前週末の海外時間では、一時108.50円を割り込む動きになるものの、トランプ大統領が「中国との合意は非常に近い」「香港と立場を共にするが貿易合意も望む」などと述べたことが好感され、ドル円は108.70円付近まで反発しました。ただ、注目の「香港人権法案」に署名するかどうかについては明言しなかったこともあり、積極的にリスクオンを進める動きも限定的となっており、108円半ばから後半での狭いレンジでの動きが当面続く可能性が高そうです。また、米・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は市場予想95.7が96.8へ改善され、米・11月マークイットサービス業PMI/製造業PMIも市場予想よりも強い内容だったことも、ドル円をサポートしたものと思われます。

欧州圏のPMI(独を含む)については、強弱まちまちの内容になったことから、ユーロドルでは30ポイント程度乱高下する動きが見られましたが、製造業は改善したものの、サービス業は悪化しており、これは10月の改善をほぼ相殺し、9月の水準に戻ってしまっていることから、成長ペースの鈍化が嫌気されたものと思われます。また、ラガルドECB総裁が就任後2回目となる講演を行いましたが、金融政策に関する詳細なコメントは控えており、こちらはあまり材料視されませんでした。ただ、現在の金融緩和策については、「景気回復において内需の主たるけん引役を担ってきており、依然として有効」と評価しており、引き続き大規模緩和を継続する姿勢を示したことで、ユーロの上値は若干重たくなっています。

ポンドについては、英・11月製造業PMI(速報値)が48.9予想が48.3、英・11月サービス業PMI(速報値)が50.1予想が48.6となり、ポンド売りが強まりました。特に英国のGDPの大多数を占めているサービス業が節目の50.0を下回ったことが、嫌気されたのだと考えられます。ただ、週末に公表された保守党のマニュフェストでは、従来の1月末でのブレグジットと公共サービスの再活性化を公約に掲げました。また、これまで失言が多く有権者離れを起こしていたジョンソン首相についても、無難なスピーチに終始するようになっており、現状の保守党リードをこのまま維持する作戦に出ています。世論調査でも一部では40%後半の有権者が保守党支持を打ち出していることで、月曜オープニングのポンドは小幅高でスタートしています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

週末のもう一つのイベントであった香港区議選では、民主派が過半数を獲得し、圧勝したというヘッドラインが流れています。現時点では、この結果を受けて、デモ隊の勢いが拍車をかけるのか、または警察の弾圧が強まるのかは定かではありませんが、香港情勢を意識して、上値ではドル売りの動きも出てきてはいますが、米中通商協議が綱渡りではあるものの、一歩一歩進んでいる現状では、リスクオフの動きにはなりづらいため、ドル円は108.50円割れなどの水準では、押し目買い意欲が強いものと思われます。

譲歩とい部分では、習近平国家主席が「必要なら、報復措置を発動することも辞さない」とこれまでの方針を変えるつもりはないものの、第一段階の通商合意をまとめたい意向があると表明しています。トランプ大統領が未だに「香港人権法案」に署名していないように、同大統領が「香港の人民とともにあるが、習近平国家主席も大事な友人だ」と発言していることを踏まえると、署名を躊躇っていることがわかります。署名しない場合には、日曜を除いて10日間経過すれば自動的に成立、あるいは、議会が三分の二で再度議決すれば成立に持ち込めるますが、この「香港人権法案」の落としどころを模索しているものと思われます。

また、引き続き、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査が材料視されそうです。トランプ大統領が、政敵に対する調査実施をウクライナに迫ったことに関し、予定されていた下院情報委員会の公聴会が終了しました。同委員会が纏める報告書は、弾劾条項を起草する権限を持つ下院司法委員会に提出されることになりますが、現状では横ばいですが、これまで公聴会への出席を拒んできた証人が証言するなどの予想外の展開があれば、ドル売りの材料になりそうですが、弾劾審理で同大統領を追い詰めるのは難しいと考えられます。

保守党有利である限り、ポンドについては仕切り直し

週明けこそ選挙関連の報道でポンド買いが強まっていますが、金曜の経済指標悪化により、1.2920ドルのポンドドルロングは、1.2870ドルにて損切り、手仕舞です。ただ、依然としてポンド買い意欲は強いと考えられるため、仕切り直しでのポンドドルロングを戦略とします。選挙公約が発表されましたが、依然として保守党優勢の状況が変わらない以上、1.2840ドル台でポンドドルをロング、利食いは1.300ドルを意識して1.2980ドル付近、1.2780ドル下抜けて損切りとします。

海外時間からの流れ

各調査会社の正確な数字はまだ公表されていませんが、保守党のリードが前週と比較しても広がっていると報道されています。一部では、ほぼ50%に近い有権者が保守党に傾いているとも言われており、単独過半数も十分見えてきました。保守党の優勢はポンド買いに直結するため、ポンドの底堅い動きは継続するのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、独・11月IFO景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ビルロワドガロー・仏中銀総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁、レーン・ECBチーフエコノミストの講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。