前日については、米中通商協議の進展がマーケットの中心となりました。まず、従来通り、トランプ大統領がツイッターに「中国との大きな合意が非常に近づいている」とツイートしたところまではマーケットの反応も限定的でしたが、WSJ(ウォールストリートジャーナル)が「米交渉担当者は15日に予定している対中関税第4弾の取りやめと既存の追加関税の引き下げを提案した」と報じると、15日の追加関税が回避されるのではないかとの思惑が強まり、ドル円は109円台を回復しました。その後、トランプ大統領が「第1段階」の通商合意を承認したと報じられたことで、ドル円は109.446円まで上値を拡大し、本日の東京時間では109.576円まで上昇しています。
ECB理事会では、ラガルドECB総裁が就任後初の理事会後の会見に臨み、「景気は安定化の兆しが幾分見られる」「リスクは下サイドに傾くが、あまり深刻ではない」との認識を示すと一時1.11540ドルと11月4日以来の高値までユーロ買いが強まりました。ラガルドECB総裁がどのような見解を示すのかに注目が集まっていましたが、当面9月の理事会で発生した意見の相違を修復し、今後のECBの政策目標・手段を再検討するところから始めるのではないかと想定されていたものの、マーケットの予想をいい意味で裏切ってくれたのかもしれません。
トルコリラについては、トルコ中銀が、政策金利を現行の14.00%から2.00%引き下げて12.00%にすることを発表しました。マーケットの事前予想は1.50%の利下げであったものの、トルコ中銀は「物価の伸び鈍化や景気の持ち直しを踏まえ、積極的な緩和サイクルは終了に近づいている可能性」との見解を示しており、トルコリラを売る動きは限定的になりました。ただ、米中通商協議進展期待が強まったことで、リスク選好の動きになったことから、トルコリラ円は18.904円まで上昇する場面がありました。マーケットは、今回の2.00%の利下げを妥当と判断したのだと思われます。
今後の見通し
本日は、英国選挙の投開票が行われ、日本時間の正午から15時にかけて大方の情勢が判明する予定です。また、朝方に出口調査が発表された時点で、与党・保守党は368議席を獲得する公算となり、過半数獲得が確実視されています。既にポンドは前日クローズレートから急騰しており、ポンド円は147円台後半、ポンドドルも1.35ドル前半まで一時上値を拡大しています。出口調査後は、一時利食い先行のポンド売りが強まる場面がありましたが、労働党が優勢と考えられていた地域で保守党が議席を獲得するなど、出口調査の内容がより信憑性を高めており、再度ポンドは上値追いの動きになっています。
英国選挙が最大のイベントではあるものの、トランプ大統領が米中貿易合意を承認し、前向きに進んでいることもあり、今後は、中国側による米国産農産物の購入拡大の範囲(200億ドル-500億ドル)の確約などの、さらに踏み込んだヘッドラインが意識される展開になりそうです。ドル円は110円で上値の重さが意識されていますが、今回の合意により、110円を目指す動きが再熱することになりそうなことから、110円のラインが今後は重要なポイントになってきそうです。
保守党が想定以上に議席数を獲得しそうだ
前日、1.3220ドルで一旦ポンドドルの利食いを行いましたが、想定以上に保守党が議席を確保できそうな報道が相次いでおり、もう一段ポンド買いが強まる可能性があります。ここまでボラティリティが上がっていることを考えると、押し目を待つのは難しそうなため、1.3450ドルにてポンドドルの成行ロング、利食いは1.3580ドル、損切りは1.3380ドル下抜けに設定したいと思います。
海外時間からの流れ
米中通商協議の進展、英国選挙の出口調査結果と、リスクオンになるには十分過ぎる材料が相次いでいます。日経平均株価を中心とした株式市場も堅調に推移していることもあり、目先はリスクオンの動きに絞っていいかもしれません。
今日の予定
本日は、米・11月小売売上高、米・11月輸入物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。