超富裕層向けにプライベート・バンクが提供する金融商品に「私募投信」というのがある。一般に金融機関で販売されている投資信託は「公募投信」といって、誰でも購入出来る。だがこの「私募投信」、一般の人の目には触れることは無く、限られたお客様だけの特別なモノとしてプライベート・バンクなどが提供するプレミアムな商品だ。

などという前口上で切り出すと、殆どの方が「やっぱり一般投資家が手に入らない特別に儲かる商品があるんだ!」と思われるかも知れない。だが、確かにプレミアムではあるが、特別に儲かる商品であるとは言えないからご安心を。あえて両者の違いを表現するなら、一流テーラーで仕立てたテーラーメイド・スーツの着心地と、吊るしのスーツの着心地の違いと言えば分かり易いかもしれない。

普通の投資信託、すなわち「公募投信」は具体的なお客様が予め決まっているわけでは無く、「世の中の恐らくこんな投資家像」若しくは「こんな感じの投資特性の人達」と抽象的に顧客イメージを抱きながら設計開発される。だが「私募投信」の場合、通常はファンド組成に必要なミニマムな資金(約30億円)を用意して頂ける超富裕層のキー・クライアントのニーズにより、設計・開発がキックオフとなる。

だからこそ、そのお客様の投資特性にピッタリとあった、身につけていることを忘れてしまうぐらいに着心地の良いテーラーメイドの服(投資信託)を作り上げる。

勿論、同じような投資特性のお客様にはお声掛け出来るが、その商品を勧誘出来る人数は最大でも僅か「49人」までに限られる。この勧誘件数の管理は非常に厳格で、資料にはナンバリングが施され、どのプライベートバンカーがどのお客様にご提案したか、正確な記録を残さないといけない。仮にお客様にお断りされたとしても、勧誘1件としてカウントされる。だからこそ、一般の人の目に触れることはまず無い。

そんなやり方でまともな規模のファンドが集まるのかと思われるかも知れないが、普通はシードマネーと呼ばれる最初の約30億円を出して頂けるお客様が居て初めて開発に掛かるので、ファンドは設定される。更に仮にお1人5億円を投資頂けるお客様が10人も集まれば、80億円のファンドとして設定可能だ。運用現場の実感として、80億円あれば殆どの運用手法が可能なので何の問題も無い。寧ろ数千億円など大き過ぎるほうが余程困る場合が多い。

筆者は実際にそうした商品の組成をプライベート・バンク時代にも、投信会社の社長時代にもリードしてきた。今回はそんな経験をもとに超富裕層が好む投資商品についてお届けしたい。

超富裕層は金融商品の基本を理解している

富裕層,資産
(画像=SFIO / CRACHO / shutterstock, ZUU online)