2019年はアメリカにおける大型IPOの当たり年かもしれません。ライドシェアサービスを手掛けるLyftとUberをはじめ、ビジネスメッセージアプリのSlack、ビデオ会議サービスのZoomなどが続々とIPOを果たしています。UberやSlackは日本でもおなじみのサービスになっており、いずれも高い知名度を誇っています。

今、アメリカ市場ではスタートアップが精力的に活動しています。評価額が10億ドル(約1,100億円)を超えるスタートアップは、あまりお目にかかれないことから一角獣に例えられ、「ユニコーン企業」と呼ばれますが、2019年は大型のIPOが相次いでいることもあり、多くのユニコーン企業が登場しています。

数年前までは、大手企業からのM&Aをイグジットとするスタートアップもありましたが、ここ最近は、IPOを目指す企業も増えているようです。メリットは市場から多額の資金を調達できること。M&Aの結果、人材が流失してしまったり、親会社との間に経営方針でズレが生じてしまったりなどのリスクも回避できます。

一方で、M&Aをされずとも市場において存在感を示せる強いスタートアップが登場してきたからかもしれません。UberやSlackが日本においても欠かせないサービスになりつつあるように、スタートアップが提供する製品やサービスが、市場で高いシェアを獲得してきています。

事業拡大中のWeWorkに起こったIPO撤回の原因

ユニコーン,米市場
(画像=Sundry Photography/Shutterstock.com)

その代表格の1つと言えるのが、ワークスペース「WeWork」を展開するThe We Companyでしょう。WeWorkは2010年にアメリカで事業をスタート。現在120以上の都市でサービスを展開しています。日本には2017年に上陸しました。ソフトバンク・ビジョン・ファンド が出資し、ソフトバンクと合弁会社を立ち上げたことでも話題になりました。

上陸後は、次々に拠点を拡大。現在は東京、名古屋、大阪に加え、福岡、神戸、横浜と、6都市に30以上の拠点を構えるまでになりました。上陸から3年を経て、最も拠点数が多い東京では、街中でWeWorkが入居したビルをよく見かけますし、自前のオフィスを構えずWeWorkに入居しているという企業も増えてきました。

シェアリングオフィスを展開する企業はほかにもありますが、コーヒーやビールが飲み放題といったワークスペース内のサービスの良さや、洗練されたオフィスデザインでWeWorkは現在でも一線を画する存在と言えるでしょう。

日本でも人気の高いWeWorkですが、IPO目前で撤回することになり、市場では「WeWorkショック」と呼ばれる影響が出ました。その原因の一端は、事業は拡大していながらも、上半期に多額の純損失を計上していたこと。これを受け、共同創業者でCEOのアダム・ニューマン氏は辞任しています。

同様に、IPOを果たしたUberも2019年4~6月期で赤字を記録しており、現状の業績は決して芳しくありません。しかし、そうしたマイナス面はありながらも、新たなサービスを生み出し、今までになかった利便性を提供するスタートアップは、ユーザーにとって欠かせない存在になっています。

一方で、日本を見ると、そこまで突出したスタートアップがあるでしょうか。ユニコーン企業の代表格はフリマアプリを展開する「メルカリ」と言われていますが、それ以降、メルカリほど成長を遂げたスタートアップは、続いていないようにも思えます。アメリカのスタートアップが世界を見据えてビジネスを展開していくのに対し、日本のスタートアップは日本市場に合致したサービスや製品を手掛けることが多いため、世界規模での注目度が低いのかもしれません。

WeWorkに出資したソフトバンク・ビジョン・ファンド は、現在までに日本のスタートアップに出資した実績は1つもありません。家具家電付きの賃貸物件「OYO LIFE」の親会社にあたるインドのOyo Roomsや、アメリカで物件の買取再販事業を手掛けるOpendoorなどに出資していますが、日本企業への出資はゼロです。この現状をチャンスと捉え、日本でも生活を変えるサービスを生み出すようなスタートアップが誕生してほしいものです。(提供:JPRIME


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