人口減少によって大都市に人が集まり地方は疲弊する……このような見方も多いですが、野村総合研究所のレポートを紐解くと、まったく違う日本の可能性が見えてきます。キーワードは「ローカルハブ」。本記事では大都市目線ではなく、地方目線で日本の将来を考えてみましょう。
シリコンバレー、オースティン……海外のローカルハブの成功例
ローカルハブとは、経済的に自立した地方(中核)都市のことです。人口減少社会に入った日本では、今後3大都市圏に人口が集中するメガリージョン化が進むといわれています。地方の将来は悲観的に見られることも多い傾向ですが、経済的に自立したローカルハブ化によって人口減少する中でも強い経済力をもつ都市を作ることは可能という考え方があります。
ローカルハブには、地域に根差した人材や企業を育成し、世界の市場で通用する商品・サービスを輸出して外貨を獲得する機能が求められるのです。実際に海外ではその国をけん引するようなローカルハブの取り組みが実現しています。
一番分かりやすいローカルハブの例は、アメリカのIT産業の中心地であるシリコンバレーやハイテク産業に関連する企業が多数立地するオースティンです。大企業からのスピンオフ(事業部門の別会社化)やベンチャー企業の創出も多く、ローカルハブとメガリージョンがコラボしたような成功例といってよいでしょう。
またドイツの総合テクノロジー企業・シーメンスは、事業戦略の策定や資金調達などの本社機能はミュンヘンのグローバル本社に集約し、事業部門以下の3部門に分散させています。
- エアランゲン(医療・都市・エネルギー部門)
- ハンブルグ(風力発電部門)
- レーゲンスブルグ(機械製造部門)
各地方都市に分散させることでメガリージョンとローカルハブをバランスよく両立させ、事業の競争力を高めているのです。
ローカルハブのポテンシャルを持っている国内都市|1位:福岡市、2位:鹿児島市
日本国内のローカルハブが発展していく可能性はあるのでしょうか?状況を知るうえで参考になるのが、野村総合研究所が分析した「成長可能性都市ランキング」です。これは、国内100都市を対象にローカルハブとしての現状と将来のポテンシャルを分析したもの。ランキングには複数のテーマがあり、中でも注目したいのが都市の伸びしろを表す「ポテンシャルランキング」です。
同ランクで1位になったのが福岡県福岡市です。レポート内では「ビジネス環境は整っているが独自の産業が少なく伸びしろが大きい」と評価されています。都市の強みの部分では「多様なライフスタイルの許容度」「創業を促す風土」「幸福感、街への誇り・愛着」「余暇の充実」の4項目で100都市中1位になるなど将来性の高さを裏付ける結果でした。
2位は鹿児島県鹿児島市です。街への誇りが高く活気もあり、外部人材の受け入れなど新しいものを受け入れる風土がある部分を評価されています。普段は大都市圏に比べてあまりピックアップされることが少ない九州地区が上位を占めたことは、いかにもローカルハブのランキングらしく興味深いものがあります。
3位のつくば市では2万人の研究者が従事!スタートアップ企業が相次ぐ
「ポテンシャルランク」で3位に入った茨城県つくば市は、「スタートアップの街」として近年クローズアップされることが多くなりました。つくば市は約150の研究機関に約2万人の研究者が従事する街ですが、その中心的な役割を果たしているのが筑波大学です。同大学が承認したスタートアップの設立社数は2019年8月までの累計で148社に上ります。筑波大学に次いで多いのが、同じくつくば市に中核研究拠点を置く国立研究開発法人産業技術総合研究所で147社を数えます。
両機関がかかわった多数のスタートアップの中から、注目度の高い上場企業が誕生したのは特筆すべきことです。2012年には産業技術総合研究所が設立した医薬品開発企業のジーンテクノサイエンスが、2014年には筑波大学の教員らが創業メンバーの装着型ロボット開発サイバーダインが、ともに東証マザーズに上場を果たしています。教員が作った会社が上場することはなんとも夢のある話です。つくば市ではスタートアップを創出することによって人口の維持や市税の確保を狙っているとされます。
日本でもローカルハブ都市の発展が期待される
こういった都市がローカルハブとして成長することで人口減少でも活力ある日本を維持できる可能性があるといえるでしょう。物流機構の発展や情報伝達手段の多様化、働く人の意識改革など、東京一極集中の流れとは別に、地方都市の発展につながる素地は揃ってきているといえます。海外の成功事例をなぞりつつ、日本独自のローカルハブの発展が期待されます。(提供:Wealth Lounge)
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