公的年金への不安などからiDeCoに対する関心が高まっていますが、iDeCoを始めるなら金融機関選びがとても大切です。「なんとなく今利用している銀行でiDeCoの口座も開設しておこう」と安易に決めてしまうと、あとで後悔してしまうかもしれません。今回はiDeCo口座の金融機関選びの大切さと、その選び方、そしておすすめの金融機関をご紹介します。

iDeCoで金融機関選びが大切な理由

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(画像=PIXTA)

iDeCo口座は1人1口座しか持てない

みなさんの中には銀行口座や証券口座を複数持っている方も多いと思います。例えば、A銀行の口座は給与口座にして、B銀行の口座は貯金用として使い、C証券口座は株式用、D証券は投資信託用としている人もいるかもしれません。また、昔は使っていたけれども、今はまったく使っていない口座もあるのではないでしょうか。

これらの口座とiDeCo口座が違うところは、iDeCo口座が1人1口座しか持てないことです。つまり、「Aという金融機関でiDeCoを利用していたけど、Bの方が良さそうだから」という理由で、Aの口座を放置しBで新しく口座を作るということはできません。まず、AのiDeCo口座を解約してからBで新しくiDeCo口座を開設するという手順が必要になります。

金融機関によって買える商品・受けられるサービスが異なる

iDeCoという制度では、どこの金融機関で口座を開設しても掛け金の上限や受けられる税制優遇の内容は同じですが、掛け金で購入できる商品や手数料、受けられるサービスは各金融機関によってかなり変わってきます。お金を預けるならATM利用料が安い銀行にしようと思うのと同じで、同じ制度を利用するなら少しでも手数料が安いところや、サービスがいいところを利用したいと思うのではないでしょうか。

また、金融機関によって買える商品が異なるというのは、自分が買いたい商品があるのかないのか、資産の分散がうまくできるのかどうか、といった商品選びの問題のほかにも、注意すべき点があります。それは、金融機関Aで持っていた商品が金融機関Bにもあるとは限らないので、新しい金融機関BでiDeCo口座を開設し直す場合、金融機関Aの商品はいったんすべて現金化されるということです。つまり、金融機関Aで持っていた投資信託等は売却されることになります。

新しい金融機関にiDeCo口座を作るには、金融機関にもよりますが大体1ヵ月から3ヵ月かかります。もしその期間に、これまで金融機関Aで持っていた投資信託が大きく値上がりしたら……。せっかく利益が出せる期間を逃してしまってガッカリするかもしれません。

このように、最初にiDeCoの口座を適当に決めてしまうと、手数料やサービスの質で不満に思うことがあるかもしれませんし、その後口座を変更する時も手続きであったりタイミングであったりと大変になります。

iDeCo口座の選び方のポイント

手数料のわずかな差にこだわろう

iDeCoの口座選びで一番こだわりたいのは、なんといっても手数料です。なぜなら、iDeCoは目的が老後資金の準備ということで、30代、40代で始める人にとってはとても長い付き合いになるからです。

iDeCoでは加入時や受け取り時にさまざまな手数料がかかりますが、金融機関ごとに差が出るのは運用期間中にかかる手数料です。2019年11月現在、その運営期間中にかかる手数料は、最も安い金融機関で月額171円、最も高い金融機関では629円と、大きく幅があります。

仮に手数料が毎月300円変わると、1年では3,600円、20年で7万2,000円の差になります。100万円の資金を年率1%で運用しても、利益が7万2,000円を超えるには7年かかります。つまり、手数料が安ければそのぶん運用益を確保することが可能となります。

商品の数も金融機関によって異なる

これまで投資をバリバリやってきた方であれば、自分がどうしても買いたい商品を取り扱っている金融機関を選べばいいのですが、それほどこだわりを持っていない方も多いのではないでしょうか。実際、同じ投資対象(例えば、日本株式に連動するインデックス・ファンド)であれば、商品の内容が大きく変わることもありません。

自分である程度商品を選べるように、商品の数が少なすぎない金融機関を選んでおくと、将来知識が増えていろいろな商品に分散投資したくなったときにも融通がききます。

では、ここからは具体的におすすめの金融機関を7つご紹介します。

初心者におすすめの金融機関7選

SBI証券

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 オリジナルプラン 1本
セレクトプラン  1本
オリジナルプラン 38本
セレクトプラン  36本

SBI証券はiDeCoに関して、自社サイトで加入者数No.1と表示している通り、手数料の安さ、商品のラインナップともにトップクラスです。「オリジナルプラン」と「セレクトプラン」の2つのプランから好きな方を選びます。

違いは取り扱う商品の種類だけなので、どちらを選ぶかは自分がどういった商品で運用したいかで決めますが、投資初心者で特にこだわりがなければ「セレクトプラン」がおすすめです。商品に多様性があり、低コストのインデックス・ファンドを豊富に取り揃えています。

楽天証券

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 30本

楽天証券もSBI証券と同じくネット証券では大手で、口座管理料は最安値になっています。楽天証券でiDeCoを始めるメリットとしては、商品のラインナップが豊富なのはもちろんですが、楽天証券の投資信託である「楽天・全米株式インデックス・ファンド」と「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」をiDeCoで買うことができることです。

また、iDeCoの口座はiDeCo専用のサイトで確認することが普通でしたが、楽天証券では楽天証券のIDで証券情報もiDeCoもまとめて管理できるので、楽天証券を利用している方にとっては便利なのではないでしょうか。

マネックス証券

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 24本

同じくネット証券大手のマネックス証券は、商品のラインナップとしてはSBI証券や楽天証券より少なくなります。ただし、マネックス証券独自の特徴として、ロボアドバイザーによる無料のポートフォリオ診断があります。これは、5つの質問に答えるだけで最適な運用プランを提案してくれるサービスで、どの商品にどれぐらい投資すればいいのかといった提案のほか、将来のシミュレーションなどを利用することができます。

松井証券

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 11本

松井証券のiDeCoも口座管理料は最安値になっています。商品のラインナップはこれまで紹介してきた金融機関に比べて少ないですが、iDeCoで取り扱う商品は追加することができるので、今後魅力的な商品が追加されるかもしれません。

イオン銀行

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 23本

今回ご紹介している金融機関のなかで、銀行はこのイオン銀行だけです。口座管理料は他と同じく最安値ですが、商品の数はSBI証券や楽天証券などと比べ、少し少なめになっています。

イオン銀行の特徴は、全国のイオン店舗の窓口で365日いつでも相談可能なことです。自分一人で判断し、インターネット上で取引するのが不安な人は、対面で相談できる場所があると安心できますよね。

大和証券

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 21本

大和証券はイオン銀行と同じく、全国にある支店の窓口で直接相談できるのが特徴です。商品数はそれなりに多いですが、ほとんどが系列会社の大和証券投資信託委託運用なので、他の金融機関に比べ商品のバリエーションが少し偏っているかもしれません。

auアセットマネジメント

手数料(口座管理料) 商品のラインナップ
加入時 運用期間中にかかる
費用(毎月)
元本確保型 投資信託
2,829円 171円 1本 4本

銀行でも証券会社でもなく、auが提供しているiDeCoサービスです。手数料は最安値ですが、投資信託の数はとても少なく、他の証券会社と比べるとかなり見劣りします。しかし、大きな特徴として、auユーザーであれば投資信託の保有残高に応じてau WALLETポイントが貯まります。auユーザーの方は選択肢に入れてみてもいいかもしれません。

※手数料および商品ラインナップのデータは2019年12月9日現在

iDeCoの口座は後悔のないよう慎重に選ぼう

iDeCoの口座は銀行口座や証券口座と違い、1人に1口座しか持つことができませんし、金融機関によって手数料や商品数、その他のサービスに違いがあります。iDeCoの口座は変更するのも手間と時間がかかりますので、おすすめした金融機関を参考に、後悔がないよう慎重に選びましょう。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)/fuelle

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