前日については、一部報道で「米中交渉担当者は米国が15日に予定している対中制裁関税第4弾の発動を見送る計画している」とのヘッドラインが出たことから、108.50円台で推移していたドル円が、108.75円付近まで反発する動きがありました。その後は再び上値の重さが意識され、108.50円台に回帰するも、マルバニー米大統領首席補佐官が米中の「第1段階」の通商合意について「順調に進んでいるようだ」との見解を示したこともあり、再度ドル円は上昇しています。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「15日発動予定の追加関税見送り計画は承知せず。依然としてテーブル上にある」と発言する場面もありましたが、二転三転する報道に、マーケットも嫌気がさしたのか、その後はヘッドラインに振らされる展開にはなりませんでした。

ポンドについては、12日(日本時間13日)の選挙投開票が意識され、英・10月鉱工業生産、英・10月貿易収支、英・統計局10月度GDP月次推計発表が軒並み悪化する内容になりましたが、マーケットへの影響は限定的となりました。保守党勝利を織り込む形で、ポンドドルは一時1.32145ドルまで上昇し、3月27日以来約9カ月ぶりの高値を付けましたが、本日朝方に調査会社「ユーガブ」が最新の世論調査の結果を公表し、与党・保守党の議席獲得予想が前回359議席から339議席に縮小したとの見解を示したことで、ポンドが一時急落する動きとなりました。依然として、単独過半数である326を上回る数字ではあるものの、今回の世論調査の結果を受け、最大議席と最小議席のシミュレーションをした結果、最大議席が367、最小が311と、ワーストシナリオとなった場合は、過半数割れであることが嫌気されたものと思われます。

しかし、ユーガブ以外の他の調査会社での世論調査結果では、保守党の大勝を示唆していたため、総悲観という展開にはならず、ポンドドルでは1.3110ドルまで急落後は、じりじりとポンドの買い戻しが出ています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国選挙が意識されるなか、本日はFOMCが発表されます。10月の声明にて「利下げが適切かどうかを評価する」との見解を示していた中で、ISM製造業景況指数が4カ月連続して景況感の分岐点の50を下回っていることなどの説明があるかもしれません。パウエルFRB議長が、ここまで「予防的利下げ」を敢行した最大の理由は、米中通商協議の先行き不透明感でしたが、依然として不透明感は残るものの、「予防的利下げ」を開始した時期と比較すると、前進していることが多いため、基本的には2020年末まで現行の政策金利を据え置く方向に舵を切るのではないでしょうか。

目下の焦点としては、15日に予定している中国からの輸入品1600億ドル(約17兆3700億円)相当への追加関税引き上げについて、発動されるかどうかです。トランプ大統領が「来年11月の米大統領選まで待ったほうが良いかもしれない」との見解を示す一方で、パーデュー米農務長官が「追加関税を課す期限を15日に迎えるが、それが発動されるとは思わない」と発言し、中国当局者も「米国は15日に発動を予定する対中関税引き上げを先送りするだろう」との見解を示しています。マーケットの期待通り、追加関税を回避し、協議継続となれば、再び緩やかなリスクオンの地合いが継続すると考えられます。

ユーガブの見解でポンド下落も、依然として保守党は過半数確保の内容

英国選挙については、ユーガブが世論調査で保守党が前回と比べて議席数を減少するとの見解と、ワーストシナリオとして過半数を獲得できない可能性があることを指摘したため、一時的にポンドが急落しましたが、依然として過半数を獲得できる見通しであるため、ポンドは再度買い戻される公算です。1.3100ドルでのポンドドルのロング、利食い目途は1.3300ドル、1.3050ドル下抜けで損切りの戦略に変更はありません。

海外時間からの流れ

本日の東京時間では、NZ政府が財政黒字の見通しを縮小する一方、インフラ投資などへの支出を増加する方針を示しました。発表後にはNZドル買いが強まっており、オセアニア通貨全体の底上げに寄与するかもしれません。

今日の予定

本日は、トルコ・10月経常収支、米・11月消費者物価指数、米・FOMC政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、パウエル・FRB議長の定例会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。