前日については、東京時間早朝に急遽取り沙汰された「ジョンソン英首相が欧州連合(EU)離脱への移行期間延長を回避するための法改正を計画している」との報道が海外時間でも意識され、1日を通じてポンドが独歩安になりました。英国は、EUとの貿易協定を結ばなくてはなりませんが、通常2-3年程度はかかる交渉であり、移行期間を延ばさないのであれば、EUとの合意がないままで離脱する公算が強くなります。EUとの包括的な貿易協定の締結が狙いだとは思われますが、ここにきて合意なき離脱の可能性が残されたことは、マーケット全体が寝耳に水だったのではないでしょうか。現段階ではポンド売りが限定的になっていますが、続報が出てくれば、一気にポンド売りが加速する可能性がありそうです。

既にポンド関連の通貨ペアについては、英国総選挙前の水準まで戻ってきており、保守党が圧勝したことでのポンド上昇分を一気に吐き出しています。米中通商協議については、ようやく先行きが見えてきたものの、今度は完全に問題はクリアされたと考えられていた英国のEU離脱問題が、再びリスクイベントとしてマーケットの中心になりそうです。移行期間は、企業活動や市民生活の急激な環境変化を緩和するのが目的で、2022年末まで延長ができるものですが、ジョンソン首相の狙いはEUからの「完全離脱」であることがはっきりしたため、2020年末までにEUとFTA(自由貿易協定)が締結できない場合、英国とEU間での貿易は、WTO(世界貿易機関)の規則に従い、完全が発生する最悪のケースに陥るかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国の「移行期間延長を回避するための法改正」以外のイベントとしては、トランプ大統領の弾劾訴追の審議が、下院で本日から開始されます。下院での弾劾訴追決議案採決は、ペロシ下院議長が大統領のウクライナ疑惑の調査開始を発表した時点でほぼ決まっていたようなものでしたが、共和党が過半数議席を占める上院で大統領が罷免されないことも既成事実となっています。それでも、弾劾を巡る党派的争いは既に2020年大統領選にダメージを与えていると考えられます。

委員会での弾劾案可決は、近年では「ウォーターゲート事件」のニクソン元大統領、「不倫もみ消し疑惑」のクリントン元大統領の例があります。ニクソン元大統領は、本会議を待たずに辞任しており、クリントン元大統領は大々的な謝罪に追い込まれています。今回のトランプ大統領も無傷で済むとは考えづらく、年末年始に向けてマーケット材料が希薄になってくるに連れ、リスク回避の動きが強まるかもしれません。

ドル円110円レジスタンスが年末に向けてのポイント

109.70-80円までの戻りが理想でしたが、109.70円目前で上値が抑えられてしまったので、109.65円で成行ショートです。110円レジスタンスが大名目としてありますが、109.80円のラインも上値の重さが確認できます。利食いは、11/21の108.30円付近、損きりについては、明確に110円を上抜ける110.30円付近に設定します。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に、NZ政府が来年4月より最低賃金を時給で1.20NZドル上げ、18.90NZドルにすることを発表しました。この賃上げにより約24万人の労働者が恩恵を受けるとされています。また、2021年までには時給20.00NZドルまでの最低賃金を上げることを目標にしていることも、合わせて発表しました。この賃上げで今後のインフレ指標などに影響を与える可能性もあるため、ネガティブ要素が強かったオセアニア通貨において、数少ない買い材料となりそうです。

今日の予定

本日は、独・11月生産者物価指数、独・12月IFO景況指数、英・11月生産者物価指数/英・11月消費者物価指数/英・11月小売物価指数、ユーロ圏・11月消費者物価指数、加・11月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ラガルド・ECB総裁、ブレイナード・FRB理事、クーレ・ECB専務理事、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。