シンジケートローンと聞いて、大企業が利用するものと感じる方は多いかもしれない。しかし、近年では中小向けの商品も見られるため、資金調達の選択肢としてぜひ押さえておきたい内容だ。特に成長スピードを意識する企業は、これを機に概要を理解しておこう。

シンジケートローンとは?

シンジケートローン,メリット,デメリット
(写真=PIXTA)

シンジケートローンとは、ひとつの顧客に対して複数の金融機関が連携して融資を行うローンだ。その特徴から「協調融資」とも呼ばれており、基本的にはすべての金融機関が同じ条件・契約で融資を実施する。
シンジケートローンの解説にはいくつか専門用語が登場するので、まずは特に押さえておきたいものを以下で簡単に確認しておこう。

用語 概要
・シンジケート団 顧客に対して融資を行う、複数の金融機関の団体。
・アレンジャー シンジケート団を取りまとめる幹事のこと。
・エージェント 元利金の受け渡しや契約の管理を行う、事務代行のこと。
・マンデート 金融機関が借入人(顧客)から、シンジケートローンの組成に関する委任を受けること。

一般的に企業がシンジケートローンを利用する際には、アレンジャーを指名するところから始まる。そしてマンデートを受けたアレンジャーはシンジケート団を組成し、融資実行に向けた準備を進めていく。
また、その後の事務作業については、上記の通りエージェントの仕事となる。つまり、借入人となる企業はすべての金融機関と直接交渉をする必要はなく、基本的にはアレンジャー・エージェントの2者としかやり取りをしない。

ちなみに、アレンジャーとエージェントは同じ金融機関が務めるケースもあるため、場合によっては借入人が直接やり取りをする相手は1者に限られてくる。

企業がシンジケートローンを利用する6つのメリット

シンジケートローンは一般的な融資とは形態が異なるため、借入人に発生するメリットも当然変わってくる。そこで次からは、企業がシンジケートローンを利用する主なメリットについて解説していこう。

1.多額の資金を借入できる可能性がある

シンジケートローンでは複数の金融機関が融資を行うため、借入人がトータルで借入できる資金も増える可能性がある。仮に中小企業が1億円の資金を必要としている場合、経営状態があまり良くない状況下ではひとつの金融機関から借入することはやや難しいだろう。

一方で、たとえば5つの金融機関がシンジケート団を組成するローンでは、各金融機関の負担額は2,000万円(1億円÷5)になる。つまり、結果的に貸す側のリスクが抑えられているので、ひとつの金融機関に絞って依頼するよりも、融資を受けやすくなる可能性があるのだ。

2.金利を一本化できる

資金を借り入れる企業にとって、金利を一本化できる意味合いは大きい。各金融機関から個別に借入する場合と比べて、財務管理が容易になるためだ。

また、たとえば多くの金融機関から融資を受けているなど、貸し倒れのリスクが高い状況下では金利は高くなる傾向にある。その点、シンジケートローンでは全ての金融機関から同一条件で融資を受けられるので、金利を抑えられる可能性もあるだろう。

3.事務負担を軽減できる

全ての金融機関から同一条件で借入できる点や、アレンジャー・エージェントが対応を一本化してくれる点は、借入人の事務負担を軽減させることにつながる。前述でも触れた通り、各金融機関に対して個別に対応する必要がなくなり、さらに借入条件も非常にわかりやすくなるためだ。

具体的には、資金決済や期中管理などの事務負担が軽減されるだろう。

4.将来的に資金調達の幅が広がる

シンジケートローンでは、一度に複数の金融機関と親密な取引ができる。つまり、多くの金融機関と関係を構築できるため、将来的に資金調達の幅を広げられる可能性がある。

特に経営力・信用力に乏しい中小企業が資金を調達するには、普段から金融機関との良好な関係を築くことが必要だ。シンジケートローンを利用し、きちんと完済して返済実績を作っておけば、いざという時に融資を受けやすい状況を作り出せる。

5.財務体質の改善につながる

シンジケートローンは社債に比べると、借入条件・返済スケジュールを柔軟に決めることが可能だ。この特徴によって長期借入金と短期借入金のバランス、つまり借入長短比率を調整しやすいので、企業によっては財務体質の改善につながる。

また、すでにさまざまな方法で資金調達をしている場合は、その方法をシンジケートローンに一本化することで、余計な金融コストを削減できるだろう。

6.対外的なIR効果を得られる

IRとは、企業が株主・投資家に向けて経営状態をアピールすることだ。シンジケートローンを利用すると、先進的な企業であることや資金調達力に優れている印象を与えられるので、企業イメージを向上させられる。

特に信用性の高い金融機関がシンジケート団に参加している場合や、新聞・ホームページのメディアに情報が掲載されるようなケースでは、高いIR効果を期待できるだろう。

シンジケートローンのデメリットと注意点

上記ではシンジケートローンのメリットを紹介したが、シンジケートローンには気を付けておきたいデメリットや注意点もある。つまり、全てのケースに適した資金調達手段ではないため、マイナスとなる要素もしっかりと理解しておくことが重要だ。

では、特に注意しておきたいデメリット・注意点について、以下で詳しくチェックしていこう。

1.契約までに手間がかかる

詳しくは後述するが、一般的な融資に比べるとシンジケートローンは契約までに手間がかかる融資形態だ。アレンジャーの指名に加えて、融資額が多額にのぼる分、詳細な事業計画も求められるケースが多い。

また、シンジケート団には多くの金融機関が参加するため、当然ではあるが契約書類も必然的に増えてくる。簡単に挙げるだけでも、契約書には以下の内容を盛り込む必要がある。

契約書に必要な内容 概要
・表明保証 借入人が公表している情報に関して、間違いがないことを保証するための内容。
・貸付前提条件 借入条件に関する内容。
・コベナンツ 契約内容に違反する事態が発生したときに、効力を発揮する条文のこと。

シンジケートローンの契約は数十ページに及ぶケースが一般的なので、作成はもちろん管理にも大きな手間がかかってくるだろう。したがって、早急に資金が必要になるようなケースでは、資金調達手段として適していない可能性がある。

2.さまざまな手数料が発生する

シンジケートローンは一般的な融資に比べると、手数料の種類や金額が多いため注意しておきたい。

ビジネスローンなどの一般的な融資においても、事務手数料や司法書士宛手数料をはじめとしたコストは発生する。しかし、シンジケートローンは取引をする金融機関が多い影響で、どうしてもさらに多くのコストが発生してしまうのだ。

では、具体的にどのような手数料が発生するのかについて、以下で一例を紹介しておこう。

○シンジケートローンの利用時に発生する手数料の例
・シンジケート団を組成するための組織構築手数料
・アレンジャーが各金融機関と交渉するための代理手数料
・契約条件をまとめるための事務手数料
・契約書の作成手数料
・各金融機関が集って、契約条件を話し合うための手数料
・調印式に関する手数料
・各金融機関への通知手数料
・契約条項を変更するための手数料 など

上記のうちアレンジャーが受け取るものは「アレンジメントフィー」、エージェントが受け取るものは「エージェントフィー」とも呼ばれている。この2つの手数料は特に種類が多く、場合によっては多額にのぼる可能性もあるので、事前に内訳をしっかりと確認しておく必要がある。

3.契約違反時のペナルティーが厳しい

たとえば返済不能に陥った場合など、シンジケートローンでは契約違反時に何らかのペナルティーが課せられる。ペナルティーの内容は契約によって異なるが、具体的なものとしては契約解除や資金の返済などが挙げられるだろう。

また、基本的に返済の延期が認められない点も、経営者がしっかりと押さえておきたいポイントだ。返済計画を綿密に立てたうえで、その計画を確実に守ることが求められてくる。

4.高い信用性が必要になる

前述でも解説したが、シンジケートローンはひとつの金融機関に依頼する場合と比べて、多額の資金を借入できる可能性がある。しかし、これは審査が甘いという意味合いではない。

複数の金融機関から借りるということは、全ての金融機関からの信用を得なければならない。つまり、シンジケートローンは高い信用性が前提となる商品であり、だからこそ詳細な事業計画や契約書が求められる。

シンジケートローンを利用するメリット シンジケートローンのデメリットと注意点
・多額の資金を借入できる可能性がある
・金利を一本化できる
・事務負担を軽減できる
・将来的に資金調達の幅が広がる
・財務体質の改善につながる
・対外的なIR効果を得られる
・契約までに手間がかかる
・さまざまな手数料が発生する
・契約違反時のペナルティーが厳しい
・高い信用性が必要になる

上の表は、ここまで解説したメリット・デメリットをまとめたものだ。

シンジケートローンにはさまざまな魅力があるものの、少額の融資には適していないと言えるだろう。また、将来の資金調達やIR効果にもつながるため、その後の影響も踏まえて計画を立てることが重要になる。

一般的な融資に比べると、準備に多くの時間や手間を要するローンであるため、検討中の企業は早めの準備を意識しなければならない。

シンジケートローンの申請~融資実行までの基本的な流れ

シンジケートローンは申請から融資実行までの流れも、一般的な融資とは大きく異なる。その部分に戸惑うと、計画に大きなズレが生じてしまう恐れがあるため、基本的な流れも確認しておきたいポイントだ。

そこで次からは、シンジケートローンが実施される基本的な流れを解説していこう。

【STEP1】アレンジャーの指名

シンジケートローンの利用を決めた借入人は、まずアレンジャーとなる金融機関を指名する。
指名とは言うものの、ここまでは一般的な融資の申し込みと大きな違いはない。すでに取引のある銀行などに出向いて相談をすれば、ルールや手数料体系、契約内容などに関して説明を受けることになる。

問題がなければ借入条件に関する提示書などを渡されるため、希望条件と合っているかをしっかりと確認しておこう。なお、事業計画書や財務諸表など、金融機関から求められた書類は速やかに提出することが重要だ。

【STEP2】シンジケート団の組成

次はシンジケート団を組成してもらうために、アレンジャーに対して組成依頼書を提出。この書類を受け取ったアレンジャーは、外部の金融機関に対して招へい活動を開始する。

必要な数の金融機関が集まったら、アレンジャーは各金融機関から参加表明書を受け取り、いよいよシンジケート団が組成されていく。

【STEP3】契約書の作成・調印

シンジケート団が組成されたら、契約の段階へと移っていく。契約内容に問題がなければ契約書を作成し、借入人が調印をすればシンジケートローンを利用する準備はひとまず完了だ。

ちなみに、アレンジャーを指名してから調印までには早くても1ヶ月、長ければ3ヶ月ほどかかる。したがって、借入人は資金が必要になるタイミングを強く意識して、慎重に計画を立てておきたい。

【STEP4】借入の申し込み

調印後にそのまま融資が実行されるシンジケートローンも存在するが、その後に借入の申し込みをしなければ融資を受けられないローンもあるため注意が必要だ。このタイプのシンジケートローンでは、借入人がエージェントに対して借入申し込みを行うと、エージェントがシンジケート団に対して通知を行う流れになる。

申し込み内容に特に問題がなければ、いよいよ融資が実行される。

【STEP5】融資実行

ケースごとに異なる可能性もあるが、実際の融資は各金融機関から個別に行われる。つまり、エージェントが全額をまとめて融資する形式ではないので、資金の管理や確認には注意しておきたい。

一方で元利金を支払うときには、エージェントが引き落とした金額を各金融機関に振り込む形が主流だ。このように、融資と返済で方法が大きく変わってくる可能性があるため、利用前にはその点も事前にチェックしておこう。

シンジケートローンの利用時に、経営者が押さえておきたい3つのポイント

シンジケートローンを上手に活用するには、利用時のポイントを押さえることが重要だ。シンジケートローンは独特な融資形態であるため、通常の融資と同じ感覚で利用するべきではない。

そこで以下では、経営者が特に押さえておきたいポイントをまとめてみた。

1.アレンジャーを慎重に選ぶ

シンジケートローンの大部分をコントロールしているのは、幹事の役割を果たしているアレンジャーだ。アレンジャーの統率力が強いほど、借入人にとって魅力的な金融機関が集まりやすいと言える。

そのため、アレンジャーは慎重に選ぶ必要があり、ベストな金融機関としてはメガバンクが挙げられる。ただし、信用性に乏しい中小企業が利用する場合は、メガバンクに相手にされないこともあるだろう。

そこで次の選択肢として考えておきたいのが、普段から取引のある金融機関。特に良好な関係を築いている金融機関であれば、多額の資金を必要としている場合でも相談しやすいはずだ。

2.契約内容・手数料をしっかりと確認しておく

借入人にとってリスクとなり得る契約内容や手数料は、契約の締結前に細かくチェックしておきたい。仮に多額の資金が必要であっても、借入人の立場が大きく不利になるような契約は結ぶべきではない。

特に手数料に関しては種類が多く、アレンジャーによって内訳が変わる可能性もあるので、細かい部分までしっかりと確認しておこう。

3.コミットメントラインと組み合わせる

コミットメントラインとは、事前に設定された融資枠の中で何度も借り入れができる融資形態のこと。自由度が高い融資形態であるため、運転資金などの短期資金の借り入れに適している。

一方でシンジケートローンは、契約に手間はかかるものの多額の資金を借入できるため、長期資金の借り入れに最適だ。また、シンジケートローンで調達した資金で巨額投資を行うと、すぐには成果を得られない可能性があるので、別の資金調達手段を用意しておく必要がある。
そこでぜひ活用したいものが、上記のコミットメントライン。短期資金の調達手段としてはコミットメントライン、長期資金の調達手段としてはシンジケートラインを用意することで、よりスムーズな資金調達が可能になるだろう。

検討中の企業は仕組みや特徴を理解し、早めの行動を

シンジケートローンは一般的な融資と大きく異なる形態であるため、利用前には仕組みや特徴をしっかりと理解しておくことが重要だ。特に今回解説したメリット・デメリットは強く意識したうえで、準備から資金を使うまでの計画を慎重に立てる必要がある。ただし、申し込みから融資実行までに時間がかかる点には注意しておきたい。動きだしが遅くなると、資金が必要な時期に間に合わなくなる恐れがあるだろう。そのため、綿密な計画を立てることはもちろんだが、早めの行動も意識しておこう。

文・THE OWNER編集部

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