富裕層、取り分け「超富裕層」と呼ばれる資産家には、まず必ず優秀なプライベート・バンカーやIFA(Independent Financial Advisor)と呼ばれる専門家が一人か二人は張り付いていて、多くの助言を行っている。そこには多くの人が学ぶべきヒントが隠されている。
筆者は外資系プライベート・バンクのインベストメント・ソリューションズ・チームのヘッドとして、プライベート・バンカー達に会社が世界中の超富裕層に対して普遍的に使っているノウハウを伝えてきた経験がある。今回は「富裕層に学ぶ投資の心得(その2)」と題してそのエッセンスをお伝えしよう。
心のひだに届くような提案や助言
なぜ、彼らプライベート・バンカーやIFAは富裕層に深く信頼されるのだろうか? 彼らの中には、わざわざ富裕層から指名を受ける者さえいる。
答えを一言でいえば「富裕層に心地よく資産運用を続けて貰える術を知っている」からだ。富裕層の「投資特性」を120%理解し、心のひだに届くような提案や助言を続けることが出来るからに他ならない。逆に言えば「どうも彼(彼女)の提案はピントがずれている」と少しでも富裕層に思われたら一巻の終わり、自然と取引は尻すぼみになる厳しい世界がそこにはある。
リスク許容度だけが「投資特性」ではない
最近は巷の金融機関でも窓口でアドバイザーと話すだけでなく、簡単な問診票のようなものに記入し、その結果に基づいて推奨商品を選んだりする場面も珍しくなくなった。中には「AI(人工知能)を駆使して最適な金融商品をご提案します」などといったサービスをウリにしているところもある。
ちなみに、その問診票で一番大きなウェイトを占めるチェック項目は「リスク許容度」であることが多い。「利回り重視の安定運用」が良いのか?「ある程度のキャピタルゲイン狙いも含めた利回り重視の運用」か? 若しくは「積極的にリスクを取って高いリターンを追究する運用」か? 表現や段階分けは金融機関によって様々だが、概ねこうした内容の答えを求めるものが大半だ。
「リスク許容度」を金融機関の目線で別の言葉に言い換えると「最悪の場合、どこまで元本が棄損しても(お客様と)トラブルにならないか?」と表現することも出来る。たとえば問診票の「高い運用収益を得るためには投資用資産の多くについてリスクを取る用意がある」「過去に多額の運用損を経験したとしても、引き続きリスクのある運用について検討すると思う」といったチェック項目は、正に「リスク許容度」を計る問いかけの一つと言える。
しかながら「リスク許容度」だけで投資特性を見定めることは難しい。「リスク許容度」は重要項目の一つではあるが、それだけで数多ある投資信託の中から最適な一品など選べることはない。「貴方はリスク許容度が高いので株式投信がお勧めです」「貴方はリスク許容度が低いので債券型でじっくり運用する投資信託がお勧めです」と(ここまで単純でなくても)似たようなセールストークを受けたら、その窓口からは早々に撤退した方が良い。