前日の欧州時間では、CNBC記者が中国政府筋の話として「米中貿易協議巡り中国側のムードは悲観的だ」とツイートしたことが発端となったリスクオンの動きをやや解消する形で、ドル円は108.834円まで反発する動きがありましたが、NY時間に入ると、米ホームセンター最大手ホーム・デポの決算が低調だったことを受けて、ダウ平均が一時140ドル超下落、米10年債利回りが1.77%台まで低下するなど、リスク回避の動きが強まり、ドル円は一時108.456円まで下落する動きとなりました。背景としては、トランプ大統領が「中国と合意なければ関税をさらに引き上げる」と発言したこともドル売り円買いのきっかけになったと考えられます。
トランプ大統領は「中国と合意なければ関税をさらに引き上げる」と発言しているものの、米メディアでは「米政府は2018年に課された2500億ドルの関税の一部撤廃を検討」と報道されています。ただ、本日は早朝から「米上院が香港人権法案を可決」とのヘッドラインが流れ、ドル円は一時108.390円まで下値を拡大しましたが、ロス米商務長官が「中国と合意できるとの期待はあると思う」「中国との協議は依然として進行中」などの見解を示し、ドル円は108.50円台に再び反発するなど乱高下する動きになっています。しかし、中国が香港人権法案に対して報復を表明したことから、ドル円は108.390円のラインを下抜ける動きになっています。
想定外の動きとしては、前日はカナダドルの下落が目立つ一日でした。大前提として原油価格の下落があるものの、ウィルキンスBOC副総裁が「政策金利は1.75%で低いが、まだ操作する余地がある」「フォワードガイダンスや大規模資産購入など他のオプションもある」などと発言したことが嫌気され、カナダドル円は一時82.422円まで値を戻していたものの、81.758円まで下落する動きとなりました。オセアニア通貨の下落が顕著になっていましたが、状況によっては、カナダドルについても、上値の重い展開が待っているかもしれません。
今後の見通し
前日は、英国選挙の前哨戦として、保守党のジョンソン英首相と労働とのコービン党首の討論会が行われました。討論会後の調査会社ユーガブの世論調査では、ジョンソン英首相が優勢が51%、コービン党首優勢が49%と拮抗しているとの結果となりました。事前予想では、圧倒的にジョンソン英首相が優勢になるのではないかと考えられていたため、今回の接戦という結果は想定外だったと思われます。今回、コービン党首の支持が増えた理由としては、一部王室を巡る質問に、王室には若干改善が必要と明確に回答したことが、支持された理由だと思われます。今週は、金曜日(日本時間翌午前4時から2時間)に保守党のジョンソン英首相、労働党のコービン党首、スコットランドSNP党スタージョン党首、自民党スウィンソン党首の4名が会場の有権者から質問を受ける形で、討論を行う予定です。
本日発表された日・10月通関ベース貿易収支では、事前予想2,293億円の赤字に対して、結果は想定外の173億円の黒字となりました。黒字は4ヵ月ぶりとなりますが、内容としては、輸出、輸入ともに減少し、原油価格の下落による輸入の減少幅が大きかったため黒字化したことが判明しており、上下に動きづらい地合いになっています。また、国・地域別では、中国に対する貿易収支が2,699億円の赤字、EUに対しても465億円の赤字だったものの、対米国は5,575億円の黒字だったこともあり、この点については、トランプ大統領から指摘されるかもしれません。
保守党有利である限り、ポンドについてはロング戦略継続
ポンドドル、1.2920でロングメイクです。ジョンション英首相、コービン労働党党首の討論会で、ジョンソン英首相の有権者支持が低下するネガティブサプライズがありましたが、保守党優勢の状況が変わらない以上、ポンドについては、上目線で考えたいと思います。1.2920ドルのポンドロング、利食いは1.3070ドル付近、損切りについては、1.2870ドル下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
豪ドル安が継続していたものの、ここにきてモリソン豪首相が38億豪ドルのインフラ支出計画を早期に実施することを表明しました。米中通商協議関連の報道に、最も影響を受けやすい通貨であるため、進展期待が高まるようであれば、早期インフラ支出計画がプラスに捉えられる可能性があります。
今日の予定
本日は、独・10月生産者物価指数、加・10月消費者物価指数、FOMC議事録などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。