要旨

日銀
(画像=PIXTA)
  • 12月調査短観では、米中貿易摩擦や海外経済低迷を受けて輸出の低迷が長引くなか、消費増税と台風19号の影響が加わり、大企業製造業で4期連続となる景況感の悪化が示されると予想する。円安やITサイクルの底入れ感など一部前向きな材料もあるが、景況感を押し上げるには力不足だ。非製造業でも、増税に伴う消費の落ち込みや台風による営業休止、日韓関係悪化に伴う訪日客の落ち込みなどを受けて、景況感が悪化すると見ている。
  • 先行きの景況感は方向感が分かれそうだ。米中摩擦に関して部分合意に向けた交渉が続いており、摩擦緩和への期待が高まっているほか、ITサイクル持ち直しへの期待もあり、製造業では先行きにかけて持ち直しが示されそうだ。一方、非製造業では、増税後の内需回復の遅れに対する懸念などから、先行きにかけて景況感の低迷が見込まれる。
  • 2019年度の設備投資計画は前年比2.9%増へ上方修正されると予想。例年12月調査では、中小企業で上方修正されるクセが強いためだ。ただし、上方修正幅は、例年同時期に比べて小幅に留まるだろう。収益の圧迫によって企業の投資余力は低下してきているとみられるほか、米中貿易摩擦の行方も依然流動的であり、先行きの不透明感が払拭されたわけではない。このため、一部で設備投資を見合わせる動きが生じているとみられる。
  • 消費増税後初の調査にあたる今回の短観で特に注目されるのは、内需との連動性が高い非製造業の景況感だ。昨年来、米中貿易摩擦等で輸出が下振れる一方で、堅調な内需が日本経済を支えてきた。従って、今回示される非製造業の足元・先行きの景況感の動向が「堅調な内需の持続性」を占ううえでポイントになる。また、景況感の悪化が内需の一つの柱である設備投資の計画に波及しているかも注目される。計画の勢いが明らかに鈍っている場合には、増税後の景気回復が遅れるリスクの高まりを示唆することになる。
日銀短観
(画像=ニッセイ基礎研究所)