シンカー:世界市場にとって極めて重大な2つのリスク(貿易戦争と合意なきBrexit)の緩和(de-escalation)と、それが実体経済に与える好影響は、恐らく2020年序盤の最も重要な市場ドライバとなろう。これら2つの面での安心感は、債券から株式への一段のリアロケーションと、中国を除くアジアへの再投資につながり、日本株への追い風となる(しかし円高要因にはならない)可能性がある。人民元をめぐる懸念後退はその他アジアに一時的に好影響をもたらす可能性がある。弊社は日本株の推奨ウェートをポートフォリオ上マックスの10%の推奨を維持している。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

アセット・アロケーション(11/28):バリュー主導の選択が利益をもたらそう

世界市場にとって極めて重大な2つのリスク(貿易戦争と合意なきBrexit)の緩和(de-escalation)と、それが実体経済に与える好影響は、恐らく2020年序盤の最も重要な市場ドライバとなろう。これら2つの面での安心感は、債券から株式への一段のリアロケーションと、中国を除くアジアへの再投資につながり、日本株への追い風となる(しかし円高要因にはならない)可能性がある。人民元をめぐる懸念後退はその他アジアに一時的に好影響をもたらす可能性がある。

弊社のエコノミクスチームは依然として米国が2020年夏までに短期的かつ軽微なリセッションに入ると予想しており、これは明らかに弊社が株式に対して楽観的になるのを妨げている。しかし、弊社のエコノミストらは現在、自身のシナリオに対するダウンサイドリスクはより少なくなったとみており、それにより、ボラティリティ管理に重点を置きつつバランスのとれたアロケーション(株式45%、債券45%)を採用する道が開かれている。

米経済のマイルドかつシクリカルな減速と共に株式は2020年2Q?3Qに10?15%のドローダウンを経験し、その後は翌年の景気改善を見越した4QのV字回復により、現在よりも僅かに低い水準で2020年を終えると弊社は予想している。だが何より、弊社がバリューセグメントに通常よりも大きく重点を置いていることを強調したい(そしてこれは資産クラス間にも当てはまる)。クレジットは非常に割高なため、社債よりもソブリン債の方が、予想される株式のボラティリティ上昇に対するはるかに有効なプロテクションとなろう。

2020年に向けたMAPのキー・コールの一つは非常に広範な通貨分散であり、通貨間の相関性は極めて低いため、米ドルへのエクスポージャーを僅か3分の1とし、ユーロに対しても3分の1、その他通貨(円、ポンド、新興市場通貨)にも3分の1とすることを推奨する。従って、弊社はここでもボラティリティ管理を組み入れている。これは明らかに、弊社が2020年の米ドルの見通しに対して市場平均よりも悲観的であることを示している。ユーロに対してはそれなりに楽観的で、円は上昇すると予想するが、日銀のアクションにより上昇ペースは緩やかなものになると考える。

また、株式市場では2019年4Qのシクリカルな上昇が2020年前半にかけて続くとみている。EPSサイクルは北東アジア主導で回復しつつある。ASEAN市場に関しては、成長が停滞し、改革モメンタムが失速している最中にあり、状況は依然それほど芳しくない。弊社は、日本株を通じてアジアにおけるバリュー投資にエクスポージャーを確保するよう勧める。

表)SGマルチ・アセット・ポートフォリオ(MAP)の推奨ウェート

SGマルチ・アセット・ポートフォリオ(MAP)の推奨ウェート
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ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司