前日の海外時間では、中国の人民日報傘下の環球時報が、米中通商交渉に関して第一段階の合意が非常に近いと報じたことで、米中通商協議の進展期待が強まり、ドル円は一時108.976円まで上値を拡大しました。第二段階および第三段階の合意に向けた協議継続にも備えていると報じられていますが、米中両国の政府当局者は第二段階の合意が実現する可能性は低いとの見解を示しており、まずは第一段階の合意を目指すものになりそうです。本日は、昨日のリスクオンの流れを受け、東京時間に109円台を回復しています。

ネガティブサプライズだったのが、12月12日に総選挙を控えている英国の世論調査です。調査会社ICMが発表した内容によると、保守党の支持率が1ポイント低下して41%、労働党の支持率が2ポイント上昇して34%となりました。一部報道では、保守党のリードが拡大するだろうと言われていただけに、まさにネガティブサプライズとなりましたが、依然として保守党がリードしていることには違いなく市場の影響は限定的なものになりました。ただ、これ以上差が縮まってくるようだと、情勢がわからなくなってくるため、ポンドは上下どちらにも振れやすい動きになりそうです。

エマージング通貨では、メキシコペソが軟調に推移しました。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の米議会批准について、メキシコのロペス・オブラドール大統領は年内合意に楽観的な見通しを示したものの、同国のセアデ外務次官が「労働基準などで米国との隔たりがまだある」として、米国の年内批准に悲観的な見方を示したことが、ペソ売りに繋がりました。もともと、USMCAは順調に進んでいるとの見方がペソ買いをサポートしていた側面があるため、頓挫するようであれば、一旦調整の動きがでてくるかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は東京時間にデベル・豪中銀(RBA)副総裁の講演が行われ、日本時間18時過ぎにロウ・豪中銀(RBA)総裁の講演が予定されており、豪ドルの動きに期待がかなりますが、東京時間に行われた同副総裁の発言では、「ここから数年は堅調な賃金上昇を予測」「雇用は予想よりも強まっている」などと、想定外のプラス面を強調した内容になっており、やや豪ドル買いが強まっています。同総裁の発言がプラス面を強調するようなものになれば、豪ドルは買い戻しの動きが強まるかもしれません。講演の内容としては、「非伝統的金融政策、海外からの教訓」という議題になります。

米中通商協議の進展期待が高まり、再びリスクオンの地合いが強まっていますが、28日は米国がサンクスギビングデーになるため、海外時間の取引参加者が徐々に減ってくることが想定されるため、値動きは限定的なものになりそうです。同祝日は、米国民が最も移動の多いシーズンであり、休暇取得者も多いことから、ボラティリティの減少に繋がります。また、そろそろメガバンクを含めた金融機関やヘッジファンドの11月末決算内容を確認しようとする動きも出てくることから、今週は、リスクオンの動きが強まったとしても、上値は限定的になる見通しです。

保守党有利である限り、ポンドについては仕切り直し

想定外に世論調査では保守党のリードが縮小しましたが、依然として保守党リードの状況は変わっていないことで、ポンドは底堅い動きになっています。1.2840ドル台でのポンドドルのロング、1.2980ドルでの利食い、1.2780ドル下抜けでの損切り設定は変更なしとします。

海外時間からの流れ

東京時間に行われたパウエルFRB議長の講演では、「景気の見通しに大きな修正が必要になれば適切に対応する」との発言があったものの、「現在の金融政策は適切」と市場が織り込みつつある「予防的利」利下げの打ち止めを示唆したこともあり、ドル円は小幅高になっています。このまま織り込む動きが強まるようであれば、米中通商協議の進展期待との相乗効果で、ドル円は上値を拡大しそうです。 また、中国と米国が26日に電話協議、第一段階巡る話し合い継続で合意とのヘッドラインが流れ、ドル円は一時109.207円まで上昇しています。

今日の予定

本日は、米・10月CB消費者信頼感指数、米・10月新築住宅販売件数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クーレ・ECB専務理事、ロウ・豪中銀(RBA)総裁、ブレイナード・FRB理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。