前日については、ドル円は、東京市場で一時109.725円と5月30日以来約半年ぶり高値を付けたものの、海外時間では、トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すとツイートしたことが嫌気され、さらには、米・11月ISM製造業景況指数が市場予想49.2が48.1に悪化したこともあり、ドル円は108.90円台まで下落しました。
また、米中通商協議関連では、ロス米商務長官が「中国と合意なければ、トランプ米大統領は対中関税を引き上げるだろう」と発言したことで、米中通商協議進展期待が後退したことも、ドル売りの材料になったと思われます。特に、ロス米商務長官については、これまで悲観的な状況においても、前向きな発言を繰り返し、米中通商協議を前進させることに注力していましたが、久々に後ろ向きな発言をしたこともあり、マーケットは同氏の発言を嫌気したのだと思われます。
コンウェイ米大統領顧問が「年末までに中国と合意することは可能」「米中の『第1段階』通商合意は書面化されている」などと発言したことで、ドル売りの流れは一旦小休止したものの、リスク選好となるイベントとして意識されていたものの、再び二転三転するような展開になっていることから、マーケットは疲れにも似た失望売りへと傾斜したものと思われます。また、トランプ大統領が利下げと金融緩和を改めて進めるよう要求したことも、ドルの戻りを鈍くした要因だと思われます。
今後の見通し
トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンに追加関税を課すと公表したことは、米中通商協議への牽制の意味合いも含まれていると考えられるため、ここまで順調に消化してきた米中通商協議の動きにも、ややネガティブな動きが見られています。また、中国がトランプ米政権の「香港人権・民主主義法案」に対する報復措置として、米国の企業・団体を含む信頼できない組織のリストを公表し、中国市場から締め出すことを検討していると報じられていることも、通商協議進展を難しくしているものと思われます。ここまで拗れてしまうと、難航することは当然として、最悪決裂というケースも想定されることから、積極的にリスクオンの動きを進めるのは難しいかもしれません。
本日の東京時間には、デジタル課税を巡り、米国がフランス製品への24億ドルの関税を提案したと報じられています。また、今後の見通しとして、フランスだけでなく、オーストリアとイタリア、そしてトルコに対してもデジタル課税の調査開始を検討していると言われており、各国に影響を及ぼす可能性がありそうです。また、世界貿易機関(WTO)は、欧州航空機大手エアバスに補助金を拠出していないとしたEUの主張を退け、先に承認した米国の対EU報復関税を巡るEUの差し止め要請を認めませんでした。補助金が、政府ローンという形で続いていると認定した模様です。
保守党有利である限り、ポンドについては仕切り直し
前日はトランプ大統領のツイートがきっかけとなり、ドル売りが主導しましたが、ポンドドルではドル売りが強まったことで、僅かに上値を拡大しています。英国選挙においても、依然として、保守党がリードしていることもあり、ポンドドルロングは様子見です。1.2840ドル台でのポンドドルのロング、1.2980ドルでの利食い、1.2780ドル下抜けでの損切り設定は、目先は変更なしとします。
海外時間からの流れ
本日のアジア時間では、RBA(豪準備銀)政策金利が注目されそうです。市場コンセンサスでは、0.75%に据え置かれることになっていますが、背景としては、前週ロウ・RBA総裁が「量的緩和(QE)が必要になる段階には達していない。必要となれば、流通市場で政府債を購入することになる」と発言したことがベースとなっていますが、依然として利下げ余地があることには違いなく、声明でさらなる利下げを示唆するようなことになれば、豪ドルが急速に売られてくるかもしれません。
今日の予定
本日は、豪中銀(RBA) 政策金利、トルコ・11月消費者物価指数、英・11月建設業PMI、ユーロ圏・10月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。