米中貿易協議の第1段階合意はあったものの、英国選挙も通過したことで、マーケットの材料がなくなってきています。前日についても、ドル円は、非常に狭いレンジ内での動きの中で、米国株が史上最高値を更新したことで109.70円手前まで上昇しましたが、109.80円のレジスタンスラインが意識され、その後は反落する展開になりました。

そんな中で、本日の東京時間早朝では、「ジョンソン英首相が欧州連合(EU)離脱への移行期間延長を回避するための法改正を計画している」と一部で報道されたことがきっかけとなり、ポンド売りが加速しました。保守党が選挙を圧勝し、年内に(現段階では12/20にEU離脱案を議会に提出)EU離脱案を議会で可決し、2020年末までは移行期間という、当たり前のように考えていたシナリオが崩れてしまうのではないかとの懸念が強まっています。ポンド円は一時146.00円付近から145.10円付近まで、ポンドドルでも1.3320ドル付近から1.3240ドル付近までポンドが急落しました。

ジョンソン英首相が画策していると言われている「移行期間延長を回避するための法改正」が実現するとなれば、移行期間が終了する2020年末時点で「合意なき離脱」になりかねない期限が設定されることになります。一旦はポンド堅調の流れが継続する見通しでしたが、どこまで信憑性のある報道なのかは定かではないですが、詳細が発表されれば、さらにポンド売りになる可能性は非常に高いと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

早くても来年1月になるだろうとの見通しであった、米中通商「第1段階」合意文書への署名が、早ければ年明けにも行われるとトランプ大統領やムニューシン米財務長官が表明したことから、リスク選好の動きになりやすい地合いとなっています。ただ、ビックイベントを消化したことで、マーケットが閑散となっており、ここからさらに上値を拡大するような動きにはなっていません。ドル円については、110円レジスタンスが今後も意識されてくるのではないでしょうか。

クドロー国家経済会議(NEC)委員長も、FOXニュースのインタビューの中で、米中通商協議の第一段階の合意は完了したと述べたうえで、今後、米国の対中輸出は倍増するとの見通しを明らかにしました。トランプ大統領は来年の大統領選に向けた実績作りに懸命であり、中国との合意は重要な実績作りに寄与したと考えられます。今後、この実績を崩すようなことをするとは考えづらく、米中通商「第2段階」が早期に開始されるのであれば、プラス方向に作用すると思われ、大統領選後に行われるという見解を示せば、「第2段階」以降は、厳しい内容になると考えることができそうです。

ドル円110円レジスタンスが年末に向けてのポイント

109.70-80円までの戻りが理想でしたが、109.70円目前で上値が抑えられてしまったので、109.65円で成行ショートです。110円レジスタンスが大名目としてありますが、109.80円のラインも上値の重さが確認できます。利食いは、11/21の108.30円付近、損切りについては、明確に110円を上抜ける110.30円付近に設定します。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に公表されたRBA議事要旨では、来年2月の最初の会合において、経済見通しの再評価を行う方針が確認されました。「必要であればさらなる刺激策を提供する能力がある」との見解を示していることから、引き続き緩和路線は継続するとの思惑から、豪ドルの上値は重くなってくるかもしれません。

今日の予定

本日は、英・11月失業率、ユーロ圏・10月貿易収支、米・11月住宅着工件数/11月建設許可件数/11月鉱工業生産/11月設備稼働率/10月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。要人発言としては、カジミール・スロバキア中銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。