
トランプ大統領が自ら、米中通商協議に関しての報道に、実際の内容とメディアが報道している内容には乖離があるため、各関係者のみの発言だけを信用するようにと警鐘を鳴らしましたが、本日のクドロー米国家経済会議(NEC)委員長の見解を見る限りでは、確かにメディアとの見解の乖離が目立ちます。今後も、このような状況が続くようであれば、メディア報道のヘッドラインへの反応は、次第に限定的になってくるかもしれません。
ポンドについては、引き続き、次の世論調査の結果待ち
ポンドドル、1.2820ドルのロングポジションは、じり高になっているものの、利食い水準までは少し時間を要しそうです。次の世論調査のタイミングがポンド買いをサポートしそうなため、一旦は様子見姿勢が強まりそうです。利食いは1.2950ドル付近を意識し、1.2770ドル下抜けで損切りとします。
海外時間からの流れ
メキシコ中銀が政策金利発表を行い、事前予想通り0.25%の利下げを行い政策金利を7.50%にしました。ただ、これは大方の予想通りの内容であったこともあり、マーケットへの影響は限定的となりました。また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)案が今後数日以内に米議会に提出され、協定案がまとまるのではないかと報道されていることもあり、メキシコペソについては、利下げを行ったものの、堅調に推移しています。
今日の予定
本日は、トルコ・8月失業率、米・10月小売売上高、米・11月NY連銀製造業景気指数、米・10月鉱工業生産などの経済指標が予定されています。要人発言では、メルシュ・ECB専務理事、 コスタ・ポルトガル中銀総裁の講演がが予定されています。また、レーン・加中銀副総裁のパネルディスカッションが行われる予定です。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。