前日については、米上院・下院で可決された「香港人権・民主法案」にトランプ大統領が署名した際は、中国政府は報復措置を示唆していることが嫌気され、さらには米中通商協議においても、第1段階での合意すら危うくなるのではないかとの懸念が強まり、リスク回避の動きが強まりました。ただ、その後に、ヘッドライン相場を象徴するように、劉鶴中国副首相が「第1段階の米中貿易合意に達することに慎重ながらも楽観的」と発言したことを受けて、ドル円は反発基調を強め、さらには、「中国の劉鶴副首相がさらなる協議のために先週、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とムニューシン米財務長官に中国への招待状を送付した」との報道が好感され、リスク回避の動きは一気に打ち消される展開になりました。
また、「米政府は米中合意がない場合でも12月15日に予定される対中追加関税の第4弾の発動を見送る公算」との報道もドル円を筆頭としたクロス円をサポートする形となり、ドル円は一時108.695円まで上昇し、本日の東京時間では、昨日の高値を更新しています。本日の焦点としては、劉鶴中国副首相が米国のサンクスギビングデー前に北京で米中閣僚級通商協議の開催を呼びかけており、米国側がどのような回答をするのかが注目されます。開催されるのであればリスクオン、開催されなければリスクオフという、非常にシンプルな動きになると思われます。
ユーロについては、10月ECB理事会の議事要旨が公表され、ドラギ総裁の最後の理事会となりました。内容としては11月から月200億ユーロのペースで資産買い入れを再開することも確認するなど既知のものがほとんどであり、マーケットを動意づかせるような材料にはなりませんでした。インフレ率の継続的な下振れに対する対処方針が目下の重要課題ではありますが、直近ではインフレ期待が低下していることもあり、9月の緩和が正当化されるようであれば、ユーロは一旦買い戻されるのではないでしょうか。
今後の見通し
ポンドについては、12月12日に予定されている英国総選挙が、引き続き注目されていますが、保守党のリードは依然として継続しています。また、保守党の選挙公約に非居住者の英不動産所得に対して3%の追加課税が含まれることが表明されました。労働党の選挙公約としては、EU離脱の是非を問う再投票、企業や富裕層への増税、大学教育の無料化などを掲げましたが、有権者の反応は鈍く、あまり賛同を得られていません。このまま保守党優勢の動きが強まるのであれば、次第に市場は保守党の単独過半数を織り込みに行くため、ポンド高がより強まってくるのではないでしょうか。
昨日ECB理事会議事要旨が公表されましたが、本日はラガルドECB新総裁の講演が予定されています。同総裁については、これまで沈黙を守ってきたこともあり、金融政策の先行きに対してどのような見解を示すのかが注目されます。議事録には、オープンで率直な議論は絶対的に必要で正当だが、それを通じて合意を得ることが重要だと記載されており、緩和に対する内部意見が対立していることが明確になっています。金融政策が長期間にわたって緩和を維持し、必要に応じた追加緩和の準備を進めることは合意されているものの、ECBメンバーの腰は重く、現状は打開策を見出せていない状況が続いています。12月会合では、ECBメンバーの経済見通しも下方修正されるのではないかとの声もあるため、同総裁の見解は、ユーロの行方を占う意味では、ベンチマークになってきそうです。
保守党有利である限り、ポンドについてはロング戦略継続
ポンドドル、1.2920でロングメイクです。保守党と労働党の選挙公約が発表されましたが、依然として保守党優勢の状況が変わらない以上、ポンドについては、上目線で考えたいと思います。1.2920ドルのポンドロング、利食いは1.3070ドル付近、損切りについては、1.2870ドル下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
米中通商協議で一喜一憂するマーケットではありますが、「香港人権・民主法案」についてはリスクオフ、「米中通商協議」についてはリスクオンという構図が徐々に構築されつつあります。また、錯綜する情報合戦のなか、ロス米商務長官が発する内容が現実に起こってきていることを踏まえると、ロス米商務長官発言の重要度はより高まってきそうです。同氏の直近の発言は、「第1段階の合意に署名する可能性は非常に高い」です。
今日の予定
本日は、独・第3四半期GDP(確報値)、独・11月製造業PMI/独・11月サービス業PMI、ユーロ圏・11月製造業PMI/ユーロ圏・11月サービス業PMI、英・11月製造業PMI、加・9月小売売上高、米・11月マークイット製造業PMI/米・11月マークイットサービス業PMI、米・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ラガルド・ECB総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。