ダウ平均株価の中で配当利回りの高い10銘柄に投資し、長期的には市場を上回るパフォーマンスとなることを見込んだ「ダウの犬」投資法には根強い人気がある。
過去4年連続でこの投資法は有効であり、過去10年で見ると7年有効であった。しかし今年は、株式市場が史上最高値をつける中でダウの犬銘柄が市場を上回ることに失敗している。
2019年はいままでのところ、ダウの犬の銘柄の中ではP&G(NYSE:PG)のみが、S&P500の年初来26%の上昇を上回っている。ダウの犬銘柄の平均上昇率は8.6%となっている。
2020年にダウの犬戦略で挑む投資家のために、以下では高配当利回りトップ3である銘柄についての考察を本記事では述べる。
1. ダウ(Dow Inc.)
素材科学(プラスチック、シリコン等)の大手であるダウ(NYSE:DOW)は配当の形で投資家還元に力を入れており、インカムゲインに期待がかかる銘柄である。ダウは投資家に対し、自社株買いと配当金合わせて利益の65%を還元予定である。
ダウは新しい工場に対する設備投資を控える他、15ある事業を6事業までに絞ってコア事業に集中するアプローチをとり、高い配当還元の目標を達成するとしている。プラスチックとパッケージ事業はダウ最大の事業となっており、収益の半分を占めている。また同社は31の国で事業を行っている。
四半期配当額は0.7ドルとなっており、年配当利回りは5.27%である。配当性向は45%を予定しており、コスト削減を推し進める中で配当の伸びにはまだまだ余裕がある。
しかしながら、原油からつくられるプラスチックは、景気に左右されやすい性質を持っている。ダウ株は年初来では7%の上昇であり、先週金曜日の終値は53.28ドルである。
2. エクソンモービル
米国のスーパーメジャーの1つであるエクソンモービル(NYSE:XOM)は、ダウの犬銘柄に当てはまる。同株は今年はじめから春にかけての上昇を維持できず、市場をアンダーパフォームしている。
エクソンモービルは、総合エネルギー企業であり採掘から精製、シェールオイル地域の開発に至るまで幅広い事業を展開している。同社株価が大きく跳ね上がる可能性は低いものの、長期に渡って株価は上昇している。年初来ではわずか1%の上昇となっており、先週金曜日の終値は69.23ドルとなっている。
エクソンモービルは、成長のために多大な投資を行っている途中であり、他の石油企業がコスト削減に取り組んで安定を目指しているのに対し対象的である。
エクソンモービルのダレン・ウッズCEOはこれからの石油業界を切り開くには多大な投資が必要と考えており、2300億ドルを投資し世界中の石油採掘に着手している。
エクソンモービルの四半期配当額は0.87ドルであり、年配当利回りは5%に達する。しかし、エクソンモービルに投資するということは、来年原油価格が上昇するということに賭けることになるだろう。米中貿易戦争は終結に向かっている中、原油価格も需要増加によって上昇する可能性も高まっているとは言える。
3. IBM(International Business Machines)
100年の歴史を誇るIBM(NYSE:IBM)は、近年岐路に立たされている。IBMは急速に移り変わるテクノロジー産業と消費者傾向にキャッチアップすることに苦戦している。
IBMは2011年に売上高、翌年2012年にキャッシュフローがピークを打った以降、成長が伸び悩んでいる。ジニー・ロメッティCEOは、クラウド事業やAIなど最新技術を扱う事業に焦点を当てる戦略を取り、会社は大きな転機を迎えている。
いくつかの市場から撤退するのと同時に、IBMはクラウド・データセンターに対して設備投資を進め、数々の企業を買収しAIなどの最先端技術の強化に取り組んできた。
IBMはクラウドコンピューティングなど最先端技術分野でシェアを奪うことには時間がかかっている中、同社はRed Hatを340億ドルで買収をしたことによってゲームチェンジャーになる可能性がある。この買収によって、比較的利益率の高いソフトウェアビジネスがIBMに加わった。
IBMの株価はこれらの企業努力を緩やかに反映し年初来18%の上昇となり、先週の金曜日の終値は134ドルとなっている。
最近の株高傾向の中で、IBMはいまだ2013年につけた最高値から38%安い。アナリストの12ヶ月後の目標株価は148.3ドルとなっており、最低価格は120ドル、最高価格は173ドルと設定している。四半期配当額は1.62ドルで、年配当利回りは約4.8%となっている。
総括
掘り出し物を探しているなら、「ダウの犬」は確かに検討に値する戦略だろう。ダウの犬に入る上記の3銘柄はインカムゲインに関心がある投資家に推薦できる銘柄である。(提供:Investing.comより)
著者: ハリス アンワル