前日の海外時間では、東京時間にトランプ大統領が「香港人権民主法案」へ署名したことにより、中国は報復措置を取ると警告したことで、リスク回避の動きが強まるかと思われましたが、円買いの影響は限定的となりました。背景としては、トランプ大統領が『習近平国家主席と中国、香港市民に敬意を表して法案に署名した』と発言し、同法案の一部条項は外交政策に関する大統領権限の行使を妨げるものであるため、大統領権限と同法律の各条項を整合的に扱うとの見解を示したことが、リスク回避の動きが限定的になった要因と考えることができそうです。
また、中国側も外務省は米国を非難する声明を発表しましたが、商務省はコメントを控えており、米国側も中国側も通商協議を成立させたいのではないかとの思惑が見え隠れしている点も、下値が限定的になった要因として考えられそうです。また、減速する中国経済を考えると、同国は米国と同じくらい貿易面での合意を必要としていると考えられている点も、考慮された可能性がありそうです。
エマージング通貨では、メキシコ中銀が11月14日の金融政策決定会合の議事要旨で「経済活動が予想よりも弱く、インフレが従来想定よりも早く冷え込む恐れがある」と指摘し、追加利下げの可能性を示唆したことで、一時ペソ売りが強まりましたが、メキシコ株式相場が持ち直したことなどで、その後は反発しています。
今後の見通し
調査会社ユーガブが12月12日の総選挙における各党の議席獲得予想を行い、与党・保守党は下院の全650議席のうち、359議席を得て、単独で過半数を獲得する見通しとの発表がポンド買いが強めました。ただ、昨日は、ユーガブより「モデルの誤差を考慮すると、保守党の獲得議席数は328-385になる見通しであり、来月の投票日まで有権者が投票行動を変える可能性は十分にある」と指摘したことが若干嫌気され、ポンドに調整が入りました。ただ、保守党優勢の状況に変わりはなく、大きなポンド売りには至っていません。
本日は、ブラックフライデーとなるため、引き続き、海外時間の流動性は低下するものと思われます。基本的には、米中通商協議の状況次第であることに違いはないのですが、昨日の動きを見る限りでは、よほどネガティブな報道がない限りは、リスク回避の動きは限定的になりそうです。トランプ大統領と習近平中国国家主席の利害がここにきて一致しているようにも考えられるため、今後の反応については、来週に持ち越しとなるのではないでしょうか。
保守党有利である限り、ポンドについてはロング継続
ユーガブが世論調査の結果公表後に、やや保守的な見解を示したことで、ポンドドルについては一時調整の動きがありましたが、1.2900ドル台を維持しています。1.2840ドル台でのポンドドルのロング、1.2980ドルでの利食い、1.2780ドル下抜けでの損切り設定は変更なしとします。
海外時間からの流れ
本日より、ブラックフライデーが開始されますが、米国は大寒波が押し寄せているため、小売売上への影響が懸念されています。売り上げ不振との報道があるようであれば、株式市場への影響が懸念され、株売りから円買いの動きに繋がるかもしれません。
今日の予定
本日は、独・10月小売売上高、トルコ・10月貿易収支、独・11月失業率、ユーロ圏・11月消費者物価指数、加・9月GDPなどの経済指標が予定されています。要人発言としては、ビルロワドガロー・仏中銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。