前日の海外市場では、米中通商協議の進展期待が高まり、一時109.069円まで上値を拡大したドル円ですが、CNBC記者が中国政府筋の話として「米中貿易協議巡り中国側のムードは悲観的だ」とのツイートがリスクオフの動きを加速させ、一時109.069円まで上昇していたドル円が108.515円の前日安値まで急落する動きとなりました。米10年債利回りも、一時1.79%台まで低下することで、リスクオンの動きが一蹴され、上値の重い地合いになっています。
本来であれば、ホワイトハウスで行われたトランプ大統領、ムニューシン米財務長官、そしてパウエルFRB議長の会談内容が注目材料となるはずでしたが、上述したCNBC記者のツイートがリスクオフを演出したこともあり、値動きは限定的なものになりました。会談内容としては、トランプ大統領がツイッターで「金利政策、マイナス金利、低インフレ、ドル高とその製造業への影響、中国やEUとの貿易について話し合った」と公表しています。FRBからの声明では、「パウエルFRB議長は金融政策の見通しについては言及せず、政策の道筋はデータ次第である点を強調した」と若干認識の違いはあるものの、目新しい材料がなかったことで、マーケットを動意づかせる材料にはなっていません。
事の発端は、16日に米中閣僚級通商協議が行われ、中国商務省からは「建設的な協議だった」と表明しているものの、依然として米国側からの見解がないことで、米国側からの見解待ちという段階で、楽観視されていた中国側からネガティブな報道がでてきたことが、リスクオフを強めたのだと考えられます。ただ、唯一ポジティブな点を挙げるとすれば、ロス米商務長官が、中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米製品の禁輸措置に関して、一部の米企業に取引継続を認める適用猶予期間をさらに90日間延長することを表明しました。華為技術(ファーウェイ)絡みの報道で、一段とリスクオフになる展開は回避できたと考えられます。
今後の見通し
ブレグジット党が保守党を選挙支援することで、保守党が一気に選挙戦を有利に進めるのではないかと考えられている英国選挙ですが、ジョンソン英首相が保守党から立候補する候補者は全員、同氏のEU離脱案を支持しているとの内容の表明したことから、12月12日の総選挙で、単独過半数、もしくは過半数を獲得後に波乱はないとの思惑がポンド買いをサポートし、ポンド円は141.567円まで上昇し、5月21日以来、約半年振りの高値を付けています。ただ、ドル円の下落に連れるように、クロス円も上値が重くなっていることから、もう一段高を試すには、ドル円の反発が必要になってきそうです。
本日公表されたRBA(豪中銀)議事要旨では、内容としては、「11月会合で利下げも検討」「必要ならさらなる緩和を行う用意がある」とさらなる追加緩和を示唆したことで、豪ドル売りが強まりました。豪ドルについては、長期化する香港抗議デモに対して、中国側が武力鎮圧に乗り出した場合は、香港に対する経済分野での優遇措置を停止する法律を制定するように勧告したと米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が、「2019年年次報告書」にて発表しています。米中通商協議の進展期待が豪ドルを下げ止めていたこともあるため、一旦リスクオフになった場合、最も下落速度を速めるのは豪ドルになるかもしれません。
保守党有利である限り、ポンドについてはロング戦略継続
1.2820ドルのポンドドルロング、狙い通り1.2950ドルにて利食い、手仕舞です。ポンドに関しては、1.30ドルを狙う動きになりそうですが、ここにきて想定外のリスクオフ要因がでてきたこともあり、積極的なロングメイクは控えたいところですが、ポンドについては総選挙絡みでポンドの根強い買い意欲があると考えられるため、引き続き押し目買い戦略にてロング戦略を継続したいと思います。1.2920ドル付近での押し目買い戦略、利食いは1.3000ドルを通過点とする1.3070ドル付近、損切りについては、1.2870ドル下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
引き続き、米中通商協議関連のヘッドラインに一喜一憂するマーケットになっています。ただ、今回のリスクオフも中国政府筋の話となっていますが、情報はCNBC記者からであることを考えると、トランプ大統領が、再三関係者以外の声明に惑わされないようにと警鐘を鳴らしているように、土壇場で状況が変わる可能性もあります。一旦リスクオフの動きになりましたが、状況としては、16日の米中閣僚級通商協議を経ての米国側の見解待ちになりそうです。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・9月経常収支、米・10月住宅着工件数/米・10月建設許可件数などの経済指標が予定されています。要人発言では、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ウィルキンス・加中銀上級副総裁の講演が行われる予定です。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。